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カウンタックはライバルではなかった!? フェラーリ「512BB」が優秀なロードカーである理由【THE CAR】

くるまのニュース / 2020年4月8日 19時10分

ランボルギーニ「カウンタック」とともにスーパーカーブームを牽引したフェラーリ「BB」は、「365GT4-BB」から「512BB」へと進化。512BBが辿ったカウンタックとは異なる進化とは?

■跳ね馬史に残る特別な20年は「失われた20年」だったのか?

 V12ミドシップ(と言っていいかどうかについては別に議論の余地が大いにあろう)をラインナップの頂点に戴く「365GT4-BB」から「F512M」までの時代は、フェラーリにおける、言わば「失われた20年」だった。

 そもそもフェラーリには、厳密にいって(つまりは、ディノエンブレムやコンペティション転用を除いて)、365BBが登場するまで、ミドシップの純粋なロードカーなど存在しなかったのだ。

 フェラーリのロードカーといえばFRのスポーツカーを指していた。BBの登場が、いかに唐突なものであったか。「デイトナ」以前の25年と「マラネロ」以降の15年を眺めてみれば、一目瞭然だろう。

 一方で、いわゆるエンジンとミッションの二段重ねを、素直にミドシップとは言い切れない場所におくパッケージは、ひょっとすると、「911」のように、「災い転じて福となす」可能性もあった。

 365の後継である「512BB」、「テスタロッサ」、そして「512TR」を乗り比べ、その進化のほどを体験してみれば、苦闘の先にオリジナリティとユニークネスの華咲く未来があったのではないか、と、いちBBファンは夢想したくなるほどだ。スーパーカーオーナーの登竜門的存在であった512TRには、「奇態の環境順応」というべき完成度の高さがあった。

 最新のランボルギーニV12のように180度V型12気筒が独自の進化を遂げ、軽量かつ小型化されつつパフォーマンスを上げて、ポルシェ911がそうであったように365BB由来の奇態パッケージをほぼカンペキにモノにしたパラレルワールド……。

 しかし、現実には、フェラーリは、伝統的なFRグランツーリズモの世界へと、回帰してしまう。

 BBの夢は、終わった。もはや永遠に、跳ね馬史における特別な(それゆえ異例の)20年になってしまった。

 逆に言うとそれだけ、12気筒エンジンの「後置き」パッケージングは、ロードカーの世界において、スペシャルな存在というべきなのである。

「F50」しかり、「エンツォ」しかり。

 改めてそう思い直したとき、始祖である365BBの偉大さを理解することはもちろんのこと、それをより多くの人に歓迎してもらえるよう改良された512BBシリーズには、こめられたフェラーリらしい執念を感じ取ることもできるだろう。

 エキセントリックでスペシャルなBBパッケージを、より安定して速く走らせ、しかも、より扱いやすくさせる工夫。それらの視点は、BB時代の終盤から、フェラーリの全ラインナップにおいて見受けられるようになり、1990年代半ば以降の飛躍的な発展に繋がった。

 呪縛のようなBBパッケージとの苦闘の時間は、跳ね馬ロードカーのその後の進化に、ある一定の役割を果たしたのではなかろうか……。

 365BBから512BBへのステップアップには、同じ時代のランボルギーニほどの派手さは皆無だ。かたや、なりふりかまわずにエアロパーツと極太タイヤで武装し、ただただパフォーマンスの向上だけを目指したクンタッチ。対するBBのそれは、すべてに渡って控えめで、かつ紳士的だった。

■フェラーリらしい執念で、ロードカーとして真っ正直な進化を遂げた「BB」

 512BBはロードカーとして堅実かつ真正直な進化の道を選んでいた。

 今となってみれば、365BBとクンタッチLP400の1970年代後半に現れたそれぞれの後継車、すなわち512BBとLP400Sこそが、その後の両ブランドのイメージを決定づけたモデルであったように思う。

 現代においてランボルギーニといえば、荒々しいファイティングブルが連想される。LP400以前にはなかったイメージだ。かたや、フェラーリといえばエレガントなGT。大転換となったBB時代においてさえ、それは頑に守られていた。

1981年にはウェーバートリプルチョーク4基に代えてボッシュKジェトロニックインジェクションの512BBiが登場。一連のベルリネッタ・ボクサーシリーズは終幕を迎える1981年にはウェーバートリプルチョーク4基に代えてボッシュKジェトロニックインジェクションの512BBiが登場。一連のベルリネッタ・ボクサーシリーズは終幕を迎える

 薄く尖ったノーズへの憧憬は、車両の高性能化とともに必然となったエアロダイナミクスの進化によって打ち消されていく。けれども、フェラーリは、BBの特異なパッケージがもたらすユニークなエレガントさに気づいていたに違いない。

 できるだけこの美しいスタイルを崩さず、よりロードカーとして成熟させたい。その大胆なチャレンジがテスタロッサだったわけだが、その話はまた別の機会に譲ろう。とにかく、人の目を引くエアロデバイスはBBの美しさにとって、敵でしかなかった。

 365BBをある一定以上の速度で走らせてみると、何とも言えず不安になることがある。前輪の感覚がなくなってくるからだ。浮く、という感覚は、それこそテストコースでしか体験できない速度域以上の話だけれども、そこまでいかずとも、ちょっとした高速クルージングで、前の方が心許なくなる。同様に、リアのスタビリティにも物足りなさを覚えはじめる。

 512BBのスタイリングは、365BBによく似て美しい。けれども、その実、大切な進化を遂げていた。

 正直に言おう。

 筆者は根っからの365BB派で、小学生のころからBBに乗るぞと誓っていたオトコだが、実を言うと、小学生時代に描いたBBスケッチのほとんどが、フロントエアダムを付け、リアフェンダーを膨らませた、512スタイルだった。子供なりに365BBの美しさを理解して、「どれが一番か?」口プロレスではいつも365派だったけれども、ノートに描くBBには、「スポイラーが欲しいな」という、言い出せずにいるいじらしい気持ちが現れていた。

 フロントエアダムにせよ、リアフェンダーにせよ、いずれも、控えめだ。けれども、見る角度によっては、365との違いを大いにアピールする。

 365BBなら、真横から前3:横7くらいの角度がベストだろう。尖ったノーズが強調され、スパッと切り落とされたリアとあいまって、一個の弾丸のようにみえてくる。

 512BBの場合は、前5:後5くらいの割合で低い位置から眺めるのがベストだ。エアダムによる顔つきに迫力がでるし、リアフェンダーのフレアも、想像以上に強調される。

 もっとも、その幾分マッチョなイメージを保ったまま、512BBを走らせると、がっかりされるかもしれない。その走りは、365BBよりもずっと洗練されているからだ。低回転域における柔軟性、コーナーでの落ち着き、高速クルージングの安定感、どれをとっても、ロードカーらしい。後のフェラーリすべてに見られる、それは美点だ。

 512BBのコンセプトは、今も尚、跳ね馬ロードカーに息づいている。

* * *

●FERRARI 512BB
フェラーリ512BB
・生産年:1976年~1981年
・全長×全幅×全高:4400×1830×1120mm
・ホイールベース:2500mm
・エンジン:水冷180度V型12気筒DOHC
・総排気量:4972cc
・最高出力:360ps/6800rpm
・最大トルク:46.0kgm/4600rpm
・トランスミッション:5速MT

●取材協力
DREAM AUTO
ドリームオート/インター店
・所在地:栃木県栃木市野中町1135-1
・営業日:年中無休
・営業時間:10:00~18:30
・TEL:0282-24-8620

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