なぜシエンタは人気? アルヴェルよりも販売好調 トヨタ最小ミニバンが注目される訳
くるまのニュース / 2020年5月7日 9時10分
2019年でもっとも売れたミニバンがトヨタ「シエンタ」です。しかし、5年前の2014年では、同じトヨタのミニバン「ヴォクシー」や「ノア」の方が人気でした。なぜこの5年でシエンタの人気が逆転したのでしょうか。
■なぜシエンタが売れる?
コンパクトな3列シートミニバンであるトヨタ「シエンタ」の販売が好調です。2019年の販売台数は11万880台で、前年比117.9%と売れ行きが伸びています。
乗用車(軽自動車を除く普通車と小型車)販売におけるランキングでは、なんと「プリウス」や「ノート」に次ぐ3番目のポジション。前年となる2018年の年間販売台数は9万4048台でランキング5位でした。果たして、躍進の理由はどこにあるのでしょうか。
「モデルチェンジ直後は違和感のあったデザインが見慣れてきた」
「2列シートの追加(2018年9月のマイナーチェンジ時に設定)でユーザー層が広がった」
などいくつかの理由が指摘されていますが、最大の理由は「ダウンサイジングの波がミニバンに押し寄せてきた」ということと考えられます。マーケットの変化です。
例えば5年前、2014年の年間販売ランキングを見ると、同じトヨタのミニバンとして「ヴォクシー(10万9174台)」や「ノア(6万9605台)」となり、シエンタ(フルモデルチェンジ前の先代モデル)はランキング圏外という状況でした。
当時のヴォクシーとノアは、フルモデルチェンジ直後という追い風となる事情もありましたが、先代シエンタよりも売れていたという事実は変わりません。
しかし2019年になるとヴォクシーやノアの販売台数はシエンタよりも少なくなりました。「アルファード」や「ヴェルファイア」など“人気車”といわれるさらに大型のミニバンも販売台数は、それぞれ6万8705台/3万6649台とシエンタを超えてはいません。
その理由として推測できるのは、コンパクトカーにシフトしているといわれる乗用車マーケットの変化が、ミニバンの勢力分布にも影響を与えているということ。ミニバンにおいても小さいクルマが選ばれているというわけです。
2000年代はじめのミニバン大流行を経たいま、ミニバンを選ぶユーザーの多くは「すでにミニバンを所有したことがある」もしくは「家族がミニバンを持っていた」という層でしょう。
そんなミニバンユーザーの何割かは自分の経験を通して「3列目があることは便利だけど、日常的に使うわけではないから狭くてもかまわない」と考えているはずです。そういったニーズが、「小さなミニバン」を支えるひとつの大きな層だといえます。
■「ミニバンでも小さなクルマがいい」という人が増えている?
もうひとつの背景は、新たにミニバンを購入するような若い子育て世代のニーズです。かつては最初のミニバンとしてもっと車体サイズが大きな車種を選ぶことが多かったのですが、軽自動車やコンパクトカーの人気を背景に「ミニバンでも小さなクルマがいい」という判断が増えています。
2018年に加わった2列シートでアクティブ&車中泊ユーザーを取り込んだ
子育てファミリーにとってミニバンの便利さの理由として天井の高さや狭い場所でもドアを全開にできるスライドドアなどがあげられますが、それらは車体が大きくなくてもメリットを実感できる部分。だから日常的に大人数を乗せる人以外は、「車体が小さなミニバンでも日常生活に事足りる」と判断するパターンが増えているのです。
シエンタは全長4.2m強とトヨタ最小サイズのミニバンで、パワートレインはガソリンとハイブリッドを用意。ハイブリッド車は燃費がいいだけでなく、力強いモーターのおかげでエンジンの負担が少ないから日常領域での騒音が静か、そして真夏でも電動コンプレッサーのエアコンが強力に効くなどのメリットもあります。
2代目となる現行モデルのフルモデルチェンジは2015年7月で、2018年にはエクステリアをリフレッシュして安全性能や便利装備を向上するマイナーチェンジを実施。
このマイナーチェンジでは、3列シートのみの設定から新たに2列シートの設定を追加。これにより、近年注目されているアウトドアや車中泊のニーズにも対応したことで、さらに販売台数を伸ばしているのです。
そんなシエンタのように、フルモデルチェンジから時間が経過してからも販売台数が伸びるパターンは、新鮮さで売れるのではなく、使う人に寄り添ったクルマの良さがしっかりと認められた結果といえるでしょう。
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