下半身麻痺でも歩けるように…韓国のウェアラブルロボット専門研究所を訪ねた (上)
KOREA WAVE / 2024年9月13日 9時0分
【KOREA WAVE】韓国のウェアラブルロボット専門企業「エンジェルロボティクス」が中部・大田(テジョン)に開設したロボット技術先行研究センター「プラネット大田」。ここは幅広いロボット技術の研究と実証のために設立された研究所で、世界的にも類似施設がないという。同社のコン・ギョンチョル代表は、韓国科学技術院のウェアラブルロボット研究の要件を満たしながら、先端技術の研究者や臨床実験の専門家、技術支援の専門家のための施設を作りたかったそうだ。
ここでは、発売が間近に迫っている日常用ウェアラブルロボット「エンジェルスーツH10」を実際に着用し、歩行補助効果を体験できる。
エンジェルロボティクスのブランドストーリーが隠れていながらも、多くの人々が共に使用できる施設――公認サイバスロン(国際サイボーグオリンピック)競技場にもなるように規格に合わせて空間を構成したという。
コン代表はこんな話をした。
「未来のウェアラブルロボットの訓練場や競技場を想像しながらデザインした。映画『アイアンマン』のトニー・スタークの作業室や、サイバスロン大会が開催されたスイス・アレナ、そしてナイキのパリ店舗であるハウス・オブ・イノベーションなどからインスピレーションを得た」
◇「日常や極限環境の模倣…動作分析とデータ蓄積」
アイアンマンの作業室にふさわしい最先端の実験・計測機器も多数備えている。まず、日常や極限環境を模したさまざまなトラックを室内に整備した。国際サイボーグオリンピック「サイバスロン」の規格に合わせた室内外の歩行環境が設置され、ロボットも実際の生活の中でどのように動作するのかを確認できるように設計された。
砂浜や砂利道、山岳地形、急な坂なども室内にそのまま再現された。電気もインターネットもない野外では限られた実験しかできず、モバイル実験・計測機器の精度が落ちるという制約がある。そのため、先行研究の段階から極限環境における精密な実験や計測機器を用いた研究ができるよう、こうした環境を整備した。
また、ウェアラブルロボットの位置変化や移動速度を精密に測定するために、精密測位システムも設置された。これにより、測位アルゴリズムの調整が可能となり、ウェアラブルロボットは補助だけでなく、精密な計測システムとしての機能も備えることができる。動作分析や動力学解析機器「M-Gait」や「VICON」も導入された。
さらに、人工知能サーバーとクラウドを活用し、リアルタイムで生成される生体信号をビッグデータとして蓄積するシステムも整備された。ウェアラブルロボットは、装着者に物理的な効果を与えるだけでなく、人間に最も近い位置で多くの生体データを収集できるセンサープラットフォームでもあるのだ。
◇「下半身麻痺の障害者もロボットで歩ける」
研究所では、ロボットだけでなく、人間の歩行動作やエネルギー消費量を正確に測定する実験も手掛けている。ウェアラブルロボット「ワークオンスーツ」を開発する現場も印象的だ。
下半身麻痺の障害を持つ研究者が、自らワークオンスーツを着用して歩く姿を見ることができた。車椅子から降りてロボットを装着すると、すぐに歩き始めた。
ワークオンスーツは、下半身麻痺の障害者がロボットに完全に体を預けて歩行できる外骨格型の歩行補助ロボットだ。2020年に発表された「ワークオンスーツ4」は、バランスを保ちながら時速3.2kmで歩行する性能が実証されており、ユーザーに最適な歩行パターンを自動学習する機能も導入されている。
新たに開発中のワークオンスーツは「F1」バージョンだ。ワークオンスーツF1は、ヒューマノイドとウェアラブルロボットを融合させたハイブリッド型ロボット。杖を使わずに持続的に歩行できるように開発中で、車椅子から直接ロボットを装着できる点が特徴だ。使用者がロボットを着用していない時には、ヒューマノイドのように自動で歩行することもできる。
また、関節機能を補助する日常用製品「エンジェルスーツ」の最適化作業も進行中で、年内の商用化を目指している。現在は、日常や極限環境を模した状況で実証テストを実施している段階だ。
コンピューターシミュレーションでは、試行錯誤を重ねながら最適な動作パターンを生成する研究が進められていた。このシミュレーションで導き出されたパターンはウェアラブルロボットに適用され、現実世界で収集されたデータを再びシミュレーションにフィードバックし、繰り返し改善されていた。
さらに、ウェアラブルロボットで測定されたデータのみを用いて、ロボットを着用した人の移動経路やエネルギー消費量を正確に測定できるアルゴリズムを開発し、実験が進められていた。
(c)KOREA WAVE/AFPBB News
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