【特集】来日半年で高校入試に挑むミャンマー出身の18歳 NPOが開く教室で受験勉強…外国にルーツを持つ子どもたち どう支える? 香川
KSB瀬戸内海放送 / 2025年1月27日 18時26分
日本で生活する外国人が増え、香川県では、日本語指導が必要な小中学生がこの10年で倍増しています。約半年前にミャンマーから来日した18歳の女性は、1月、高校入試に臨みました。母国で中学校を卒業しているため日本の中学には編入できず、市民が開く教室で受験勉強に励みました。
ミャンマー出身のエイン・ダラ・チッさん、18歳。2024年6月に来日しました。一緒に来日した妹と弟は中学校に編入しましたが、チッさんは、母国で中学を卒業しているため編入はできず、NPOが開く教室で勉強をしています。
この1カ月後に、私立高校の一般入試を控えていました。
(エイン・ダラ・チッさん)
「(Q.入試を控えた今の気持ちは?)怖いです」
(オアシスこくさい教室/池内道子さん[2023年10月])
「わからないことは『わかりません』と必ず正直に言います」
この教室は、親が外国出身者だったり国外で生まれたりした「外国にルーツを持つ子どもたち」を後押ししようと、2023年に開設されました。
開いたのは元教員の池内道子さん。丸亀市の小・中学校で約10年間、外国ルーツの子どもたちを指導してきました。
(オアシスこくさい教室/池内道子さん)
「この子は学力があるなと思っても、高校入試に間に合わず、いつの間にか母国に帰ったという子も結構たくさんいます。母国から日本にやってきて、そこで頑張ろうと思うような子どもに力を貸さないなんておかしいでしょ」
丸亀駅の近くに、チッさんのお気に入りの場所がありました。
(エイン・ダラ・チッさん)
「(Q.丸亀の街はどうですか?)とてもきれい。山とか。きれいです。
「(Q.ミャンマーはどんな感じなんですか?)ミャンマーは人が多い。とても楽しいです。高校も、大学の学生も、アルバイトの人もやめた」
ミャンマーでは、2021年2月、国軍によるクーデターが起きてから、市民への弾圧が続いています。
チッさんの母は、子どもたちの教育のために先に来日し、丸亀市にある介護の専門学校に通いつつ、仕事を始めました。そして、半年ほど前にチッさんらを日本に呼びました。
この日は2024年、最後の教室でした。
池内さん「(冬休みの)宿題いっぱいあるよ。これが漢字。少しずつね。頑張ってしてください。わからないところはいいからね。なるべく頑張る」
チッさん「はい。頑張ります」
チッさんは、英語や数学の学力はあります。ただ、「日本語」で書かれた問題文を理解できるかが課題です。
(エイン・ダラ・チッさん)
「(Q.宿題はやってますか?)はい。漢字は終わりました」
年末年始も、自宅で小学校低学年で習う漢字の勉強をしていました。
試験日は1月15日です。
チッさんにはまだ国語の試験は難しいため、選択肢を選ぶ問題は回答欄を埋めて、漢字の回答欄には今後の決意として、「日本語」「努力」「頑張る」と書くことにしました。
(オアシスこくさい教室/池内道子さん)
「(Q.問題の答えとは違うんですよね?)もちろん違いますよ。彼女は、日本語ができないことで学力が低いと思われるじゃないですか。日本語ができないことで学力が低いと思われることが私にとっては嫌なんです。ミャンマー語だったらできると思いますよ」
チッさんの試験は国数英の3教科と面接です。
(面接の練習)
池内さん(面接官役)「座ってください。本校を受験する目的は何ですか?」
チッさん「はい。私はミャンマーで中学校を卒業しましたが、日本の高校で勉強したいと思います」
池内さん(面接官役)「勉強したいからです。勉強したいと思います。どっちでも同じだから大丈夫。将来の夢は何ですか?」
チッさん「大学で勉強して、ファミリーと一緒にお店を経営したいです」
(オアシスこくさい教室/池内道子さん)
「受験番号、ターさん来たよ。1053番。チッさん1001番」
チッさんは、妹のターさんと同じ高校を受けます。
そして受験の結果は、「姉妹揃って合格」です。
(オアシスこくさい教室/池内道子さん)
「いらっしゃい! おめでとう!」
(エイン・ダラ・チッさん)
「とても楽しいです。妹と一緒に学校に行きたいから」
チッさんは、知人に翻訳を頼んで、感謝の言葉を用意していました。
(チッさんの感謝の言葉)
「池内先生におかれましては、とても丁寧に教えていただきまして大変感謝いたしております。いつもお世話になっているさまざまな先生方にもありがとうございますと言いたいです。受験生になっても、勉強のペースがつかめず、家ではうまく勉強に集中できなかったですが、塾でご指導いただいたおかげで、藤井高校に見事に合格できました。ありがとうございます」
池内さん「いえいえ。今からよ今から。高校入って勉強しないと。日本語の勉強ね。大変だけどね、頑張ろうね」
調査によると、2024年度の公立高校の入試で、外国人を対象にした特別枠を設けていたのは、47都道府県中25の都府県で、中四国では広島県だけです。
池内さんは、外国にルーツを持つ子どもの将来のために「香川県にも特別枠を設置してほしい」としています。
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