実燃費リッター2km/Lも!?「バブルが生んだ光と影」平成の記憶に残る車5選
くるまのニュース / 2020年1月31日 14時10分
2020年に創立100周年を迎えたマツダから、平成時代に数多くのモデルが誕生しました。そこで、平成の30年間に発売されたマツダ車のなかから、記憶に残るモデルを5車種ピックアップして紹介します。
■記憶に深く残る平成のマツダ車
2020年1月30日に創立100周年を迎えたマツダは、1960年代に世界初となるロータリーエンジンの量産化に成功するなど、高い技術力を誇るメーカーです。
平成になると好景気の後押しもあり、次々に優れたモデルを発売しました。また、販売チャネルを5つまで増やし、車種を拡大していきます。
しかし、バブルが弾けると経営状態は悪化し、1996年には経営再建のため正式にフォードの傘下となりました。
その後、2008年のリーマンショックによりフォードが経営不振に陥ったことで傘下から外れ、マツダ独自の「スカイアクティブテクノロジー」を採用した新型車を開発。好調なセールスを記録しながら現在に至っています。
そんな激動の平成の時代に、マツダが送り出した記憶に残る名車を5車種ピックアップして紹介します。
●ユーノスロードスター
世界的なオープン2シーター人気を再燃させた「ロードスター」
1989年2月、マツダはアメリカで開催されたシカゴ・モーターショーに1台のオープンカーを出品しました。
「MX-5 ミアータ」と名付けられたそのクルマは、コンパクトなオープン2シーターで、かつての英国製ライトウェイトスポーツカーを彷彿させるモデルとして世界中で話題となります。
そして、1989年9月に、当時マツダが展開していたブランドのひとつであるユーノスからミアータ改め「ロードスター」が発売されました。
本格的なスポーツカーでありながら、価格が170万円(消費税含まず)からと比較的安価で、日本ではバブル経済の追い風もあり、大ヒットとなります。
開発期間を短縮するために、エンジンは当時の「ファミリア」シリーズから流用した1.6リッター直列4気筒DOHC「B6-ZE型」エンジンを搭載し、最高出力は控えめの120馬力でしたが、940kgの軽量ボディと4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションの採用により、マツダのエンジニアたちが目指した「人馬一体」を具現化。
ダイレクトなハンドリングと、アクセル開度にリニアに回転が上昇していくエンジン特性や、ショートストロークのMTシフトレバーなど、速度に関係なくドライビングの楽しさが味わえました。
また、オープンカー先進国のアメリカでも大ヒットを記録するなど、世界的にロードスターは受け入れられ、その結果、ポルシェやメルセデス・ベンツ、BMWといった欧州メーカーや、国内メーカーもオープン2シーターを続々と発売するという現象を巻き起こしました。
●ユーノスコスモ
世界初が詰め込まれたバブルの申し子「コスモ」
バブル景気が絶頂期を迎えようとしていた1990年、ユーノスブランドのフラッグシップとして「コスモ」を発売。1967年に発売された「コスモスポーツ」から数えて、4代目にあたるモデルです。
ワイドで優雅なデザインの2ドアクーペボディに、世界初の3ローターターボエンジンを搭載するなど、注目を集めました。
トップグレードに搭載された654cc×3ローターの「20B型」ロータリーエンジンは、シーケンシャルツインターボの採用により最高出力280馬力を発揮。
しかし、トランスミッションは4速ATのみで燃費は6.4km/L(10・15モード)。実燃費はさらに悪化していたことから、コスモの極悪燃費はいまも語り草になるほどです。
また、世界初となる先進装備として、GPSナビゲーションシステムを搭載(グレード別で装備)。フラッグシップモデルにふさわしく装備も充実していました。
価格は最上級グレードで530万円(消費税含まず)と高額で、バブル崩壊とマツダの収益悪化という背景もあり、モデルチェンジすることなく、わずか4年で生産を終了。
その後3ローターは二度と作られることはなく、搭載車はコスモだけという希少な存在になってしまいました。
●ユーノス800/ミレーニア
マツダがもつ技術の集大成だった「ユーノス800」
1993年にデビューした「ユーノス800」は、「意のままに操れる人馬一体のドライビングプレジャー」を目指した、ミドルクラスの4ドアセダンです。
