3列SUV市場に変化あり? 王者マツダ「CX-8」が前年比約6割に激減のワケ
くるまのニュース / 2020年4月9日 9時10分
2019年度の販売台数が発表されたなかで、マツダ「CX-8」の販売台数が前年比58%と大きく数を減らしています。国産SUVで唯一の3列シートのみを展開するCX-8に、何があったのでしょうか。
■年比約6割減… CX-8に何があった?
近年の国内市場では、多種多様なSUVが続々と登場。サイズとしては、コンパクト・ミドル・ラージと3つに分けることができ、それぞれにニーズに合わせた個性を持っています。
そのなかで、近年は3列シートを有するSUVが増えており、なかでもマツダ「CX-8」は好調です。しかし、直近の2019年年度(2019年4月から2020年3月)の販売台数が前年比58%と大きく落ち込んでいるのです。なぜ、そこまで減ってしまったのでしょうか。
従来のSUVは、基本的には2列シート車がベースとなり、加えて多人数乗車のニーズに対応するべく、3列シート車もラインナップ。しかし、CX-8は3列シート車のみの設定で、2列シート車が無い国内で唯一のSUVです。
また、マツダは2018年に続き2年連続で国内3列シートSUV市場での販売台数1位を発表しています。
実際に、2018年度(2018年4月から2019年3月)の3列シートを有するSUVでは、日産「エクストレイル(4万6487台)」、CX-8(3万1052台)、トヨタ「ランドクルーザー/プラド(2万9242台)」、ホンダ「CR-V(1万2991台)」、三菱「アウトランダー(8759台)」となります。
この販売台数は、CX-8以外のモデルは2列シート車を含むうえ、ランドクルーザーはプラドを合わせた数字です。3列シート車のみのCX-8は、ラージサイズかつラグジュアリーSUVに属すため、価格帯も300万円台からとなるなど他車とアドバンテージがあるなかで大健闘といえます。
そんなCX-8ですが、冒頭のとおり直近の2019年度販売台数が1万7999台の前年比58%と大きく下げています。同時期の他車では、エクストレイル(2万9325台)の前年比63%、ランドクルーザー/プラド(2万5204台)となり、CR-Vとアウトランダーは公表される50位圏外となりました。
エクストレイルは、同じミドルサイズにトヨタ「RAV4」が登場したことや、新型モデルの噂などが台数減の要因といえます。
しかし、CX-8は直近の2019年10月に改良を施すなど、常に商品力を磨き続けていますが、なぜ販売台数は減っているのでしょうか。業界関係者は次のように説明します。
「第一にSUVのトレンドが、乗用車テイストからRAV4などに見られるようなオフロードテイストを好むように変化していることが挙げられます。
これは、せっかくクルマを買い換えるのであれば、アウトドア感やアクティビティなどへのニーズが高まったことや、これまで所有していたクルマから『変わった感』を求めるユーザーが増加したのが要因です。
次に、CX-8に限っていえば、2018年は新型モデルとして投入後の最初の1年ということもあり、これまで取り込めていなかったユーザーを取り込めていることから大きく販売台数を伸ばしました。
一方で、2019年の販売台数が前年比で下がっているのは、ひとつめの好みの変化によって乗用車テイストのSUVを求めるニーズが減ったことと、CX-8を求めるユーザーにある程度行き渡ったことが考えられます」
※ ※ ※
また、マツダの販売店では別の要因を挙げており、同スタッフは次のように話します。
「CX-8は同クラスの3列SUVや上級な質感を検討した際に、他車(とくに輸入車)と比べると約半分の価格帯で購入できるという大きな強みがありました。
しかし、お客さまにより良い商品を提供するために商品改良を重ねることで、ベースの価格帯が上がっていったこともあり、当初よりは若干ですがその魅力が薄れていることも要因かもしれません。
それでも、CX-8を実際に見られるお客さまからは質感や性能・機能など好評を頂いております」
■なぜCX-8は魅力的なのか…
CX-8は、2017年12月に発売されました。当初は2.2リッターディーゼルエンジンのみを設定していましたが、後に自然吸気とターボの2.5リッターガソリンを追加するなど徐々にラインナップを増やしています。
マツダは、CX-8を新たに投入するに伴い、これまでラインナップしていたミニバンの「プレマシー」や「ビアンテ」の販売を終了しました。
また、当時の代表取締役社長兼CEO・小飼雅道氏は、次のように述べています。
「CX-8は、マツダらしい走りやデザイン・質感を備えながら、3列目まで大人がしっかり座れるパッケージングを実現した新型クロスオーバーSUVであり、多人数乗車とともに上質さをお求めになるお客さまに向けた、マツダの新しい提案です」
このコメントの通り、CX-8は3列目のシートを補助席的なものとせず、6人/7人が余裕を持って乗れるミニバンに代わる居住性を追求したSUVとして登場したのです。
大人も余裕を持って座れるCX-8の3列目シート
世間的に3列シートSUVはどれほど求められているのでしょうか。
ミドルサイズで人気SUVであるエクストレイルでは、ガソリン車で2列シート車/3列シート車を設定。そのうち3列シート車は、わずか8%ほどでした。
同様に、2018年8月に登場したCR-Vもガソリン仕様に2列シート車/3列シート車を設定しています。発売1か月のデーターでは、3列シート車を選んだ購入車は32%となり、多くのユーザーが2列シートを購入しているようです。
また、ランドクルーザーではほとんどが3列シート車を選択しているといい、サイズが大きくなるほどに3列シートの人気が高くなるといえます。
これらの3列目のシートは基本的にエマージェンシー用となりますが、CX-8では「大人がしっかり座れる」というように、2列目と同等の空間を設定しているのです。
また、2種類のガソリン車とディーゼル車というエンジンラインナップなど、「ミニバンは嫌」、「ディーゼルが良い」、「3列目をよく使う」といったニーズを持つユーザーには、CX-8は良い選択肢といえるかもしれません。
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