なぜ日本でポルシェ人気加速? 10年で販売台数約3倍に 伝統と先進の融合が成功の理由か
くるまのニュース / 2020年4月14日 7時10分
近年、世界中で販売台数が右肩上がりに伸びている高級ブランド「ポルシェ」。とくに、日本では10年間で約3倍の伸び率を記録しています。なぜ、ポルシェの販売台数は年々伸びているのでしょうか。
■なぜ急激にポルシェの販売が伸びたのか
近年、見かける機会の多くなったポルシェ。ドイツ本国のポルシェAGが2020年3月20日に発表した「2019年度決算レポート」によれば、2019年度(2019年4月から2020年3月)のグローバル販売台数は28万台を突破。2010年度のグローバル販売台数約9万6000台から比べると、10年間で2.9倍もの成長を遂げたことになります。
日本国内でも、ポルシェの成長はめざましいものがあります。JAIA(日本自動車輸入組合)の統計データによると、新規登録台数(各年1月から12月)では、2009年(3214台)、2010年(3335台)と、10年前までは年間に3000台強の販売台数でした。
しかし、毎年確実に数字を上乗せして2018年に7000台を突破。2019年は7192台と成長し続けた結果、10年で2倍以上にアップしているのがわかります。では、ポルシェがこれほどの勢いでセールスを伸ばしている理由はどこにあるのでしょうか。
ポルシェ・ジャパンでは販売台数の内訳を公表していませんが、本国のポルシェAGが毎年発表している決算レポートのなかで、日本市場での内訳が記述されています。
1964年に発売されて以来、ポルシェのフラッグシップであり続けているのが「911」シリーズです。2018年11月のLAオートショーで発表された最新の992型で8代目となりますが、重心の低くなる水平対向6気筒をリアに搭載して後輪を駆動する、いわゆるRRレイアウトをずっと採用し続けています。
さらにボディスタイルも、半世紀以上の時を経てもなお、初代からのシルエットをキープしているため、その姿を見れば誰もが「ポルシェ」と分かるデザインです。
日本でも、昔からあこがれの対象だった911シリーズは、2011年度の日本へのデリバリー台数は先々代の997型(2004年登場)のモデル末期ということもあり、516台にすぎませんでした。
続く991型が日本で受注開始となったのが2011年11月で、デリバリーは翌2012年度から。この2012年度では日本へのデリバリーが944台と急増し、2013年度で、1237台、2014年度で1550台を達成しています。そして最新の992型が導入された2019年度では、過去最多の1766台まで伸びました。
ポルシェの販売における911の割合は、グローバルでは2019年度で約12%程度ですが、日本市場では常に全体の約25%を占めているのが特徴的で、日本での911の存在感の大きさを物語っています。
とはいえ、この10年での日本市場でのポルシェの成長という点では、それほど大きな伸び幅ではありません。
ポルシェのスポーツカーといえば、1996年に登場したミッドシップレイアウトのオープン2シーター「ボクスター」とそのクーペ版である「ケイマン」も外せません。水平対向エンジンをより身近に楽しめるモデルとしてすっかり定着しています。
2004年に登場した2代目987型ボクスター/ケイマンの末期にあたる、2011年度は日本でのデリバリー687台、2012年度で674台と低迷していましたが、3代目の981型が2012年6月から日本で発売となり、デリバリーが本格的に開始された2013年度は1440台に倍増。翌2014年度は1619台まで伸びました。
2016年に登場した4代目の982型からは車名を「718ボクスター/718ケイマン」と改めると同時に、エンジンが自然吸気の水平対向6気筒から水平対向4気筒ターボへと変更。
従来のポルシェのイメージから変わったため、2016年度は981型981台と982型552台の計1533台、2017年度は1374台、2018年度1266台、2019年度は997台と、減少し続けてしまっています。
2019年7月に発表された「718スパイダー」と「718ケイマンGT4」では自然吸気の4リッター水平対向6気筒エンジンが復活し、2020年2月には同エンジンを搭載した「718ボクスター/ケイマンGTS 4.0」を発売。フラット6を求めるファンを取り戻そうとしている最中です。
■ポルシェ大躍進はコンパクトSUVのお陰だった?
プレミアムSUVの先駆者といえる「カイエン」は2002年に登場し、21世紀のポルシェ躍進の礎を築き上げました。
日本へのデリバリーは2011年度に1294台、2012年度が1379台。2017年10月にフルモデルチェンジした3代目は2018年7月に日本でも発売され、2018年度1192台、2019年度は1041台と、安定した数字を見せています。
カイエンの成功を受けてポルシェがラグジュアリー・セダンに挑戦した「パナメーラ」は2009年に登場。都心の高級住宅街で見かける印象が強いですが、実は日本へのデリバリー台数を見ると、2011年度は544台だったのが、2018年度で1110台、2019年度1049台と、着実に伸びていて、カイエンと同程度の売り上げを占めるようになっています。
しかし、これらのモデルが着実に数字を積み上げただけでは、ポルシェのこの10年の急成長は語れません。2010年代のポルシェを代表する立役者は、2014年に発売されたコンパクトSUV「マカン」です。
コンパクトSUV「マカン」は2013年11月のLAオートショーと東京モーターショーで同時にワールドプレミアされた
日本では1年後の2014年に発売されましたが、全長4695mm×全幅1925mm×全高1624mm(2019年モデル)という、日本の市街地でも扱いやすいサイズと、導入当時616万円からという、ポルシェ・ブランドとしては破格ともいえるプライスから大人気となりました。
2014年度のポルシェの日本デリバリー総数が5138台でしたが、マカンが導入された2015年度は総数で6527台に大幅アップし、そのうちの2125台をマカンが占めた結果、ほかのモデルが低調だったのを、補って余りある売れ行きだったことが分かります。
マカンは、2016年度は2538台、2017年度2378台、2018年度2047台、2019年度2232台と、日本国内でのポルシェ販売の主軸を担うようになっているのです。
グローバルで見てみても、2019年のポルシェ全体のデリバリー台数28万800台のうち、マカンが9万9944台と、全体の3分の1近くを占めるようになっています。それに9万2055台でカイエンが続くという構造です。
ポルシェ・ジャパンの例を見ても、ポルシェは既存のモデルの売り上げを着実にキープしながら、それらと競合しない新カテゴリのマカンを導入することで、その売り上げを単純に上乗せすることに成功しているというわけです。
そしてポルシェは次の開拓地としてEVスポーツカーを選択し、2019年9月にフルEVスポーツカー「タイカン」を発売。同年11月に日本でも初披露され、予約受注を開始しています。
スポーツカーで築き上げてきたブランドに、プレミアムSUV市場での成功を加えて、今度はEV市場でポルシェがどれほどの成功を得ることになるのか、注目していきたいところです。
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