ボールの変化は「内的原理」…優雅で感傷的な韓流アイドルの始球式 [韓国記者コラム]
KOREA WAVE / 2024年6月15日 14時0分
【KOREA WAVE】「『私はまた、すべての創造された存在は変化をうける。したがって創造された単子(ボール)も変化をまぬがれない。そのうえその変化は、おのおのの単子(ボール)のなかで連続的におこなわれる。ということは、だれでも承認しているものと考える。以上のべたことの帰結として、単子(ボール)の自然的変化は内的原理からくることがわかる。外的原因は単子(ボール)の内部に作用することができないからである』わかるか? ボールが変化するのはその内的原理のせいなんだって言ってるんだな、ライプニッツ先生は。驚いたね。おれとしてもさ」
野球マニアでありながらポストモダン小説のマニアならわかるこの有名な文章。日本の作家、高橋源一郎の小説「優雅で感傷的な日本野球」を読んだ人なら、ツーシーム・ファストボールが胸元に突き刺さる感じを受けるだろう。
この知的でクールな小説は、野球というものが消えた未来を舞台にしている。そのなかで、主力投手はドイツ哲学者ライプニッツの「単子論」に傾倒している。
単子論を大まかに要約すればこうなる。
単子は窓がない。互いに相互作用をせず、物理的な影響を与えたり受けたりしないという意味だ。
この単子論は「優雅で感傷的な日本野球」の中でこのように解釈される。「単子(ボール)の自然的変化は内的原理からくることがわかる。外的原因は単子(ボール)の内部に作用することができないから」
ライプニッツは、ボールが変化する理由を「その内的原理にある」と言うのだ。「投手がボールを変化させるのではない」ということだ。「投手はそのきっかけを作るだけで、空気の抵抗のためにボールが勝手に曲がる。結局、小説の中の主力投手は次のように考える。「おれがスランプになっちまったのは、ボールの内的原理を摑んでなかったからじゃないかってな。(中略)人々はことごとく、単子(ボール)のなかにこの多を認めなくてはならない」
◇投球フォームに飾り気なし
超新星ガールズグループ「aespa」のカリナは、野球に応用された単子論を把握したようだ。
カリナは9日午後、釜山社稷(サジク)球場で、新韓SOL Bank KBOリーグのロッテ・ジャイアンツ対SSGランダースのダブルヘッダー第2戦始球式に臨んだ。初の始球式でもストライクを投げた。
カリナが球場と縁がなかったわけではない。昨年6月8日、米大リーグニューヨーク・ヤンキーススタジアムで開催されたニューヨーク・ヤンキースとシカゴ・ホワイトソックスの試合の始球式でaespaのメンバーとしてマウンドに上がり、ボールは他のメンバー、ウィンターが代表して投げた。
ソウル高尺スカイドームで今年3月20日開催されたMLBレギュラーシーズン開幕戦のLAドジャース対サンディエゴ・パドレス戦では、aespaは祝賀ステージだけを飾った。
カリナが今回の始球式で投げた球種をあえて言えば「パームボール」に見える。指4本を使ってボールを押し出すように投げるという球種に近い。
始球式ではボールがマウンドとホームプレート間の距離(18.44m)に届かない場合も多い。だが、カリナの手を離れたボールは放物線を描きながらストライクゾーンを通過し、捕手ソン・ソンビンのミットに突き刺さった。
カリナの投球フォームには飾り気がなかった。絶対にストライクゾーンに投げなければ、という気負いもなかった。ボール(単子)の中に内在する多様さを認め、手から離しただけだった。優雅で感傷的なカリナの投球だ。
ユニフォームもよく似合っていた。この日、カリナはロッテ七星飲料ビールブランドクラッシュとロッテ・ジャイアンツがコラボした青いユニフォームを着た。背番号は00番。カリナはクラッシュのモデルでもある。
◇野球界とK-POP界に大きな話題
一方、今回のカリナの始球式は商業的な部分だけでなく、野球界とK-POP界に大きな話題になった。
カリナの始球式が予告されて以来、ネット上は期待に包まれた。前日の試合が雨天で延期されて同日はダブルヘッダーとなり、カリナの始球式が取り消されるのではないかという懸念も出た。同日午後には大邱(テグ)でサイン会が予定されていたからだ。
X(旧ツイッター)には「カリナが時間通りに始球式ができるようにしてください!」など、その始球式のために日程を調整してほしいという要請が、所属事務所のSMエンターテインメントに寄せられるほどだった。
解説者もカリナの始球式に大きな期待をかけた。「ダグアウトの風景も見応えがありますね。カリナの始球式を見ようと今、全部ぶら下がっています」と伝えた。カメラがカリナの顔を映すと「非現実的な風景」という感嘆の声も。
カリナが始球式をするという予告直後、同日の試合のチケットは早々に売り切れた。普段、野球に関心のないK-POPファンやaespaファンダム(ファン集団)「MY」も多くが球場にかけつけ、観客席のあちこちにはカリナの応援フレーズが登場した。
実は最近のK-POP人気とプロ野球の人気は共通点が多い。
メンバーや選手ファン中心に消費層が形成され、ファンが一体感を抱くことができる応援方法も多い。人気コンサート(試合)の前売り券の取得はピケッティング(血の出るような激しい競争)を突破しなければならない。
一部では、K-POPがあまりにもファンダム中心になりすぎているのではという見方もある。一方で、カリナのような大スターが他のジャンルとコラボすれば、K-POPのライトなファンを増やす方法の一つにもなりえる。彼女の始球式の風景が、そのきっかけだ。【NEWSIS イ・ジェフン記者】
(c)NEWSIS/KOREA WAVE/AFPBB News
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