デビュー時に注目されたのは4輪操舵やABS、トラクションコントロールなどによる高い走行安定性と、アルミ製ボンネット、ハイレフコート塗装、ソーラー・ベンチレーション・システムなど、豪華装備の採用でした。
ユーノス800の一番のハイライトは2.3リッターV型6気筒エンジンで、当時、量産車では世界初となるミラーサイクルエンジンとなっていました。
ユーノス800のミラーサイクルエンジンは、従来のエンジンと比べて吸気バルブを遅いタイミングで閉じて実質の圧縮比を落とし、リショルムコンプレッサー式スーパーチャージャーで過給することで、3リッターエンジンと同等の出力と2リッターエンジン並みの低燃費を実現。最高出力は220馬力を誇り、燃費は9.5km/L(10・15モード)です。
1997年には国内でユーノス店の展開が終了したことで、北米市場と同じ車名であるマツダ「ミレーニア」に変更されます。
そして、2000年のマイナーチェンジではミラーサイクルエンジンがラインナップから消滅し、2003年にはミレーニアの生産を終了。
しかし、ユーノス800の技術は活かされ、ミラーサイクルエンジンはマツダ以外の各メーカーでも使われるようになり、広く普及しました。
■次の世代を担う先進的なSUVが誕生
●RX-8
新時代のロータリースポーツとしてデビューした「RX-8」
2002年に生産を終了した「RX-7」の後継車として、新世代のスポーツカー「RX-8」を2003年に発売しました。
搭載されたエンジンは「レネシス」と呼ばれる新型のロータリーエンジンで、654cc×2ローター自然吸気の「13B-MSP型」です。
もっともスポーティなグレードの「TYPE-S(6速MT)」では最高出力250馬力を誇り、レブリミットは9000rpmという高回転に設定されていました。
また、RX-8の最大の特徴は、前後ドアが観音開きになる「フリースタイルドア」を採用したことで、本格的なスポーツカーながら4ドア4シーターという斬新なコンセプトとなっています。
理想的な前後50対50の重量配分を実現し、RX-7よりもエンジン搭載位置を下げて低重心化したことで高い旋回性能を誇り、個性的なフォルムと実用性の高さから人気となりました。
しかし、販売台数は年を追うごとに減少し、2013年には生産を終了。ロータリーエンジン車の系譜は途絶えてしまいました。
●CX-5
スカイアクティブテクノロジーと魂動デザインのすべてが取り入れられた「CX-5」
2012年に発売されたクロスオーバーSUVの初代「CX-5」は、現在のマツダを象徴する記念すべきモデルです。
初代CX-5はスカイアクティブテクノロジーを、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、トランスミッション、ボディ、シャシのすべてに採用することで、上質で気持ちのいい走りと、優れた燃費性能を両立。
デザインにおいても、マツダのデザインテーマ「魂動(こどう)」を初めて全面的に採用したモデルです。
パワーユニットは、新世代クリーンディーゼルエンジン「スカイアクティブ-D 2.2」が初めて搭載され、ポスト新長期排出ガス規制に高価なNOx後処理装置なしで適合するなど、国内でのディーゼルエンジンの普及を一気に加速させました。
また、ブレーキの自動制御で衝突被害の軽減を図る「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」を初採用するなど、あらゆる面で現行ラインナップの源流といえるのが初代CX-5です。
現在販売中のCX-5は2017年に発売された2代目で、初代のコンセプトを大きく変えずに開発され、マツダのラインナップでもっとも売れているモデルです。
※ ※ ※
平成時代のマツダは、ほかにもガルウイングドアの軽自動車「AZ-1」や、1.8リッターV型6気筒エンジンを搭載した「プレッソ」、プレステージサルーンの「センティア」など、ユニークなモデルを多数発売しました。
しかし、前述のとおり、多チャネル化による経営状態の悪化に起因してフォード傘下となるなど、マツダにとって平成は激動の時代でした。
いまでは、他に類を見ないクリーンディーゼルエンジンや、量産車世界初のSPCCI(火花点火制御圧縮着火)エンジン、車両運動制御技術の「G-ベクタリングコントロール」を開発するなど、高い技術力を誇示しています。
マツダは次の100年に向けて、着々と歩み続けていくことでしょう。
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