高性能でも生き残れなかった理由とは!? 短命だったエンジン5選
くるまのニュース / 2020年1月24日 6時10分
クルマの開発費のなかで、とくに高額なのがエンジンの開発です。通常、ひとつのエンジンはさまざまな車種に搭載され、10年、20年と長期間に渡って生産されるのですが、わずか数年で姿を消したエンジンもあります。そこで、短命だったエンジンを5つピックアップして紹介します。
■なぜ短期間しか生産されなかったのか? 短命だったエンジンたち
新たにクルマのエンジンを開発するには、技術力とともに莫大な費用がかかるというのが一般的です。
とくに従来まで生産していたエンジンと大きく異なるレイアウトを採用した場合は、鋳造の金型や生産設備を一新する必要があるため、慎重に生産計画を立てる必要があります。
メーカーとしては、なるべく長い期間にわたり、同一種のエンジンを生産することを目指さなければ、利益には繋がりません。
しかし、さまざまな事情で、ほんの数年で姿を消してしまったエンジンも存在。そこで、生産期間が短かった悲運のエンジンを5つピックアップして紹介します。
●日産「VE30DE型」
日米で高い評価を得たプレミアムセダン「マキシマ」も短命なエンジンを搭載
1980年代後半に、2リッター以上の高級車用エンジンを、直列6気筒からV型6気筒へ置き換えを進めていた日産は、SOHC V型6気筒の「VG30E型」だけでは商品力が弱かったため、DOHC化した「VG30DE型」エンジンを開発します。
「フェアレディZ」や「シーマ」などに搭載された3リッターV型6気筒DOHCの「VG30DE型」エンジンは、縦置きにしか適さないFR専用エンジンだったため、横置きのFFに対応するために「VE30DE型」は新たに開発されました。
VE30DE型エンジンが搭載されたクルマは、1991年のマイナーチェンジで登場した3代目「マキシマ 3000SV」で、最高出力195馬力を発揮し、マキシマの商品力を向上させました。
VG30E型をベースに設計されたので、レイアウト自体は大きく変更されていませんが、マキシマのエンジンルームの関係で、シリンダーヘッドとバルブ駆動系(タイミングチェーンまわり)は新規で設計されています。
1992年からは北米仕様のマキシマにもVE30DE型エンジンが搭載されましたが、パワーの割にエンジン重量増という欠点もあり、1994年のモデルチェンジ時にFF/FR共用として新しく開発されたV型6気筒「VQ30DE型」エンジンにスイッチされました。
そのため、VE30DE型はマキシマ以外には使われず、わずか3年間で生産を終了してしまいます。
●マツダ「K8-ZE型」
バブルが生んだ世界最小のV6エンジンを搭載した「プレッソ」
日本がバブル経済の絶頂期だった1991年、マツダはFF車にも搭載できるマルチシリンダーエンジン、1.8リッターV型6気筒DOHCの「K8-ZE型」エンジンを開発しました。
発売時は世界最小のV型6気筒エンジンであり、最高出力140馬力を発揮。このエンジンが搭載されたのは、3ドアハッチバッククーペのユーノス「プレッソ」、4ドアセダンのマツダ「クロノス」、5ドアハッチバックセダンのアンフィニ「MS-6」で、1992年にはミドルクラスセダンのユーノス「500」、1993年にはプレッソの兄弟車オートザム「AZ-3」にも搭載されました。
しかし、高級感を演出するために搭載されたV型6気筒エンジンは、フロントヘビーな重量バランスとなったことや燃費の悪さなどから、小排気量のV6エンジンであること以外、評価は高くありませんでした。
製造コストも高かったことから、1998年に「ファミリア」のモデルチェンジがおこなわれた際に、生産を終了。排気量を拡大した仕様もありましたが、現在はすべて生産を終えています。
●三菱「3G81型」
短命となる運命でも最高のエンジンを搭載した「ミニカ ダンガンZZ」
1989年に発売された6代目三菱「ミニカ」は、パワー競争が勃発していた550cc軽自動車界の切り札として、「ミニカ ダンガンZZ」をラインナップします。
搭載されたエンジンは550cc直列3気筒SOHCの「3G81型」をベースに、1気筒あたり吸気3本、排気2本のバルブを持つ、世界初のDOHC5バルブ仕様と、DOHC5バルブターボ仕様で、大いに話題となりました。
ターボ仕様の最高出力は、ライバルのスズキ「アルトワークス」に並ぶ64馬力を発揮し、最高回転数は9000rpmを達成。
軽自動車規格の改訂により、1990年には660cc直列3気筒の「3G83型」5バルブ仕様に換装されたので、3G81型5バルブ仕様は、わずか1年ほどの生産で終了したことになります。
1993年にミニカが7代目へとモデルチェンジした際、新開発の660cc直列4気筒DOHC5バルブの「4A30型」エンジンが投入されたことで、3G83型DOHC5バルブエンジンの製造は終了となりました。
■スバル初の大排気量エンジンとは!?
