観音開きのサイドドアはなぜ廃れた? あのクルマで伝統のオールドスタイルは別名「自殺ドア」!?
くるまのニュース / 2018年10月27日 10時0分
サイドドアが後方から開くのではなく、前方から開くタイプがあります。前席側と後席側のドアで観音開きになるクルマも。かつてはいまよりも多かったこのタイプ、なぜ廃れてしまったのでしょうか。
■初代「クラウン」は「自殺ドア」だった!?
いまのクルマは前席、後席とも、サイドドアはヒンジ(蝶番)が前方に設けられ、後方から開くのが主流です。しかし、なかにはその逆、ヒンジが後方に設けられ、前方から開くドアもあります。
このドアはクラシックカーでは比較的多く見られる形式です。たとえば1955(昭和30)年発売の初代「クラウン」は後席のドアが前方から開く方式で、前席ドアと合わせて観音開きにすることができました。このほか、2ドア車であるスバル「360」などにも、前方から開くドアが採用されています。この方式であればドアの後ろに回り込む必要がないので、乗り降りがしやすく、停車中に前席から後席に移るのも容易といえましょう。
しかし、この方式のドアには「スーサイド・ドア」、つまり「自殺ドア」ならぬ物々しいあだ名がついています。というのは、走行中に開けたり、半ドアだった場合、風圧で大きく開いてしまう危険があったから。仮に、ドアにもたれかかっていると、外に投げ出される恐れもあったのです。
その後はあまり見られなくなった「スーサイド・ドア」ですが、近年これを採用した車種もあります。
日本車では、2003(平成15)年に発売されたマツダのロータリーエンジン(RE)搭載のスポーツカー「RX-8」が挙げられます。同じくRE搭載のスポーツカー「RX-7」は2ドアでしたが、当時の親会社フォードから4ドアを求められたため、小さな後席ドアが前から開き、前席ドアと合わせて観音開きになるタイプを採用したのです。
Bピラーを後席ドアに埋め込む形でボディーから分離している(いわゆるピラーレス)ので、後席のスペースが小さいながらも、乗り降りの利便性が確保されています。なお、このクルマの後席ドアは前席ドアが開いたときにしか開かない構造で、これにより誤開放を防いでいます。
■2000年代以降も細々と存在 伝統になっているあのクルマは別格!
同様の観音開きサイドドアは、2000年代にはホンダのSUV「エレメント」や、トヨタ「bB」のピックアップトラック版である「bB オープンデッキ」(後席ドアは助手席側のみ)、初代クラウンのオマージュともいえる(いわゆるパイクカー)トヨタ「オリジン」などにも採用されました。「オリジン」以外は、後席ドア単独では開けられません。
輸入車での採用例としては、2007(平成19)年にBMW傘下のミニから発売された「クラブマン」が挙げられます。この車種では運転席側のみ、前方から開くタイプの後席ドア「クラブドア」が設けられました。「クラブマン」の場合、やはり後席ドア単独では開けることができませんが、オペルのミニバン「メリーバ」(2010年発売の2代目)などは、Bピラーがあり、後席ドアも単独で開けられる観音開きタイプでした。
しかし、ミニ「クラブマン」は2015年発売の現行モデルで「クラブドア」が廃され、通常の4ドアに変更されています。ビー・エム・ダブリューによると、「車体をサイズアップし、ワンランク上のプレミアムコンパクトセグメントに参入するうえで、しっかりした4枚ドアを装備したかった」とのこと。
一方、BMW傘下になる以前のミニ「クラブマン」などで伝統的に採用されていたトランクの観音開きドアは、「クラブマン」におけるアイデンティティのひとつでもあるとして残したそうです。
マツダ「RX-8」。ピラーが埋め込まれた後席ドアは小さく、前席ドアを開けないと開けられない(画像:マツダ)。
観音開きのサイドドアは人目を引くのか、モーターショーのコンセプトカーなどでは比較的多くみられます。しかし市販車に採用されることは稀といえるでしょう。「クラブマン」のように、これを採用していてもモデルチェンジを機に廃止、あるいは後継モデルに引き継がれていないケースを見ると、メリットはそれほど大きくはないのかもしれません。
というのは、後席をスライドドアとすれば、大きな開口幅を確保できるからです。いまではホンダ「N-VAN」やダイハツ「タント」のように、スライドドアにピラーを埋め込むことも可能になっています。
そうしたなか、ロールス・ロイスや運転手付きのリムジンなどは、この方式を伝統的に採用しています。ロールス・ロイスの場合、観音開きサイドドアのほうが、後席に乗る人の所作が美しく見えるのだそうです。
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