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【特集】若年性認知症の妻との日常をSNSで発信 「うちも頑張ろうと力になれたら」 岡山

KSB瀬戸内海放送 / 2024年9月30日 19時27分

若年性認知症の妻との日常を発信する倉敷市の男性

 9月は「認知症月間」。認知症に対する関心や理解を深めてもらおうと、岡山・香川でも啓発活動が行われました。岡山県倉敷市に住む男性は、若年性認知症の妻との日常をSNSで発信しています。

真吾さん「誕生日は? 1970年……?」
かおりさん「え~っと……」
真吾さん「もう言えないか、ちょっと難しい……覚えてないです。8月4日です」
かおりさん「あっ、8月4日」

 倉敷市に住む真吾さん(54)と妻のかおりさん(54)。かおりさんは4年前、50歳で「若年性アルツハイマー型認知症」と診断されました。脳の萎縮によって記憶力が低下するなどの症状が現れる病気で、根本的な治療法はまだありません。

 真吾さんは今仕事を続けながら、かおりさんと2人で暮らしています。

真吾さん「きょうは何月ですか?」
かおりさん「9月」
真吾さん「何日ですか?」
かおりさん「15」
真吾さん「何曜日」
かおりさん「日曜日」
真吾さん「ああOK、ばっちり、じゃあ日曜日の薬を取りましょう」
かおりさん「日曜日……」

(倉敷市在住/夫 真吾さん[54])
「薬のケースを貼り付けているんですけど、それで毎日飲ませたことが分かるようにふたをあけっぱなしにして、治す薬ではなくて、ただ遅らせるだけの薬なんだけど、それでも頼みの綱なので、それを毎朝忘れないようにするためのルーティン」

真吾さん「見守りカメラで母さん(かおりさん)と話をするので、寂しくないように(見守りカメラに)顔を描いています。寂しい? 父さん(真吾さん)おらんと」
かおりさん「寂しい」
真吾さん「いいんだよ、父さん早く帰ってきますからね」

 真吾さんが留守の間はスマートフォンと連動した鍵や見守りカメラなどを活用しています。

(倉敷市在住/夫 真吾さん[54])
「このプチプチ(緩衝材)も84m買ってるんですけど、これを絶やさないように。指先を使うことが刺激になるから」

 真吾さんは2023年12月から、SNSの「TikTok(ティックトック)」に動画を投稿しています。(真吾さんのTikTokアカウント:「ススリスト真吾」)

 手をつないで散歩に出かけたり、2人で料理をしたり。かおりさんのリハビリを兼ねた日常生活の様子や、2人のやりとりが反響を呼び、フォロワーは5万3000人を超えています。

 かおりさんが洗濯できるように工夫した動画は、1170万回も再生されました。

記者「好きなんだなっていうのが伝わってきます」
真吾さん「そうですね、好きですね、単純に好きですね、母さんかわいいでしょ、かわいいですよね」

(倉敷市在住/夫 真吾さん[54])
「同じものを買ってきたりとか同じことも言うし、財布の中に小銭がパンパンになる、札がなくなって……『何これどうしたん?』って。信じられないし、嘘じゃろ、冗談じゃろ、受け入れられん、そんなの無理よって」

 知人の紹介で出会い、結婚した真吾さんとかおりさん。2人の子どもにも恵まれました。現実を受け止めるには、長い時間がかかったといいます。

(倉敷市在住/夫 真吾さん[54])
「もう一緒に死のうって。自分はもう無理だってなったけど、母さんは『嫌だ、私は絶対生きたい』って。ああそうなのかと思って。朝起きるたびに『母さん認知症か』『ああ認知症か』って……。でも受け入れたからにはもうなんとかやっていかないといけない。母さんを中心に生きてます。母さんに捧げてるんですから父さんの人生は……」

 厚生労働省の発表によると、かおりさんのように65歳未満で発症する「若年性認知症」の患者は全国に3万5700人いると推計されています。

(倉敷市在住/夫 真吾さん[54])
「認知症の会に行った時にすごく救われて、『わしらだけじゃない、いっぱいおるんじゃ』と思って。表には出てこないじゃないですか、認知症の人は分からないし。母さんがさらし者になってしまうので、なかなか投稿できないと思って。でも投稿したい気持ちはめちゃくちゃあったんです。それを見た人が『うちと同じじゃ、この人らが大変だけど頑張っているからうちも頑張ろう』っていうことになるかなって。ちょっとでも力になれたら。母さんに元気もらっているという人はいっぱいいるんですよ、世の中に。何億人といるんですよ。そんなにはおらんけど」

 TikTokライブには2人を応援する人や、同じ悩みを抱える人たちが集まってきます。

TikTokライブでのやりとり
「母さんは携帯は持っていますか」「持ってます、持ってるけど」「操作できますか?」「操作はできない」
「できることはちょっとしたことでもやらせてあげた方がいいと思うし、やった後にほめてあげることが絶対大事だと思う」
「共感できる部分が多いうちも母親が軽い認知症で」
「大変だけどお互い頑張っていきましょうね」
「時は戻せないし止まらないし笑って過ごしても人生泣いて過ごしても人生なら笑っていた方がいいですもんね」
「優しさと強さを学んでいますありがとう、ああよかったわ」
「これからも応援してまーす」
「ありがとう」「母ちゃん笑ってくれとる」

(倉敷市在住/夫 真吾さん[54])

「SNSで皆さんと隣にいる感じで親戚が一気に増えたみたいな。それに支えられている部分もだいぶあると思いますね」

 診断から4年が経ち、かおりさんの症状はゆっくりと進行しているといいます。

(真吾さんとかおりさん)
真吾さん「認知機能がだいぶ落ちてきているから、今まで当たり前にできていたことはできないようにはなっています。これからがもっと大変かも分からない。なんでこんなになってしまったのかって?」
かおりさん「そうそうそう」
真吾さん「そうやな、そうだと思うわ。それはむごいよ、若年性認知症は一番むごいと思うわ。どっちもにむごい」

(かおりさんの動画)
真吾さん「父さんのこと忘れるなよ」
かおりさん「それは大丈夫」
真吾さん「ほんまに? 自信持っとる? よかった……」

(真吾さんとかおりさん)
「父さんと一緒にいたいんでしょ、母さん。じゃあもうしょうがない、父さん頑張る」

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