マツダ新型「ロードスター」のロータリー化ある? 開発者が話す次期型の姿とは
くるまのニュース / 2020年4月13日 7時10分
マツダ「ロードスター」の次期モデルの発売が、2020年代前半に噂されています。環境規制への対応をはじめ、次期ロードスターの開発にあたってはさまざまな諸問題を解決する必要があります。次期ロードスターは、いったいどんなモデルとして登場するのでしょうか。
■2025年頃登場? 次期ロードスターはどんなモデルになるのか
マツダ「ロードスター」の第四世代(以下、ND) が発売されてから2020年で5年が経ちます。ロードスターの歴史を振り返ると、初代(以下、NA)が10年間、第二世代(以下、NB) が7年間、第三世代(以下、NC) が10年間でフルモデルチェンジしています。
そうなると、NDはいま、モデル中間期にあたり、マツダがそろそろ第五世代(以下、NE) の基本計画を考え始めてもおかしくない頃です。NEはどんなクルマに仕上がってくるのでしょうか。
また、巷ではNEのEV化の噂もチラホラと流れていますが、果たして本当なのでしょうか。
筆者(桃田健史)は2019年夏に、NDの開発統括の主査に着任した齋藤茂樹氏にインタビューしています。
その時点では、NEを考えるより先にNDのさらなる改良が大事だとして、マツダの第七世代商品群で実施されている車体設計の考えを改良項目に盛り込みたいとのことでした。
別の視点では、ロードスターの将来についてふたつ、重要なポイントがあるとも指摘しました。
ひとつは、環境対応です。欧州でのCO2規制強化や、アメリカでのカリフォルニア州規制と連邦規制との融合の可能性など、ロードスターを含めた全マツダ車を取り巻く世界各地での環境規制は、時代とともに大きく変化しています。
マツダ広報部によると、ロードスターはNAからNDまでの累積販売台数が約109万台(2018年12月末時点)。このうち、地域別ではアメリカ45%、欧州33%、日本18%と、欧米で約80%を占めます。そのため、ロードスターとして欧米での環境規制を長期的にクリアすることが求められます。
もうひとつの重要ポイントは、衝突安全への対応です。ボディの基本構造だけではなく、次世代の高度運転支援システム(ADAS)に対応するカメラやレーダーなどのセンサーを搭載するため、ボディ全体の大きさや形状について、デザイン面での制約を受ける可能性も出てきます。
齋藤主査に、「NEのEV化の可能性」についても聞きました。
その答えをまとめると、こうなります。
「ロードスターは、NAから一貫して“誰もが幸せになる”愉しい走りを提供することが第一。それを実現させるためには、パワートレインの種類にこだわる必要はない 」
※ ※ ※
ただし、これはEV化を肯定も否定もしているわけではありません。前述のように、環境規制など社会動向を前提としたうえで、愉しい走りができるNEを考えていきたい、という意味だと受け止めました。
その3か月後、筆者は2019年10月に三次自動車試験場(広島県三次市)で開催された、「ロードスター30周年ミーティング」も取材。マツダの役員、歴代ロードスター開発関係者、そして全国各地と海外から詰めかけたロードスターファンとも、話題をEVに限らず、NEの姿について意見交換しました。
■次期ロードスターはロータリー・レンジエクステンダー化?
そのうえで、NEのEV化の可能性について、もう一歩踏み込んで考えてみたいと思います。ここで出てくるのが、ロータリーエンジンを使ったレンジエクステンダーです。
マツダ技術説明会2018で、藤原清志副社長がレンジエクステンダーの詳細について触れています。
マツダ初の量産EV「MX-30」
強調したのは、EVの航続距離に対する課題解決です。エンジンを発電機として使うEVを、レンジエクステンダーと呼びます。BMW「i3」などに採用されているレシプロエンジンのレンジエクステンダーに比べて、ロータリーエンジンは中高周波数音が少なく、低周波音は極めて少ないといった特徴があり、エンジン作動中の車内音を大幅に軽減できます。
試作機も存在します。2013年にマツダR&Dセンター横浜(横浜市神奈川区)で実施した報道陣向け技術説明会。用意された「デミオ」ベースとなる試験車のリアトランクルームの下に、ロータリーエンジン、発電機、ガソリンタンクなどシステム全体がすっぽり収まっていました。エンジンは、シングルローター330ccで、最大出力は22kw/4500rpmでした。
この試作機を見て、世界各国のメーカーから問い合わせがあったようですが、現時点で採用しているメーカーはありません。まずは、マツダ初の量産EV「MX-30」で採用するのが自然な流れだと思います。
では、NEのロータリーエンジン・レンジエクステンダー化は実現可能でしょうか。
たとえば、かなり小型化したレンジエクステンダーユニットをリアミッドシップに搭載。電池パックは一般的なEVのように車体床下に配置。ロードスターらしい愉しい走りが可能となるよう、車両総重量、重量配分、そして航続距離とのバランスを取る、といったレイアウト案が想定できます。
マツダには、ロードスターの基本理念を掲げた、概念としての(いわゆる)「ロードスター憲法」なるものがあります。そこにあるのは、人馬一体、軽量、前後重量バランス50:50など、NA、NB、NC、NDで具現化してきた、マツダが徹底的にこだわったモノづくりに対する考え方や技術です。
果たして、NEはどんなクルマになるのか。広島ではこれから、本格的な議論が始まります。
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