クルマの販売戦略は顔に出る? 車種専用エンブレムが減っているワケは…
くるまのニュース / 2018年8月11日 10時30分
クルマの「顔」に取り付けられるエンブレムの多くは、メーカーで統一したものとなっています。しかし、近年は車種ごとの専用エンブレムが減少しているようです。そのワケは販売戦略とも密接にかかわっていました。
■トヨタはなぜ車種ごとのエンブレムが多いのか
クルマのフロントから見たど真ん中、グリル部分やその直上に取り付けられたエンブレムの多くは、メーカーで統一したものとなっています。各社のテレビCMなどでも繰り返し映し出されていることもあり、日産といえば「NISSAN」のマーク、ホンダといえば「H」のマークと思い浮かぶ人もいるでしょう。
これが車種ごとに異なってくるのがトヨタです。楕円に「T」があしらわれたマークが取り付けられた車種と、そのクルマならではのエンブレムが採用されている車種とが混在しているのはなぜでしょうか。
専用エンブレムが採用されている車種は、「クラウン」や「センチュリー」といった高級車から、「アルファード」「エスティマ」「エスクァイア」といったミニバン、さらには「ハリアー」「アリオン」「プレミオ」などなど。また、「ヴィッツ」「ヴェルファイア」「ヴォクシー」には、トヨタの販売チャネルのひとつ「ネッツ」の「N」マークが採用されています。
エンブレムの違いは、ひとつにはその車種を扱う販売店の違いを表しているようです。トヨタによると、「『クラウン』や『カローラ』シリーズなど、チャネル専売商品(クラウンは東京を除いてトヨタ店、カローラシリーズはカローラ店でそれぞれ専売)は個別エンブレムを採用していますし、『プリウス』や『86』など、複数チャネルで併売する車種はトヨタエンブレムを採用しています。また、後発チャネルであるネッツ店の専売車種は、ネッツのエンブレムです」とのこと。
そして「レクサス」については、「ブランド育成の観点から(『L』の)エンブレムを統一しています」といいます。そのような傾向はあるものの、車種ごとのエンブレムを設ける基準が厳密に決まっているわけではないそうです。
■「NISSAN」すら捨ててしまった車種も!?
日産ではかつて、「セドリック」や「パルサー」「サニー」など、専用のエンブレムがフロントに取り付けられたクルマが多数ありましたが、それら車種が廃止されていくとともに、「NISSAN」のエンブレムが増えていきました。このことは、日産の販売店網が再編・統合されていった時期とリンクしています。いまや専用エンブレムをグリルに装着した車種は「GT-R」のみで、「フェアレディZ」ですらかつての「Z」マークが「NISSAN」マークに代わっています。
「スカイライン」にもかつては専用エンブレムがありましたが、この車種には現在、日産の海外ブランド「インフィニティ」のエンブレムが取り付けられています。高級ラインである「インフィニティ」エンブレムを取り付けて海外の高級セダンに対抗する一方、半世紀以上に渡り親しまれてきた「スカイライン」の名をなくすわけにもいかない――そのような経緯から、生まれ変わった「スカイライン」の証として「インフィニティ」のエンブレムが取り付けられたようです。その後、北米などで「インフィニティ Q70」として販売される日本仕様「フーガ」にも、「インフィニティ」のエンブレムが取り付けられています。
「インフィニティ」エンブレムがついた日産「スカイライン」
このように車種ごとのエンブレムが減少していくなか、これを増やしているメーカーもあります。ダイハツです。現行ラインアップでは「コペン」「ムーブ キャンバス」「キャスト」「ウェイク」にそれぞれフロントグリルないしその直上に専用エンブレムを設定。2018年6月発売の「ミラ トコット」では、フロントに「D」マークも含めてエンブレムを廃し、「TOCOT」のロゴを取り付けています。なお、どの車種もリアは「D」のエンブレムです。
「『ミラ』『ムーヴ』『タント』などの基本車種は『D』のエンブレムを使っていますが、それらから派生した車種について、個別のエンブレムを設定しています。『ミラ ココア』(2009~2018)あたりからの傾向で、その車種の個性を打ち出す意味合いがあります」(ダイハツ)
このように、専用エンブレムはその車種の個性や歴史を映し出す鏡ともなります。たとえばトヨタ「クラウン」の王冠エンブレムや、「カローラ」の「C」をかたどったエンブレムは、形の違いこそあるものの、長い歴史のなかでずっと受け継がれているものです。一方で「レクサス」のように、統一のエンブレムはブランドとしての知名度や価値を高める側面もあるのです。
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