なぜ後方見づらい? デザイン優先がトレンドに クーペSUVが増えたワケ
くるまのニュース / 2020年4月27日 7時10分
近年、高いデザイン性を備えたスタイリッシュな「クーペSUV」が増えています。しかし、これらのモデルは、クーペらしさを演出するために、後方視界が著しく悪い傾向にあるのです。なぜ、視認性を犠牲にしてまで、デザインを優先するクーペSUVが増えているのでしょうか。
■後方視界が悪くても関係なし? 世界的人気なクーペSUV
クーペスタイルのクロスオーバーSUVなど、近年は高いデザイン性を備えたスタイリッシュなクルマが人気を集めています。しかし、こうした車種のなかには後方が見づらいクルマも少なくありません。なぜ、使い勝手よりスタイルを重視するクルマが増えているのでしょうか。
最近のクルマには、4ドアやSUVでもクーペのように滑らかな曲線を持つ車種が増えています。しかし、これらには、後席のドアやリアゲートの窓部分が極端に小さいものも少なくありません。例えば、トヨタ「C-HR」や、ホンダ「ヴェゼル」などのコンパクトSUVにおいても、その傾向が見られます。
両車は、ボディ後方に向かって絞られていくデザインになっているうえ、後席ドアの窓部分もそれに合わせて後端がせり上がる形状です。
そのため、運転席から斜め左側の後ろの視認性はよくありません。また、テールゲートの窓も寝かせられた形となるため、ルームミラー越しに見える範囲も狭まっています。
後方視界が悪くなっている理由としては、世界的なデザインのトレンドが影響しているといえるのです。
このボディ後方が絞られたクーペスタイルのSUVというトレンドは、2008年に発売されたBMW「X6」や2011年に発売されたランドローバー「レンジローバー・イヴォーク」といった輸入SUVが先駆け的存在といわれています。
BMWのSUVラインナップには「X3」や「X5」といった従来のSUVに用いられるような直角的なせり立っているテールゲートになっています。しかし、X6ではセダンやクーペのようなスタイルを採用し、BMWではX6を「スポーツアクティビティクーペ」と呼び、独自のカテゴリーと定義しています。
イヴォークもクーペのような滑らかなスタイルを持っており、2012年には、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー・デザイン賞を受賞しているうえ、発売からわずか4年で50万台もの世界販売達成するなど高い人気を得ているのです。
このような、従来のSUVとは一線を画する高いデザイン性を備えたクルマは、世界の自動車メーカーのトレンドとなり、現在多くの車種が発売されています。ほかにも、メルセデス・ベンツ「GLCクーペ」、ランボルギーニ「ウルス」などがクーペSUVとして人気を博しています。
では、C-HRの場合はどのような流れで誕生したのでしょうか。2016年の発表時にトヨタは、次のように説明をしていました。
「C-HRが属するコンパクトSUV市場は、他市場に比べ内外装デザインを重視するお客さまが多いため、デザインにも徹底的にこだわっています。とくに、外形デザインは、デザイナーの想いをそのままの形で実現することを目指して開発しました」
また、C-HRのデザインについて、トヨタ販売店のスタッフは以下のように話します。
「C-HRを選ばれるお客さまからは、『デザインを重視した』『ほかのクルマと違うものがよかった』という声が多いです。
なかでも個性的な外観と、MT仕様やターボモデル、ハイブリッドモデルなど、幅広い選択肢があることも、C-HRをお選びいただく理由となっています。
後方の視界についてはバックカメラがあるため、走行中はバックミラー、バックの際には広範囲を確認できるカメラをお使いいただくことで、問題なくお乗りいただけると思います」
※ ※ ※
クーペSUVが流行する背景には、2000年代頃まで過熱した「スペック志向」から、「デザイン志向」へのシフトもあるといわれています。
それまでは、より速く走れるクルマやより壊れにくいクルマが求められる傾向がありましたが、技術革新が進んだ結果、スペック面での差が出にくくなっています。
一方で、従来のSUVが持つ高い走破性や、広い居住空間は、日常的にクルマを使ううえでも魅力的です。それらのニーズをすべて兼ね備えたのが、近年ブームのクーペSUVといえます。
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