落札価格2億6000万円! フェラーリ「エンツォ」はどんなスーパーカーだったのか?
くるまのニュース / 2020年4月14日 11時50分
フェラーリには通常のプロダクションモデルとは別に、スペチアーレモデルがある。その特別なスペチアーレのなかでも、創業者エンツォの名前を冠したモデルが存在する。これほどはないと思えるグッドコンディションの「エンツォ」は、最新のオークションで、どれくらいの落札価格となっているのだろうか。
■純粋な自然吸気V12エンジンを搭載した最後のスペチアーレ「エンツォ」は、今後価格が下る要素がない
2002年6月27日、フェラーリは創業者であるエンツォ・フェラーリの名前を掲げた新型スペチアーレ(スペシャルモデル)の内覧会を、VIPカスタマー向けに開催した。
フェラーリ「エンツォ」は、1984年に発表された「288GTO」、1987年に創立40周年を記念して誕生した「F40」、1995年に創立50周年を祝うために発表された「F50」と同様に、いずれも限定生産を前提として特別なカスタマーのみに販売が許されたモデルだ。
またそのスペチアーレの流れは、エンツォ以降は2013年発表の「ラ フェラーリ」、そして2017年に登場したオープン仕様の「ラ フェラーリ・アペルタ」へと続く。
ちなみにフェラーリ伝統のV型12気筒エンジンをミッドシップするモデルは、現在ではプロダクションモデルのラインナップには存在せず、F50以来のスペチアーレのみが採用するものとなっている。それもまたスペチアーレがフェラーリのなでも特別な、そして容易には手が届かないモデルである理由でもあるのだ。
実際に生産されたスペチアーレは、チャリティ・オークション用などのために後に生産されたものを除けば、諸説あるものの288GTOが272台、F40が1411台、F50が349台、エンツォが399台、ラ フェラーリは499台、ラ フェラーリ・アペルタは209台という数字が一般的に伝えられている。
オークション・マーケットでは、当然これらのスペチアーレは、常にビッダー(入札者)からは高い人気を集めている。先日アメリカのフロリダ州で開催された、RMオークションのアメリア・アイランド・オークションに出品された2003年モデルのエンツォ・フェラーリも同様に注目を集めていた。
今回のオークションに出品されるまでは、15年間にわたって同じオーナーのもと、細心のメンテナンスを受けながら保管され、走行距離はわずかに1700マイル以下(2720km以下)というから、そのコンディションは新車としてデリバリーされた時とほぼ同様と考えても間違いはないだろう。
唯一オリジナルと異なるのは、Tubi製のエグゾーストシステムを装着していることだが、オリジナルはきちんと保管されており、落札者にはそれも同時に引き渡されることになっている。
F1マシンのイメージを落とし込んだ「エンツォ」は、F1コンストラクターであるフェラーリだからこそできるデザインだ
ここでもう一度、エンツォというスペチアーレのディテールを解説しておこう。創業者の名前をそのまま車名にしたことの驚きは、当時は相当に大きなものだったことは記憶に新しい。それ以上にバリューのある名前は、今後はいくらそれを探しても見つかるはずはないからだ。
フェラーリが次に見つけたラ フェラーリは、英語に訳せば「ザ・フェラーリ」の意で、これは頂点にある唯一無二のフェラーリを表している。
399台が生産されたエンツォに搭載されたエンジンは、社内ではティーポ140と呼ばれる6リッターのV型12気筒自然吸気エンジンである。可変吸気コントロール、可変バルブタイミング機構等々のシステムを採用し、最高出力660psを発揮する。
前作のF50が4.7リッターの排気量から、やはり自然吸気で520psを発揮していたことを考えると、フェラーリのパワー志向は相当に強かったことが伺える。
さらにF50では、エンジンそのものをカーボン製のセンターモノコックにリジッドマウンド(剛結)したため、走行中の振動やノイズが大きかった。その反省からか、エンツォではカーボン製の軽量で高剛性なモノコックはそのままに、前後にアルミニウム製のサブフレームを接合。エンジン等のドライブトレインはこのサブフレーム上にマウントするレイアウトが実現したため、エンジン自体の軽量化もさらに積極的に進められることになった。
V12エンジンに組み合わされるトランスミッションは、セミATの6速F1マチック。サスペンションはインボード式のダブルウィッシュボーンで、ブレーキは当時スクーデリア・フェラーリF1チームに最新のシステムを供給していたブレンボ製のCCM(カーボンセラミックディスク)が組み合わされた。タイヤはブリヂストン製のポテンザRE050スクーデリアが唯一の装着ブランドとなる。
F1マシンのイメージを強調してデザインされたボディはピニンファリーナによるもの。とりわけその関係が強く表れているのはノーズセクションの造形だろう。エアロダイナミクスはもちろん前作のF50をはるかに上回るものだが、ボディのアンダーフロアと路面との間で構成されるヴェンチュリートンネルでダウンフォースを得るグランドエフェクトカーの理論を継承しているのは変わらない。
350km/hとされる最高速度は、この優秀なエアロダイナミクスがあればこそ実現されたデータなのだ。インテリアはかなり現代的な雰囲気となり、ステアリングホイール上にスイッチ類が統合され、機能性がさらに高められているのも見逃せないところだ。
注目のアメリア・アイランド・オークションでの、2003年モデルのエンツォの落札価格は、278万2500ドル(約2億6562万7500円)だった。ちなみにフェラーリでそれに続いたのは、1963年式の250GTベルリネッタ・ルッソの160万ドル(約1億7120万円)。フェラーリのスペチアーレには、オークション・マーケットではまだまだ絶大なバリューがあるようだ。
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