1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ

前輪駆動になった新型BMW「1シリーズ」試乗! FF化で得たものと失ったものとは

くるまのニュース / 2019年12月11日 17時10分

BMWのコンパクトハッチバック「1シリーズ」がフルモデルチェンジを受け、3代目へと進化しました。日本では2019年8月29日に発表、発売が開始されましたが、ようやく11月に納車が開始されています。今回、そんな新型1シリーズの「118i Play」に試乗しました。

■BMW1シリーズのFF化は「世紀の大モデルチェンジ」

 BMWの1シリーズが、3代目になって大きく変わりました。BMWのメインモデルにおける「世紀の大モデルチェンジ」といえるでしょう。

 2004年にデビューした最初の1シリーズ(E87型)、2011年にモデルチェンジをした2代目1シリーズ(F20型)は、BMWらしく、というより当然のようにFRだったのに、2019年に登場した3代目(F40型)はFFになったからです。

新型「118i Play」は全長4335mmx全幅1800mmx全高1465mm。先代のF20型と比べると全長はマイナス5mm、全幅プラス35mm、全高はプラス25mmになっています。ホイールベースはマイナス20mmの2670mmになりました。

 通常、ホイールベースが短くなれば最小回転半径は小さくなるはずですが、FFなので前輪に切れ角の制限があり、先代の5.1mから5.4mに大きくなってしまいました。ただしFFのメリットは軽量化として表れ、ボディが大きくなったのにもかかわらず、先代比マイナス40kgの1390kgになりました。

エンジンは1.5リッター3気筒ターボエンジン(B38A15A)が横置きされ、最高出力140馬力/4600rpm、最大トルク220Nm/1480−4200rpmになりました。先代の118iのエンジン(B38B15A)の136馬力/4400rpm、220Nm/1250-4300rpmに比べると、出力が少しアップしました。

JC08燃費で比較すると、先代の18.1km/Lから16.8km/Lに下がってしまいました。

 新しくチューニングされたエンジンなのに不思議ですが、先代は8速ATだったのに対し7速DCTになったことが大きく響いたのでしょう。また特殊なJC08のモード燃費は無視して、実用上の燃費に近い新しいWLTCモード燃費(13.7km/L)に重点を置いたチューニングになったことも考えられます。

 こうして見ると、FRからFFに大きく変わった意味はどこにあるのかと思ってしまいますが、それはクルマに乗り込んでみるとわかります。室内空間の広さは先代と比べ、ひと回り大きくなった感じです。

 とくに後席レッグスペースは広くなりました。筆者が運転席に座ったシート位置のまま後席に座ると、膝の前にゆとりが生まれています。3リッター6気筒エンジンが搭載できるスペースに、3気筒エンジンを搭載する先代の118iは、グリルとエンジンまで大きな空間がありました。新型1シリーズは、「エンジンを横置きして前方に詰めていけば、キャビンスペースが大きくできる」という普通のFFの考え方になったのです。

ラゲッジスペースは先代型は360リッター(後席を倒すと1200リッター)でしたが、新型では380リッター(1200リッター)と、シートを起こした状態でちょっと増えた程度です。それだけ乗員が乗るスペースを重視したということでしょう。

■BMWの「駆けぬける歓び」は、後輪駆動でないと出せない味?

 それでは走ってみましょう。

試乗時は雨。それでも安定した走りをみせた。試乗時は雨。それでも安定した走りをみせた。

 先代と同じ3気筒エンジンとは思えないまろやかなエンジン音で、アクセルを踏んでいったときにはパンチがあり、高回転までスイスイ回ります。

 さらにアイドリングストップからの再始動のときの振動と音はとても静かになり、アイドリングストップからブレーキペダルの足を放すときに身構えなくても済むようになりました。

ボディ剛性も高く、ガチッと強いボディによりハンドリング性能も乗り心地も高いレベルに仕上がっています。

 後輪はFFにしては豪華なマルチリンクを採用して、タイヤの接地は安定し、高いグリップ力を発揮します。コーナリングでも不安定な姿勢にはなりにくいので、安心感があります。

コーナーの立ち上がりにアクセルペダルを深く踏み込んでいったときにも、FFらしさが出ないように(=BMWのFRっぽさを演出するために)、内側のブレーキを軽くかけるワザも効いてか、アンダーステアを出さずにワインディングロードを駆け巡ることができます。

ボディ剛性が高いことが、乗り心地も良くしています。フワフワしたソフトさはありませんが、サスペンションがしなやかに動くために、205/55R16サイズのランフラットタイヤを履いていてもタイヤからの振動を抑え、ブルブルとした振動を感じにくくなっています。

 BMWの上級車の高級装備も1シリーズに付いています。ボタンひとつの全自動で縦列や車庫入れができるパーキングアシスト、50mの距離なら前進のときと同じ軌跡になるようにハンドル操作をしてくれるリバースアシストは嬉しい装備です。

今回の試乗のメインは118i Playでしたが、M135ixDriveにも短い試乗をしました。こちらは2リッター直列4気筒ターボエンジンで、306馬力/5000−6250rpm、450Nm/1750−4500rpmを4輪で駆動します。

 メインは前輪駆動ですが、前輪が後輪より少しでも速く回ろうとするとすぐに後輪にも力を伝えます。こうしてホイールスピンしないで高出力を使えるようになっています。

ドライブフィールはxDrive(4輪駆動)ということもあり、118iよりさらにしっかりした感じになりました。タイヤも118iより太い225/40R18になっていることもあり、さらにしっかりと踏ん張る感じが出ています。xDriveということもありますが、ここまで仕上がっていると、一般道走行ではFFベースなのかFRベースなのかがわからなくなります。

こうして新しい1シリーズに乗ってみると、FFとしてとても良くできていてハンドリングも乗り心地もエンジンパフォーマンスも装備も優等生だと思いました。

※ ※ ※

しかし、これがBMWの1シリーズだという条件を加えると、ちょっと疑問が残ります。

 BMWの調査では、1シリーズのオーナーの80%は自分のクルマの駆動方式を知らなかったそうです。さらに、1シリーズであるものの、もっと広い室内が欲しいという要望が出ているといいます。

 それを踏まえて今回、FRからFFに大転換をしたのですが、やはりBMWの「駆けぬける歓び」の基本は、FRだからこそ得られるものだと筆者(こもだきよし)は思います。

首都高速のカーブを気持ちよく曲がる感じ、クルマ自ら曲がろうとするかのようなコーナリングは、前後50対50の重量配分だからこそ実現できるものです。

 スタッドレスタイヤを履いて雪道のワインディングロードを走るとき、コーナーでアクセルを踏みながら出口に向かうとき、後輪の駆動力とコーナリングフォースのバランスを取りながらアンダーステアを感じさせないコーナーからの脱出も、やはりFRならではのフィーリングです。

昔トヨタがFRのAE86カローラレビン/スプリンタートレノをやめてAE92型からFFにしましたが、現代になって再びFRのスポーツカー「86」を出した意味はどういうことなのか。

 BMWというブランドは、ユーザーの声を聞き、台数を追うことを目標にしたらいけない企業だと思うのは、筆者だけなのでしょうか。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください