トランプ次期政権が韓国経済に及ぼす最も有力なシナリオ「T.R.U.M.P」とは
KOREA WAVE / 2024年11月8日 9時0分
【KOREA WAVE】韓国の大韓商工会議所は7日、経済・産業の専門家15人の意見を総合して「トランプ米大統領当選が韓国経済に与える影響」を分野ごとに分析・整理した。
大韓商工会議所は「トランプ氏の当選は、輸出・通商、エネルギー、先端産業、金融市場、対北政策など韓国経済全般に大きな影響を及ぼす」とみて、最も有力なシナリオとして次の項目を挙げた。
▽すべての輸入品に対する関税の導入
▽化石燃料への回帰
▽先端産業における不確実性の増加
▽通貨政策への介入
▽米朝首脳による個人的外交
頭文字を取れば「T.R.U.M.P」。このシナリオを想定したうえでのトランプ政権発足に向けた事前の準備を求めた。
◇普遍的関税・相互貿易法施行が予想→対米貿易障壁の懸念
専門家はトランプ氏の通商戦略として「普遍的関税」と「相互貿易法」に注目している。
西江大学国際大学院のホ・ユン教授は「トランプ氏はすべての輸入品に10~20%の関税を課す『普遍的関税』や、相手国と同等の関税率を課す『相互貿易法』を導入して、米国の貿易赤字を減らし、世界貿易収支の均衡を目指すだろう。同盟・非同盟国に関わらず、対米貿易黒字国に対する圧力や貿易障壁が高まる」と予想した。
ホ・ユン氏はさらに「韓国は昨年、米国相手に444億ドル、今年上半期に287億ドルの貿易黒字を記録しているため、米韓FTA(自由貿易協定)などの再交渉を目指す可能性が高い」と指摘。政府レベルで米国産エネルギーや農産物の輸入を増やし、2025年以降の対米貿易黒字の増加を緩和する必要があると助言した。
◇エネルギー価格↓クリーンエネルギー投資企業の不確実性↑
米国内の化石燃料掘削許可の拡大によりエネルギー価格は低下する見通しだが、太陽光や風力などのクリーンエネルギー分野では不確実性が増すと予想される。
梨花女子大学経済学科のキム・ユンギョン教授は「トランプ氏当選後は化石燃料規制の緩和やプロジェクト承認の迅速化により、米国の石油・ガスの生産と輸出が拡大するだろう。これにより、韓国のエネルギー輸入費用の削減が期待される」と述べた。一方で「安価なガスに対する需要増加で輸出が減少したり、中東との関係悪化で地政学リスクが高まったりすれば、エネルギー価格が上昇する可能性もある」と警告した。
◇先端産業へのインセンティブの調整が予想→韓国企業の不安増加
専門家はトランプ政権が先端産業への支援策を縮小し、国内優先主義を強化することにより、韓国の先端産業に不確実性が増すと予想している。
成均館大学化学工学科のクォン・ソクジュン教授は「米国半導体覇権における共和党の外交政策は、同盟国クラスター中心ではなく、自国中心だ。米国の反中政策と自国投資の拡大に向けて、ガードレール条項や補助金要件を強化する可能性がある」と見ている。また「韓国、台湾、日本、欧州の半導体企業に対しては、投資に対するインセンティブではなく、投資しない場合にペナルティを課す政策が取られる可能性がある」と付け加えた。
◇通貨政策の介入でドル安を推進→純輸出の減少懸念
専門家は、トランプ氏当選後、短期的にはドル高の動きが見られるものの、次第にドル安の傾向が強まると予想している。西江大学経済大学院のキム・ヨンイク教授は「トランプ氏の法人税・所得税減税政策が財政赤字を拡大させて国債発行が増え、短期的には国債利回りが上昇し、ドル高傾向が続くだろう」と分析する。一方で「米経済成長率の鈍化、FRBの利下げ姿勢、各国の外貨準備におけるドル保有割合の減少により、長期的にはドル安に転じる確率が高い」と予想した。
◇米朝首脳中心の個人的外交→南北関係の不確実性増加懸念
専門家はトランプ氏の対北朝鮮政策が「米朝首脳による直接交渉」に戻る可能性が高いと予想している。梨花女子大学のパク・ウォンゴン教授は「トランプ政権は米朝首脳中心の外交に戻る可能性が高く、北朝鮮を完全に圧迫するシナリオから核保有を認めるシナリオまで、さまざまな選択肢がある」と述べた。また、韓国政府は完全な非核化の目標を引き続き追求するため、外交努力が必要だと強調した。
◇ウィンウィン作り出す方向
こうした予想に対し、大韓商工会議所のパク・イルジュン専務理事は「トランプ氏当選が先端産業への対米投資や通商、対北朝鮮政策において不確実性を引き起こすのは確かだが、トランプ政権をすでに経験した韓国政府の実利的な外交や交渉の努力に加え、民間レベルでのアウトリーチ活動が連携すれば、韓米の双方にとってウィンウィンの状況を作り出す方向へ展開することも可能だ」と述べた。
(c)KOREA WAVE/AFPBB News
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