庶民の足から最新スポーツカーまで勢ぞろい 3輪自動車5選
くるまのニュース / 2019年5月14日 6時10分
日本ではかつて多くの3輪自動車が走っていました。しかし時代とともに淘汰され、いまではほとんど見ることはありません。そこで、これまでに販売された国内外の3輪自動車のなかから、5車種をピックアップして紹介します。
■海外でも日本でも愛された3輪自動車5選
いまではまず見かける機会がないクルマのひとつに、3輪自動車があります。
日本で3輪自動車というとダイハツ「ミゼット」が真っ先に浮かびますが、海外でも一時期は3輪自動車が数多く作られていました。
4輪自動車に比べて低い操縦安定性や、少ない積載性能と乗車定員などさまざまな問題があって、現在はほとんどのメーカーが3輪自動車の製造から撤退しています。
そこで、これまでに販売された国内外の3輪自動車のなかから、ユニークなモデル5車種をピックアップして紹介します。
●リライアント「リアルト」
デザインは現代的でスタイリッシュなリライアント「リアルト」
イギリスで制作されたテレビドラマ「Mr.ビーン」に登場するクルマというと、ビーンの乗る「ミニ」が有名ですが、そのビーンに目の敵のように扱われる3輪自動車が、かつてイギリスにあった「リライアント」というメーカーの「ロビン」です。
ロビンは1973年に発売され、1982年に後継の「リアルト」となり1997年まで生産。イギリスでは3輪自動車が税金や免許制度で優遇されていたため、複数のメーカーが3輪自動車を製造して庶民の足として愛されました。
リアルトは40馬力を発揮する850ccの直列4気筒エンジンをフロントに搭載し、リアを駆動するFR車で、ボディはFRPでできており、車重は400kg台と軽量でしたので非力ながらもキビキビと走ったといいます。
しかし、このリアルトのような前1輪はカーブで横転しやすく(乗り方にもよる)、高速走行には向きませんでした。実際に「Mr.ビーン」でも何度も横転するシーンがあります。
そして、免許制度の優遇がなくなった2001年に(現在は優遇制度が復活しています)リライアントは3輪自動車製造を終了しますが、いまもイギリスには愛好家が多く、オーナーズクラブもあるくらいです。
●メッサーシュミット「KRシリーズ」
飛行機をイメージさせるキャビンが特徴のメッサーシュミット「KRシリーズ」
飛行機好きにとって「メッサーシュミット」は、第二次大戦中のドイツ空軍の主力戦闘機や爆撃機を製造していたメーカーとして知られていますが、戦後は自動車製造も行なっていました。
戦後に航空機製造が許可されなかったメッサーシュミットは、1953年に「KR175」という174cc2サイクルエンジンを搭載した3輪の超小型車を発売。車体のカテゴリーとしては「キャビン付きスクーター」に属します。
前が2輪の車体は、まるで航空機のキャノピーのような形状の屋根を持ち、室内は前後に2人乗るシート配置となっており、ハンドルも航空機の操縦桿のような形状でした。
1955年には排気量を191ccにアップした「KR200」にモデルチェンジし、後に屋根を幌にしたオープンモデルも追加されます。
しかし、1960年代にヨーロッパ各国が好景気になると普通の乗用車が売れ、KRシリーズの販売は低迷。1964年に製造を終了します。
以降、メッサーシュミットは自動車製造からも撤退し、合併と買収を経て、現在はエアバス社傘下の会社として航空機産業に携わっています。
●ダイハツ「ビー」
前衛的なデザインで早すぎた感もあるダイハツ「ビー」
ダイハツは長い歴史のあるメーカーで、1907年(明治40年)に「発動機製造株式会社」として大阪で創業しました。
いまでいう産業用、農業用の汎用エンジンを製造し、2輪車の製造を経て3輪トラックの製造を行ないます。戦後は軽3輪トラック「ミゼット」が大ヒットしたのは周知の事実です。
そのミゼット誕生以前の1951年に発売された「Bee(ビー)」という3輪乗用車を作っていたのは、あまり知られていません。
ビーは804ccの空冷水平対向2気筒エンジンをリアに搭載し、ボディタイプは4人乗車の2ドアセダンでした。特徴的なフロントのデザインは当時としても斬新で、曲面を多用した流麗な形となっています。
先進的なクルマに見えますが販売的には全く振るわず、わずか1年で生産を終了し、正真正銘の幻のクルマとなってしまいました。
■いまでも新車で買える3輪自動車もあり
●マツダ「Tシリーズ」
都会でも山道でも重宝したマツダ「Tシリーズ」
ダイハツ「ミゼット」は個人商店の配達用として需要が高まりましたが、マツダはもっと大型の3輪トラックを製造していました。なかでも代表的なモデルが「Tシリーズ」です。
マツダは戦前からバイクをベースした構造の3輪トラック製造の実績があり、1957年には1.4リッターエンジンを搭載した2トン積みの「HBR型」を発売。
1959年に排気量をアップした「T1500」が発売され、1962年にはさらに排気量をアップした「T2000」を発売し、大型3輪トラック分野で人気を博します。
とくに都市部では車体の大きさの割に小回りがきくことと、3輪ならではの特性として片側の駆動輪が浮くことが少なく、悪路に強いというメリットがありました。
しかし、世の中は高速時代に突入し、3輪自動車のデメリットの方が浮き彫りになり、価格も4輪トラックに近くなったため、1970年代になると急速に淘汰されてしまいました。
●モーガン「スリーホイラー」
50年以上の歳月を経て復活したモーガン「スリーホイラー」
創立100年以上の歴史があるイギリスのスポーツカーメーカー「モーガン」は、3輪自動車の製造から始まりました。
モーガンというと、いまもほとんどの工程を手作りで製造しており、ボディの一部は木で作られるなど、量産とは無縁のモデルを作ることで有名です。
また、デザインも戦前のスポーツカーのイメージを貫いていますが、エンジンなどは近代化しています。
このモーガンが初期に作っていた「スリーホイラー」が2011年に、現代の技術で復活を遂げ、大いに話題となりました。
スリーホイラー最大の特徴は、車体の最前部に空冷V型2気筒エンジンが配置されていることです。排気量2リッターで69馬力と非力ですが、わずか585kgの車重には十分な出力となっています。なお、組み合わされるトランスミッションはマツダ製が使われています。
現在もスリーホイラーは新車で購入できますが、オーダーから納車までは1年前後かかる模様です。ちなみに価格は766万8000円(消費税込)です。
※ ※ ※
日本では淘汰されてしまった3輪自動車ですが、モーガン「スリーホイラー」のように復活したモデルや、バイクのエンジンとドライブトレーンを流用したモデルが何台も発売されるなど、意外と注目されています。
かつての実用的なモデルではなく趣味で乗るものばかりですが、3輪自動車ならではの乗り味や魅力があるのかもしれません。
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