●スバル「ER27型」
美しいフォルムのボディにフラット6を搭載した「アルシオーネ2.7VX」
1985年にスバルのフラッグシップとして登場した2ドアクーペ「アルシオーネ」は、「クサビ型」という形容がぴったりな外観の未来的フォルムで、当時のスバル車のなかでも異質なイメージでした。
スバル初で唯一のリトラクタブルヘッドライトを採用したモデルでもあり、空気抵抗を推し量るCD値(空気抵抗係数)は0.29と、国産車で初めて0.3を下回る値を実現。
搭載されたエンジンは最高出力120馬力を発揮する1.8リッター水平対向4気筒ターボ「EA82型」でしたが、アルシオーネはグローバルモデルで、海外では1.8リッター4気筒のみでは魅力が薄いことから、EA82型エンジンをベースに2.7リッター水平対向6気筒エンジン「ER27型」を新たに開発。
自然吸気で最高出力150馬力を発揮し、1987年に発売された「アルシオーネ2.7VX」に搭載されました。
スムースな回転フィールが特徴の水平対向6気筒エンジンでしたが、1991年に、3.3リッター水平対向6気筒「EG33型」エンジンを搭載する「アルシオーネSVX」が登場したことにより、ER27型エンジンは短い期間で役目を終えることになりました。
●ホンダ「EA型」
高性能なエンジンを搭載しながら短命に終わった「ライフ」シリーズ
ホンダは軽自動車「N III」の後継車として、1971年に「ライフ」を発売。N IIIと同様に、360cc直列2気筒エンジンを横置きに搭載したFF車ですが、空冷エンジンだったN IIIに対して水冷化された「EA型」エンジンを搭載していました。
水冷化によって高速走行時の安定した燃焼や、静粛性の向上とヒーターの効きも大きく改善され、ファミリーカーとしての快適性が格段にアップされます。
EA型は日本車ではじめてタイミングベルトを採用したエンジンで、振動を軽減するバランスシャフトを搭載。最高出力31馬力を発揮し、ライフシリーズだけでなく、「ライフステップバン」や「ライフピックアップ」、スポーティモデルの「Z」にも搭載されました。
そして、1972年には、他社の2サイクルエンジンの高出力化に対抗するため、ツインキャブレターを装着することで最高出力36馬力に高められたEA型エンジンを、ライフとZに搭載します。
そうしたなか、1972年に発売された初代「シビック」の世界的なヒットを受け、ホンダはシビックの生産に注力するために、1974年に軽乗用車市場から撤退。同時にEA型エンジンの生産も終了となりました。
※ ※ ※
長く生産されたエンジンは、基本性能の高さを証明する優れたエンジンです。また、ユーザーにとっても長寿エンジンは、部品供給が長く続くというメリットがあります。
現在、クルマの電動化が進んでいますが、ハイブリッドが生産される限り内燃機関はまだまだ活躍する場が残されています。
クルマのモデルチェンジサイクルも長くなっているので、優れたエンジンを開発することは、メーカーにとっていままで以上に重要な課題となるでしょう。
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