【解説】約30年間変わらない報酬…選挙のウグイス嬢の実態は? 岡山
KSB瀬戸内海放送 / 2025年2月5日 18時14分
選挙の車上運動員、いわゆるウグイス嬢に法律の上限を超える報酬を支払ったとして、岡山県の前の新見市長が書類送検されました。ウグイス嬢の報酬の上限は1992年に1日につき1万5000円になり、現在も変わっていません。この報酬の上限が時代にあっていないのではないかという声が候補者や専門家からもあがっています。
1月に行われた倉敷市議会議員選挙でウグイス嬢を務めた女性。普段は司会業をしていて、2009年の市議選から同じ候補者を支えています。もうひとりのウグイス嬢と2人で1週間、選挙運動をします。
投票前日の1月25日、2人は午前8時に事務所を出発しました。
(呼び掛け)
「サニータウン倉敷の皆さまおはようございます。軒下深くお願いにあがらせていただいております」
選挙カーでの移動中は沿道の人の反応や場所を見ながら有権者への呼び掛けの内容を変えていきます。
2人は、呼び掛け役と車から手を振って有権者にアピールする役を約10分ごとに交代します。
(倉敷市議会/大橋賢 議員)
「声を出す代弁者として、いてもらわないと1週間務まらない」
街頭演説の時は選挙カーを降り、候補者が多くの有権者と効率的に握手できるようにサポートします。
この日は、約40カ所で街頭演説がありました。昼の休憩は約30分。トイレ以外で休めるのはこの時だけです。
(ウグイス嬢を務めた女性)
「1週間にわたり皆さま本当にありがとうございました。これにて(マイクを)納めさせていただきます。お疲れさまでした。ありがとうございました」
(倉敷市議会/大橋賢 議員)
「ウグイス嬢というのはそれなりの努力もされて訓練もされている。(報酬は)30年間ずっと変わっていない。もう少し国の方が考えてあげればいいのではないかと思っている」
専門家「報酬の見直しが必要」
専門家は、お金がかかる選挙を防ぐためにウグイス嬢の報酬に上限は必要だとしながらも、見直しを考える必要があると指摘します。
(一橋大学 法学部/只野雅人 教授)
「もちろん経済状況が変わっていきますし、賃金水準なんかも変わってきますから、もちろんその見直しは必要なのかなというふうには思います。ウグイス嬢、車上運動員についてはリクルートが難しいっていう話は聞くところはありますね。特にスキルがある方ですよね、そこに人気が集中しますから、なかなか1万5000円では難しいという話はよく聞きます」
約30年間で最低賃金は約1.87倍に増加も…報酬額は変わらず
公職選挙法は、選挙運動を手伝う人について原則、ボランティアでなければならないとしています。報酬を支払うことができるのは、車上運動員であるウグイス嬢、手話通訳者、要約筆記者、選挙事務員のみです。
ウグイス嬢の報酬は1992年に1日につき1万5000円以内になりました。選挙運動ができるのは午前8時から午後8時までの12時間です。12時間労働で報酬が1万5000円なら時給にすると1250円です。
これを最低賃金の全国平均と比較します。1992年度の最低賃金は時給565円でしたが、2024年度は時給1055円。30年余りの間に約1.87倍に増えました。
しかし、ウグイス嬢の報酬の額は現在も変わっていません。さらに、実際には翌日の打ち合わせなどで労働時間が12時間を超えるケースもあります。
「公職選挙法」時代に合わせた変化を
専門家は、ウグイス嬢の報酬も含め、公職選挙法を見直す時期が来ているのではないかと指摘します。
(一橋大学 法学部/只野雅人 教授)
「(公選法は)一律平等に不自由を課すものだとよく言われたりしますけど、選挙の公正さとか公平性みたいなものを重視した制度設計とか運用がこれまでだと思う。それはもちろん重要なんですけど、結果としてやっぱり自由というものが制限されてきたんじゃないかなと。ウグイス嬢問題もつまるところそこに行きつく話だと思う」
只野教授によると、公職選挙法は外国の法律と比べて選挙運動を縛る部分が多いということです。例えば、選挙期間中の戸別訪問を禁止しています。
一方で、候補者の名前を連呼することや停止した選挙カーの上で演説することは認めています。
只野教授は、これにより選挙カーを使った選挙運動がメインとなりウグイス嬢の重要性が高まっているとしています。
(一橋大学 法学部/只野雅人 教授)
「車上運動員に過剰な負担がかかるような仕組みになっているような感じがする。ここで頑張らないとアピールができないっていうことになれば、どうしてもそこにリソースを投下せざるを得なくなります。『選挙カーが走り回って候補者名と簡単なキャッチフレーズを連呼するだけの運動が本当に良いのか?』というのが一番問われるべき問題かなと思います」
公職選挙法の基となった普通選挙法が定められたのは、今からちょうど100年前の1925年。
只野教授は、SNSの力が注目された2024年の東京都知事選や兵庫県知事選などを例に出し、公職選挙法自体を時代に合わせ変えていく必要があると主張します。
(一橋大学 法学部/只野雅人 教授)
「10数年前にネット選挙が解禁されて、これが去年から注目を集めるようになったと思うんですけど、本来それがデフォルトになっていけば各陣営きちんとした使い方を考えなきゃいけないということになると思いますし、有権者側の受け止め方も問われてくると思う。時代に合わせた運動スタイルの変化は可能だと思うので、そのあたりについても考えていく必要がある」
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