目の付け所はナイス! だけど消えちゃった車5選
くるまのニュース / 2020年4月18日 6時10分
新型車には何らかの新しいアイデアが盛り込まれるケースが多いのですが、斬新すぎたのか、人々に理解されずに消えてしまったクルマがあります。そんなナイスアイデアなクルマを5車種ピックアップして紹介します。
■ナイスアイデア! だけど長続きしなかった!?
自動車メーカー各社から発売されたクルマのなかには、斬新なアイデアが盛り込まれるケースが数多くあります。
しかし、そのようなアイデアはさまざまな理由で淘汰されることもあり、なかには年月を経て、他社で復活したアイデアも存在。
そこで、目の付け所は良かったものの、長続きしなかったアイデアが盛り込まれたクルマを、5車種ピックアップして紹介します。
●スズキ「アルト スライドスリムドア」
2BOXの軽自動車ながらスライドドアを採用した「アルト スライドスリムドア」
1979年に登場したスズキ初代「アルト」は、47万円という衝撃的な低価格で発売されて大ヒットしました。
そして、1988年に発売された3代目は、3ドアハッチバックで、かつトールワゴンでもない普通の2BOX車ながら、運転席と助手席の両側スライドドアを採用した「アルト スライドスリムドア」をラインナップ。
後にプジョー「1007」が両側、トヨタ「ポルテ」が助手席側スライドドアを採用した、はるか昔のことです。
アルト スライドスリムドアにはスライドドアのほかにも、シートをドア側に回転させて乗り降りをしやすくする「回転ドライバーズシート」も採用されていました。
しかし当時は、狭いところでも乗り降りがしやすく、横に駐車したクルマにドアを当ててしまう心配がないというスライドドアのメリットは理解されず、手動での開閉だったため、女性や年配の人による坂道での開閉が大変という声もあったようです。
そのため、軽自動車の価格が40万円代から設定されていた時代に、標準車から約3万円高いスライドスリムドアが人気となることはありませんでした。
その後、スライドドアは運転席のみとなり、さらに運転席はスライドドアで助手席側は前後とも通常ドアというモデルも登場しましたが、4代目アルトからは採用されていません。
●ホンダ「エディックス」
ミニバンとしては斬新だったものの一代で消滅した「エディックス」
2004年に発売されたホンダ「エディックス」は、6人乗りながら2列シートのミニバンです。7代目「シビック」のシャシをベースに開発され、3席2列の全座席が独立したシートが最大の特徴でした。
前席中央や後席中央シートは大きく前後にスライド可能で、左右の席の人と中央の人の体が干渉するのを防ぎ、前列3人乗車時にも後方視界が確保しやすいように、ルームミラーの位置を運転席側にオフセットしてマウントするなどの工夫が盛り込まれていました。
外観もユニークで、なるべく室内のスペースを稼ぐために左右のパネルがほぼ垂直に立っており、前後方向から見ると真四角で、横から見るとスタイリッシュなトールワゴンというイメージです。
では人気が得られたというと、やはり「ステップワゴン」のような普通のミニバンの使い勝手の良さには敵わず、2009年に一代限りで販売を終了。コンパクトミニバンの「フリード」に統合されました。
●ダイハツ「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」
軽商用車初のハイブリッド車だが値段が高すぎた「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」
ダイハツは軽商用車では初となるハイブリッド車、「ハイゼットカーゴハイブリッド」を2005年に発売しました。
ハイゼットカーゴ ハイブリッドは、軽商用車「ハイゼット カーゴ」をベースに、1モーターを用いたコンパクトなサイズの「ダイハツハイゼット ハイブリッドシステム」を搭載し、高い走行性能と優れた環境性能を両立しています。
モーターの出力は12.8馬力で、発進や加速時にエンジンパワーをアシストするマイルドハイブリッドは、減速時や降坂時のエネルギーをモーターで電力として回収も可能でした。
バッテリーはニッケル水素が採用され、リアシート下に格納することで、荷室容量への影響は最小限に留められています。
価格は215万5500円(消費税5%込)と、ベース車に対して100万円以上高価だったため、顧客は、主に官公庁や地球環境に関心の高い企業がターゲットでした。
そして、肝心の燃費は10・15モードで20.0km/Lと、当時のガソリンモデルが15km/Lほどだったため約3割向上していたことになります。
本来、燃費の良さは歓迎されるはずでしたが、100万円の価格差をガソリン代で相殺するのは、非現実的だったようで、結局、ハイゼットカーゴハイブリッドの販売は低迷し、2010年に生産を終了。その後、軽商用車にハイブリッドモデルは登場していません。
■出るのが早すぎたミニバンとは!?
