高級ミニバンはアルファードに統合? リストラ対象の車種はどれ? トヨタ全店全車の変革とは
くるまのニュース / 2020年5月1日 7時10分
2020年5月1日より、トヨタの全車種が全店舗で購入できるようになります。これにともない、車種の統合などがおこなわれ、最終的にトヨタ車は25車種程度に減少する可能性があります。また、販売店への影響も大きいというのですが、トヨタを取り巻く環境は5月1日以降にどのように変化するのでしょうか。
■最終的には25車種程度に!? トヨタ車のリストラが進む
国内のトヨタの販売店には、トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店という4系列があります。これに高級車ブランドのレクサスも加わります。
「プリウス」や「アクア」などは、レクサスを除いたトヨタブランドの全店が販売していますが、そうでない車種も多いです。
例えばトヨタ店の「クラウン」、トヨペット店の「ハリアー」、カローラ店の「カローラ」、ネッツ店の「ヤリス」などは、各系列の専売車種で、ほかの販売系列では扱っていません(東京地区を除く)。
また4つの系列があるため、実質的に同じクルマでありながら、外観と車名が異なる姉妹車も用意されています。
例えばカローラ店の「ノア」、ネッツ店が販売する「ヴォクシー」、トヨタ店とトヨペット店の「エスクァイア」は基本的には同じクルマですが、4つの系列で売り分けるために異なる車種としています。
トヨペット店の「アルファード」とネッツ店の「ヴェルファイア」、トヨペット店の「プレミオ」とトヨタ店の「アリオン」なども、ふたつの販売系列が扱うために姉妹車を構成しています。
こういった各販売系列の取り扱い車種が、今後は大きく変わります。2020年5月1日から、トヨタの全店で全車種を買えるようになるからです。
全店で全車を売る目的は、さまざまな分野における合理化です。いままでは系列があったために、姉妹車を用意してきましたが、全店が全車を扱えばその必要はありません。
ヴォクシー/ノア/エスクァイア、アルファード/ヴェルファイア、「ルーミー/タンク」などは、どれか1車種に統合できます。
それはすでに開始され、先ごろマイナーチェンジを受けた商用車の「ハイエース」では(納車を伴う発売は5月1日)、姉妹車の「レジアスエース」が廃止されました。
従来はトヨペット店がハイエース、ネッツ店は姉妹車のレジアスエースを扱っていましたが、マイナーチェンジ後はトヨタの全店がハイエースを販売します。
アルファードとヴェルファイアについては、どちらも5月1日より全店舗で取り扱われることになりますが、今後どうなるかは未定です。
過去を振り返ると、最初はアルファードのみでしたが、2代目にフルモデルチェンジしたとき、ネッツ店の販売車種をヴェルファイアに変更しました。フロントマスクなどのデザインも、アルファードとヴェルファイアは異なります。
もし1車種に統合するなら、最初から設定されていたアルファードだと思われますが、ヴェルファイアのファンも多いです。統合には賛否両論が生じそうです。
ヴォクシー/ノア/エスクァイアも同様です。登録台数が多いのはヴォクシーですが、最初に設定されたのはノア(ライトエースノアとタウンエースノア)でした。
エスクァイアは、トヨタ店とトヨペット店の雰囲気に合わせて内外装を上質に造り、装備も若干充実させて価格は高めです。将来的には本流のノアに統合されてヴォクシーとエスクァイアは廃止すると思われますが、いろいろな意見があるでしょう。
ルーミー/タンクでは、ルーミーを残してタンクは廃止されるかもしれません。ルーミーのフロントマスクはタンクよりも存在感が強く、2019年の登録台数もルーミーが約20%多いからです。
「ポルテ/スペイド」は背の高いコンパクトカーですが、最近は売れ行きが下がりっています。2019年の登録台数は両姉妹車を合計して8000台少々で、1か月平均では700台以下です。
いまでは背の高いコンパクトカーのルーミー/タンクが好調に売れて、2019年には両車を合わせると16万6000台が登録されました。ポルテ/スペイドの売れ行きは、ルーミー/タンクの約5%なので、将来的にはルーミーに統合される可能性が高いです。
背の高いコンパクトカーは国内向けの商品ですから、海外でも販売されるヤリスなどと違って売れ行きを伸ばしにくく、リストラの対象にされやすいです。
プレミオ/アリオンも廃止の可能性があります。車内の広い5ナンバーセダンという特徴がありますが、現行型を2007年に発売して以来、フルモデルチェンジを受けていません。
一般的に発売から10年以上を経過するとユーザー離れが本格化するので、車種を存続させる意思があれば、遅くとも2018年にはフルモデルチェンジをおこなっていたでしょう。
アクアも新型ヤリスハイブリッドがあれば不要に思えますが、これはヤリスとは性格の異なるスペシャルティ指向のハイブリッド専用車として残す見方もあります。
※ ※ ※
このように見てくると、姉妹車の統合や設計の古くなった車種の廃止などにより、トヨタの乗用車ラインナップは25車種程度に絞られそうです。
■販売店は弱肉強食!? 統合後のトヨタディーラーはどうなる?
全店が全車を販売する体制に移行した結果、ユーザーに対するサービスがどのように変わるかでしょう。販売店に尋ねると「車種の数や店舗数が減るのは避けられない」といいます。
車種の数については、前述のとおり、アルファードとヴェルファイアのどちらか一方が廃止されたりします。機能は基本的に同じでも、デザインを選べる楽しさは薄れます。
東京だけでなく、全国的にトヨタディーラーが統合
店舗数の削減も考えられます。販売系列によって扱う車種が異なると、例えばクラウンが欲しいユーザーは、店舗が少し遠くてもトヨタ店まで買いに出かけます。しかし2020年5月以降は、近所のネッツ店やカローラ店でも購入できるようになります。
同様にトヨタ店でカローラを買うことも可能です。そうなると遠方の販売店まで出かける必要はありません。
トヨタの販売店では「いま今まで付き合いのあるお客さまが、ほかのトヨタディーラーに移ることはないと思いますが、新規のお客さまは違います。系列に関係なく、最寄りの店舗で購入するでしょう」といいます。
どこの店舗でも買えるのは、ユーザーにとって便利ですが、この状態が続くとトヨタ系販売会社同士の競争が激しくなります。販売店からは「力の強い会社が弱い方を吸収することも考えられます」という話も聞かれます。
また東京地区の販売会社は、もともとトヨタ直営だったので、2019年4月にトヨタモビリティ東京に統合されました。ほかの地域はメーカー資本に頼らない販売会社も多いため、東京のように統合するのは難しいです。
それでも各地域のトヨタ系販売会社がグループ企業を構成していて、グループ内で店舗を統廃合することは考えられます。例えば同じグループ企業に属するトヨタ店とネッツ店が隣接している場合、どちらかを廃止することはあるでしょう。
このようにトヨタの全店/全車扱いがスタートすると、車種の廃止だけでなく、いろいろなサービスの縮小が考えられます。これはユーザーの不便に結び付くかも知れません。
その一方で、従来の新車販売店をカーシェアリングやレンタカーの営業所に変更するなど、販売会社の新しいサービスが始まることも考えられます。
販売力だけでなく、優れた企画力によって地域のユーザーに貢献できる販売会社が生き残るわけです。
今後はメーカーと販売会社にとって、厳しい時代になるかも知れません。その競争はトヨタ同士に留まらず、ほかメーカーも巻き込むことになります。
健全な競争をおこなって、サービスや商品力をさらに高めて欲しいです。
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