燃費競争終り、今度はスポーティカー競争が激化? メーカー系チューニングカーが拡充される理由
くるまのニュース / 2018年10月5日 10時30分
近年はトヨタ、日産、ホンダなど、市販車をベースにしたメーカー系のチューニングカーが増えています。スバルは以前からこの分野に積極的で、日産もオーテックジャパンの手掛けるライダーシリーズなどを用意していましたが、ここ最近は車種がさらに充実して販売にも力を入れてきています。
■市販車をベースにしたメーカー系のチューニングカーが増加
このところ、燃費がナンバーワンという広告が減りました。ライバルとの差もほとんどなくなり、ユーザーもそこを気にしなくなったことが要因です。近年はその燃費と真逆な位置に置かれるスポーティカーに力を入れる動きが目立っています。トヨタのGRシリーズ、日産のNISMO、AUTECH、ホンダのモデューロX、スバルのSTIなど、市販車をベースにしたメーカー系のチューニングカーが増えています。
スバルは以前からこの分野に積極的で、日産もオーテックジャパンの手掛けるライダーシリーズなどを用意していましたが、ここ最近は車種がさらに充実して販売にも力を入れてきています。
いずれも「コンプリートカー」と呼ばれ、ユーザーは市販車をベースにチューニングを施された完成車を買います。当然、各種の法規にも対応しており、新車を扱う販売ディーラーで購入して車検なども受けられます。ユーザーが個別にパーツを装着するチューニングに比べると、完成度が高く、改造の度合いに対して出費が割安なことも特徴です。
トヨタではGRシリーズをGRスポーツ/GR/GRMNの3段階に分けています。GRスポーツは比較的軽度のチューニングです。ボディ剛性を向上させたり、サスペンションの設定もスポーティに変更されますが、ヴォクシー&ノアのようなミニバンも対象に含まれます。
GRになるとチューニングの水準がGRスポーツよりも高まり、ヴィッツGRではCVT(無段変速AT)の制御なども変更されます。7速の疑似変速を10速に増やしました。
この上に、サーキット走行にも十分に対応できるGRMNという高度なチューニングの枠組みもありますが、今は車種が用意されていません。ヴィッツGRMNを150台の限定で販売した後は、GRMNを新車で買うことはできません。
GRシリーズをなぜ設定したのか、その理由をトヨタの開発者に尋ねると、「走ることを通じて、クルマを楽しんでいただきたいという考えでGRシリーズを用意しました。以前はプロダクトアウト、つまりメーカーからお客様に向けた提案として行っていましたが、今はお客様のニーズに合っていることが分かりました。そこでGRスポーツは、ヴォクシー、アクア、プリウスαなど、幅広い車種に設定しています」といいます。
■女性からNISMOモデルはファッション性の高さが支持される
日産の販売店では、NISMOモデルはファッション性の高さが支持されるといいます。
「NISMOは、ノート、セレナ、ジューク、リーフなど、バリエーションを充実させています。クルマに詳しいお客様にとっては、NISMOのようなエアロパーツを備えた仕様は、走りの良いスポーツモデルに位置付けられるでしょう。
日産ノートをNISMOが手掛けた「ノートNISMO」
しかし、先入観を持たない女性のお客様からは、いわばファッションとして、単純にカッコイイという意見も聞かれます。そのためにファミリーカーを購入されるお客様の場合、夫婦で意見が一致してNISMOを選ぶことが多いです。
ダンナさんはクルマが好きだから、本当はミニバンやコンパクトカーには乗りたくない。でもNISMOなら、ボディ剛性も高まるから満足できます。奥様にも外観が気に入って購入していただけてます。販売店の展示車や試乗車を見たことがきっかけで、NISMOが売れることもあります。そこで最近は試乗もしやすくなっています」(日産販売店セールスマン)
ミニバンやコンパクトカーは、車内の広さとか運転のしやすさなど、実用性が重視されるカテゴリーです。
しかもライバル車同士の競争が激しいため、価格も安く抑えねばなりません。コストの低減に迫られ、操舵感、走行安定性、乗り心地といった走りの質が下がりやすいです。
メーカー系のチューニングカーは、このような大量生産される市販車に生じやすい煮詰めの甘さを洗練させ、外観もスポーティかつ上質に仕上げています。最高出力を大幅に高めるような目立った改造はしませんが、クルマとしての総合バランスが高まっています。これが本来のチューニング(調律とか調整という意味)でしょう。
また今の自動車メーカーは、日本を将来性の乏しい市場と判断して、海外に比べると新型車の発売が滞りがちです。設計の古いクルマも増えていますから、日本国内では、実質的に少数の車種で幅広いユーザーニーズに対応しなければなりません。
そうなると1車種の中に、さまざまな選択肢を設ける必要があり、そのひとつにメーカー系チューニングカーがあります。
■昔はなかった現代的な楽しいクルマ選び
以前はトヨタなら、アルテッツァ、セリカ、レビン&トレノ。日産ならプリメーラ、シルビア、パルサーという具合に、価格が手頃でスポーティなクルマが豊富にありました。
ホンダフリードに走りのチューニングを加えた「フリードModuloX」
それが今、スポーティカーなど趣味性の強い車種は価格が高まり、クルマ好きのユーザーに適した購入しやすい車種が減っています。そこにどうにか当てはまるのが、コンパクトやミドルサイズの車種をベースにしたメーカー系チューニングカーです。
価格はトヨタ「ヴィッツGRスポーツ」が207万6840円、日産「ノートNISMO」は212万2200円、ホンダ「フリードモデューロX」は283万680円という具合です。いずれもエアロパーツを装着したり、ボディ剛性を高めたスポーツモデルとしては、割安な価格設定になっています。
普通のコンパクトカーでは物足りないですが、GRスポーツ/NISMO/モデューロXであれば満足できる人も多いでしょう。メーカー系チューニングカーは、昔はなかった現代的な楽しいクルマ選びです。
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