オークションでは5000万円が上限か!? ランチア「ストラトス」の栄光の歴史とは?
くるまのニュース / 2020年4月19日 19時10分
世界ラリー選手権で強さを誇ったランチア「ストラトス」のストラダーレ(ロードモデル)は、世界中のマニアのコレクション物件だ。世界の富豪のガレージに収まるには、5000万円というハンマープライスは適正なのだろうか。
■ラリーで勝つことを目的につくられたホモロゲーションモデル
ランチア「ストラトス」。イタリア語で「成層圏」を意味する、「ストラトスフェラ」を語源とするこの特徴的なスタイルのクルマは、ランチアがWRC(世界ラリー選手権)の制覇を狙って開発を進めたモデルだった。
ランチアは、それまでフルビアで参戦していたWRCのメインクラスであるグループ4(連続する12ヶ月間に500台以上の生産を必要とする)に、ストラトスで参戦するつもりで開発を進めるが間に合わず、結局、1972年のツールド・コルスで、まずはプロトタイプ・クラスで参加することとなった。
実際にランチアがストラトスのプロダクション・モデルのセールスを開始するのは1974年になってからの話である。
プロダクション・モデルとはいえ、その目的はラリー以外にはなかったので、ベルトーネによってデザイン製作されたボディは個性的というよりも、むしろ特異なシルエットにさえ映る。
3710mmの全長に対して、全幅は1750mm、ホイールベースは2179mmと驚くほどに短く、またトレッドは前後で1433mm、1457mmという数字だ。短く切り詰められたオーバーハングとともに、その姿はまさにコーナリング・マシンそのものともいえる。
ストラトスの基本骨格は、鋼板製のモノコックで、前後のカウリングを開放すればそのデザインの一端を目にすることもできる。
リアミッドに搭載されるエンジンは、「ディーノ246GT/GTS」や、フィアット「ディーノ・クーペ&スパイダー」にも搭載されていた2.4リッターのV型6気筒DOHCだ。
最高出力はディーノには若干劣り、フィアットに対しては若干のアドバンテージがある190ps/7400rpm。組み合わされるミッションは5速MTだが、そのギアレシオは、ラリーユースを考えてクロスレシオ化されている。時代はまだ4WDが全盛を誇る以前であったので、駆動輪はもちろん後輪だ。
ストラトスは1974年10月に正式にグループ4のホモロゲーション(公認)を取得すると、同年にはやばやとメイクスタイトルを獲得し、翌1975年と続く1976年シーズンを連覇し、3年連続でWRCのチャンピオンシップを獲得した。ストラトスによるランチアのラリー活動は1978年まで続いた。
■極めて貴重なロードモデル仕様のランチア・ストラトス
ランチア・ストラトスは、オークション・マーケットでも常に熱い視線を受ける存在だ。その理由は、総生産台数がわずかに492台であること。そして多くの個体がラリー用にコンバートされたことで、オリジナルのストラダーレの数がさらに少なくなっていることなどが挙げられる
前後のカウリングを開放すると、ストラトスの基本骨格が鋼板製のモノコックであることがよく分かる(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
1970年代当時に活躍したワークス・マシンは、オークション・マーケットに姿を表せば大きな話題を呼ぶはずだが、美しく当時の仕様で製作されたコンバート・モデルの人気も高い。
2020年1月に日本で開催されたBHオークションでは、グループ4のコンペティツィオーネ仕様にコンバートされたモデルが、7100万円で落札されている。ストラトス人気、いやその源流たる「サーキットの狼」人気は、いまだ健在なのだ。
その一方で、先日アメリカのフロリダ州アメリア・アイランドで開催されたRMサザビーズのオークションに出品された、1975年モデルのストラトスHFストラダーレ(ロードモデル)は、50万から60万ドル(約5350万円から6420万円)のエスティメート(予想落札価格)が提示されていたが、売買は成立しなかった。
もちろんRMサザビーズの目は確かで、出品車は492台のストラトスの中で最後期に生産されたもの(S/N:01976)。ランチアやオートクラブ・イタリアの資料でもオーナーシップはきちんと証明されており、シャシ、エンジン、ボディのナンバリングはもちろん正確にマッチしている。
長くイタリアにあった後、2015年にカナダへと渡り、ここでオーナーが6万ドル(約642万円)をかけてレストア。さらに2017年にはアメリカのフロリダ州にあるスペシャリスト、カルブ・スポーツ・レーシングが、再度メカニカルなパートを中心にメンテナンスをおこない、新車のコンディションを取り戻しているため、状態はベストに近いはずの車両だ。
やはり1970年代のスーパースポーツのプライスは、一時と比較して、やや落ち着きを見せてきたということなのだろう。
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