●トヨタ「セリカ」
当時としてはハイテクを駆使したオーダー方法を実現した初代「セリカ」
1970年、アメリカで需要を拡大していたスペシャリティーカーに着目し、日本版スペシャリティーカーとしてトヨタ初代「セリカ」が発売されました。
斬新な販売方法だったのが、一部グレードを除きエンジンや内装をユーザー自身が自由に組み合わせて、好みのクルマをつくることが可能な「フルチョイスシステム」を採用していたことです。
そのバリエーションはエンジン、外装、内装の組み合わせだけで27通りあり、さらにトランスミッションや塗装、各種オプション部品を組み合わせると、数百万通りにもおよびました。
生産については、全国の販売店からオンラインでその日の受注車両情報を受け取り、オーダーのなかから優先順位や生産の平準化などを考慮して1日分の組立順序計画を作成し、工場に指示を出す「デイリー・オーダー・システム」によって対応。
早ければ8日、平均でも10日から11日で納車が可能だったとされています。
しかし、実際には、値引きや納期の関係でそれほど自由に組み合わせを選ぶことができないという声があったことや、オーダーの内容が偏ってしまったためか、モデルライフの途中でフルチョイスシステムは廃止されました。
その後、同様のセミオーダープランはトヨタ「パブリカ スターレット」の「フリーチョイスシステム」や、日産「セフィーロ」の「セフィーロ・コーディネーション」などが登場しましたが、どちらも短期間で終了しています。
●日産「プレーリー」
企画は良かったもののクルマのクオリティが残念だった「プレーリー」
1982年に日産は画期的なパッケージの5ドアワゴン「プレーリー」を発売しました。
最大の特徴はセンターピラーレス構造の後席両側スライドドアで、左右ともに前後ドアを開くと広大な開口部が出現したことです。
リアサスペンションを工夫することにより超低床レイアウトを実現したことで、回転対座セカンドシートが備わる3列シート8人乗りや、折り畳み式後席の2列シート5人乗り、豪華な固定式後席の採用で快適性を重視した2列シート5人乗りをラインナップ。
さらに、バッグドアがバンパーごと開口することから、荷物の積みおろしがしやすい4ナンバー登録の商用バンも用意されました。
プレーリーは現在のミニバンの元祖といえる存在ですが、最大のセールスポイントのセンターピラーレス構造やバックドアの開口部を下げたことによるボディ剛性の低さが指摘を受けます。
また、最高出力100馬力の1.8リッターと85馬力の1.5リッター直列4気筒SOHCエンジンでは、多人数乗車時の動力性能が低く、販売台数が伸びなかったため、1988年に2代目へとバトンタッチした際に、センターピラーレス構造ではなくなりました。
後にトヨタやダイハツ、ホンダがセンターピラーレス構造のスライドドアを採用しているため、プレーリーは出るのが早すぎたということでしょう。
※ ※ ※
今回、紹介したクルマのように、いち早く採用したのに消えてしまい、後に他メーカーによって復活したという技術やアイデアはほかにもあります。
たとえば、三菱が開発した量産世界初のガソリン直接噴射エンジン「GDI」は1996年に登場しましたが、技術的な問題から三菱のラインナップから一旦廃止されました。
しかし、他社は開発を続けた結果、現在のターボエンジンでは主流となっています。
これは、先駆者が必ずしも成功するわけではないという、技術開発の難しさが垣間見える例です。
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