空港を200キロで爆走!? レースも出来る「農道空港」ってなに?
くるまのニュース / 2020年4月10日 10時10分
日本各地には、農道を活用した通称「農道空港」というものが点在します。飛行機の離発着以外にもドラッグレースなどが開催されている農道空港ですが、どのような場所なのでしょうか。
■農道なのに空港? なぞの施設の実態とは?
空港や飛行場というと、成田空港や羽田空港のように「人が移動するため」に使われているイメージがあります。
しかし、地方には通称「農道空港」と呼ばれる、かつて農作物の空輸を目的に建設された空港があり、現在ではエアレースやドラッグレースなども開催されているといいます。農道空港とは、どのような場所なのでしょうか。
農道空港とは通称であり、正式名称は「農道離着陸場」と呼ばれます。1988年よりおこなわれた農林水産省の農道離着陸場整備事業において、農道を広げて農作物を空輸することを目的に、小型機の離着陸場として建設されました。
1991年に岡山県笹岡笠岡市で建設されたのを皮切りに、全国で8か所が建築され、現在でも名前を変えながら残っています。
北海道から順に、北見市の「スカイポート北見」、北海道余市郡の「アップルポート夜市」、北海道美唄市の「スカイポート美唄」、福島県福島市の「ふくしまスカイパーク」、岐阜県高山市の「飛騨エアパーク」、岡山県笹岡笠岡市の「笹岡笠岡ふれあい空港」、大分県豊後大野市の「大分県央飛行場」の8か所です。
農道空港ができた歴史について、ふくしまスカイパークを管理するNPO法人ふくしま飛行協会の担当者は以下のように話します。
「農道空港自体は、そもそもは50年ほど前に農作物を空輸する計画が開始され、そこから30年後、現在からでいうと約20年前に完成しました。
当施設でいえば、『北に行くも南に行くも立地的に条件が整っていたから』という要素があったと聞いています。
しかし、3年から4年ほど使われた後、事業そのものがなくなってしまったそうです。そこから現在に至るまで、農産物を運ぶという目的では使用されていません」
※ ※ ※
農作物の運輸事業が廃止されたのは1997年ですが、その背景には、高速道路の整備で飛行機の優位性を失ったことや、都市部側に発着場を作れないといった社会的・経済的な情勢の変化が大きく影響していたようです。
なお、ふくしまスカイパークの滑走路は全長800m×全幅25mとなっています。
■現在ではどんな用途で存在する?
事業廃止後の数年間は行き場を失ってしまった農道空港ですが、転機が訪れます。
2001年におこなわれた農道空港の規制緩和です。もともと「建設から10年間は農作物の輸送に限る」とされていた空港使用の条件が、1991年から10年が経過したことによって、緩和されたのです。
これによって農作物の移動以外にも、有効活用に向けた取り組みができるようになりました。現在の使われ方について、前述のふくしまスカイパークの担当者は以下のように話します。
「現在の農道空港は、管轄している団体よって使われ方が異なります。ドローンの使用ができるようなポピュラーな場所もあれば、役所が管理していてイベントの開催が難しいところまで、さまざまです。
ふくしまスカイパークでは、あくまで滑走路を持つ『空港』という面を大事にしているため、メインは飛行機やヘリコプターの離着陸で使われています。
個人所有の飛行機や、県警や消防などのヘリコプターの訓練などです。とくに東日本大震災以降は、防災拠点としての一面も強くなっています。
また、滑走路が空いているときには、ドラッグレースといったイベントに貸し出しをしています。空港としての使い方を優先しつつも、さらなる有効的な使い方を常に考えています」
さまざまなイベントが開催される農道空港
ドラッグレースとは、さまざまな種類がある自動車レースのなかでも「直線のスピード」に特化したレースを指します。
元々はアメリカの違法レースが発祥といわれており、スピードに特化してチューニングされたクルマや、レース専用車を使うのが特徴です。
スタートから5秒もかからずに時速500キロに達することもあるといい、海外では人気を博すレースであり、ドラッグレースを題材にした映画も制作されるほどで、。直線で速度を競うレースであることから、「滑走路」という形が好条件となっているようです。
ほかにも、日本で初めて作られた岡山県笹岡笠岡市の笹岡笠岡ふれあい空港は、ラジコンの聖地 とも呼ばれています。
1995年にアジア初のラジコン競技会を開催したところ、20万人を超える動員数を記録したのを皮切りに、口コミで人気が広まったようです。ほかにも、「鳥人間コンテスト」に使われるような人力飛行機の飛行試験場としても使われています。
また、医療・防災現場への貢献度も高く、2001年の規制緩和以降は「ドクターヘリ・防災ヘリの離着陸」や「消防防災航空隊」の基地としても活用されています。
さらに、毎年秋には開催される飛行機やクルマのショーを楽しめるイベント「空と大地のひまわりカーニバル」も開催されています。
現在の農道空港は、滑走路として本来の役目である「発着場所」という立ち位置を大切にしつつも、レースやラジコンイベントなどの開催場所としても注目を集めているようです。
農地のど真ん中という特殊な立地こそ、イベントにおいて不可欠な「非日常」を演出してくれる大きなポイントになっているのかもしれません。
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