「007」の劇中車にGT-R、グッドウッドで出会ったレアなスーパーカー3選
くるまのニュース / 2020年4月7日 12時10分
世界のラグジュアリーなクルマが集まるイベントに、精力的に出かけて取材をおこなうモータージャーナリスト武田公実氏が、2018年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで目撃したレアなスーパーカー3台を紹介する。
■日産GT-R 50th byイタルデザインの世界初公開
ロンドンからクルマを南に走らせて1時間半ほどの位置にある、ウェストサセックス州チチェスター近郊グッドウッドにて、毎年7月に開催される「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FoS)」は、今や世界最大級の自動車イベントとして世界的に認知されている。
このイベントを初めて訪れた2018年は、ちょうど25周年という特別な年だった。7月12日から15日の4日間に全世界から20万人以上にもおよぶギャラリーが集まるほど大盛況だった。
●日産GT-R 50th byイタルデザイン
2018年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで公開された日産GT-R 50th byイタルデザイン
グッドウッドFoSにて主軸を成す走行イベントは、カントリーハウス周辺の庭園や牧草地を抜ける細い私道を、一台ずつタイムアタックする「ヒルクライム」だろう。
旧くは1900年代初頭に作られた10000cc超のレーシングカーから、第二次大戦前/戦後、2000年代のF1に至るグランプリマシン、そしてル・マン24時間に代表される耐久レースを闘ったレーシングスポーツカーやGTマシンに加え、1950年代から現代のTCRに至るツーリングカーたちだ。また、創成期から現代に至る2輪GPマシンなど、古今東西あらゆるジャンルのレーシングマシンたちが快走する。
この「グッドウッドの華」ともいうべきステージでは、FoSをサポートする各ブランドの最新スーパーカーや、コンセプトカーのためのカテゴリーが設けられるのも特徴だ。2018年は「ポルシェ911スピードスター」や「トヨタA90スープラ(現GRスープラ)」など、当時できたてホヤホヤの新型車がワールドプレミアに供される舞台となった。
なかでも注目を集めたのが「日産GT-R 50th byイタルデザイン」だった。その疾走する雄姿が、公衆の面前で初めて披露されたのである。
今なお注目度の高いこのクルマは「イタルデザイン」社の創業50周年にあたる2018年にプロトタイプが発表され、GT-Rの開祖たる「日産スカイラインGT-R (PGC10型)」の発売50周年にあたる2019年のジュネーヴ・ショーで、世界限定50台のみ生産する市販バージョンが初公開された。
実をいうと、直前に公開されたオフィシャル写真では違和感を禁じ得なかったが、グッドウッドFoSにて初めて実物、しかも走る姿を目の当たりにして印象は激変、素直にカッコ良いと感じられた。
その感想は会場に訪れたギャラリーたちも同じだったようで、「スーパーカーパドック」では常に満場の人だかり。「ヒルクライム」での走行時にも、ひときわ大きな拍手喝采を受けていたのだ。
■注目! ここでしか見られなかった「007」にゆかりのある2台を目撃!
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードの会場はあまりにも広大ゆえに、どこがメイン会場というのは定め難いが、一応はメインステージともいうべき古城(グッドウッドハウス)前の広場に足を運ぶと、まず目に飛び込んでくるのは巨大モニュメントだ。
毎年、メインフューチャーされるブランドをモチーフとしたオブジェが設置されるのが慣習となっているのだが、この2018年は創立70周年を迎えたポルシェが、高さにして52メートルという塔の最上部に、歴代レーシングモデル(おそらくは1/1スケールモデル?)を載せた巨大タワーを建設した。
●アストンマーティン・プロジェクト・ヴァンテージ
アストンマーティン・プロジェクト・ヴァンテージ
その傍ら、イベント出展者である各自動車メーカーやパーツサプライヤー、スペシャルショップにチューナーなどが、自社の歴史と未来を提示するために展開するモーターショー並みの大規模ブースも見逃せない。
そんななか、筆者が最も興味を惹かれたのが、この2018年に25周年を記念して特別開催されたという「フェスティバル・オブ・スピード25周年」を祝うスーパーカー展示だった。
それまでの25年の歴史を記したボードとともに、アイコニックなスーパーカーを発表年別に展示するというものである。
ここでまず紹介したいのは、アストンマーティンが現在の隆盛を取り戻すきっかけとなった歴史的傑作であるとともに、2002年に公開された映画「007ダイ・アナザー・デイ」にもピアーズ・ブロズナンとともに出演した「V12ヴァンキッシュ」のように見える一台だ。
実はこのクルマはヴァンキッシュではない。生産型のそれとは異なるドアミラー形状や、何より解説ボードが示すように、実は1998年に開発・発表されたコンセプトカー「プロジェクト・ヴァンテージ」なのだ。
プロジェクト・ヴァンテージは、のちのヴァンキッシュに近いアルミフレームにカーボン+ハニカム・アルミのボディを組み合わせ、当時アストンの親会社であったフォードの技術開発部門「Advanced Vehicle Technology (AVT)」が開発した、V型12気筒エンジンを搭載し、最高速度200mph(約320km/h)超えの超高性能を標榜して開発された。
2018年のデトロイト・ショーで初公開された直後から、世界中のスーパーカーファンを熱狂させた結果、2001年にV12ヴァンキッシュとして正式リリースされた経緯がある。
●ジャガーC-X75
「007スペクター」にて敵役の劇中車として登場したジャガー「C-X75」
そして、ここで紹介したいもう一台も、007シリーズに深い縁のあるクルマだ。2015年公開の「007スペクター」にて、ダニエル・クレイグの乗るアストンマーティン「DB10」と熾烈なカースタントを展開した敵役「Mr.ヒンクス」の愛車ジャガー「C-X75」プロトタイプである。
2010年に発表された初代は、当初の計画では小型ガスタービンで発電し、4輪に配置されたインホイールモーターを駆動するという、少々荒唐無稽なEVスーパーカーだった。
しかし、のちに生産化を見越した現実的なプラグイン・ハイブリッドへと方針転換。翌2011年には、F1GPの名門コンストラクターとして知られる「ウィリアムズ アドバンスド エンジニアリング」社との共同開発が発表された。
この時に製作・発表された二次試作車は、1.6リッターの直列4気筒エンジンをミッドシップに搭載。小排気量ながら10000rpmという超高回転を可能とするこのエンジンは、さらにターボとスーパーチャージャーを装着することで502psを獲得。そして、一基で390psを発生する電動モーターとの組み合わせによって、PHEVシステムの総出力は850psに到達していた。
この二次試作車は5台がテスト用に製作された。その役割を終えたのち3台はオークションにて販売されている。また、007スペクターの製作側からのオファーにより、ジャガーとウィリアムズは、よりコンベンショナルなシャシーにV8ガソリンエンジンを搭載する、スタント専用車両を新たに製造したとされている。
この年のグッドウッドFoSに現れたジャガーC-X75には、どの車両であるかの表示はなかったものの、「2013」という製作年次からして、007スペクターに製作された3台の実走可能なスタントカーのひとつと思われた。
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