練炭不足に苦しむ…ソウルの貧困地域「白砂村」の冬
KOREA WAVE / 2025年1月5日 7時0分
【KOREA WAVE】再開発を控え、多くの住民が退去したソウル市蘆原区中渓本洞(ノウォング・チュンゲポンドン)の「白砂村(ペクサマウル)」。寒波が押し寄せる中、残った住民たちは厳しい冬を耐え忍んでいる。
先月24日午後、この地域を訪れると、山のふもとに人影がまばらな村が広がっていた。空き家のドアには黄色い「空家」の案内が掲げられ、外部からの侵入を警戒している。無人となった家やビニールハウスは崩れかけた状態で放置されている。
そんな中、整然と積まれた白い練炭の灰が、ここにまだ人が住んでいることを示していた。この地域では、都市ガスや地域暖房といった設備は山の下のアパートでしか見られない。
ある家屋の玄関を叩くと、中からパク氏が出てきた。彼の背後には、2坪ほどの狭い空間に古びたニット製造機と扇風機型の電気暖房器具が置かれていた。パク氏は、かつてのニット産業が盛んだった1980年代にこの機械を導入し、家内工業を営んできた。
しかし、住居が工場として登録されているため、自治体から支給される「練炭クーポン」は受け取れない。「余裕のある人はボイラーに切り替えるけど、私は以前『練炭銀行』からもらった400個で今も暖を取っている。冬を越すには1000個は必要だが、練炭を節約しようと一時的にヒーターを使っている。全く暖かくない」と苦笑した。
パク氏にとって、冬の日々を数える単位は「個」だ。1個900ウォン(約100円)の練炭を何個使ったかで、その日の記憶をたどる。氷点下の日々に9個使用する日は、「9個の日」として記憶に残る。日数が増えるほど暖房費の負担も重くなる。
節約した練炭を指差しながらパク氏は「初冬の異常気象でニットもあまり売れなかったのに、毎月の暖房費と工場費だけで40~50万ウォン(約4~5万円)が消えていく」とため息をついた。
白砂村は、1967年にソウル市内の貧困層が開発を理由に強制移住させられて形成された地域だ。現在、再開発と再建築を前に多くの住民が村を離れ、残る世帯は30~40軒に過ぎない。
蘆原区庁の関係者は「再開発で移住が今年末までに完了する予定だと聞いている。残留住民には実質的に練炭クーポンが支給されていない」とも明かした。
ソウル市の資料によると、2024年10月時点で中渓本洞の106世帯中、練炭を使用している世帯のうち80%にあたる86世帯が、練炭クーポンではなく民間支援に依存しているという。
パク氏は「近くの教会が少しずつ練炭を支援してくれる。私はまだ余裕があるから、急を要する人たちに優先して渡してほしい。自分の欲を満たすためだけに受け取ることはできない」と語り、電気暖房の前に戻っていった。
(c)NEWSIS/KOREA WAVE/AFPBB News
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