ハンドルの重さはなぜ違う? 軽い&重いの差はどこにあるのか
くるまのニュース / 2020年5月10日 18時10分
クルマのハンドルには、軽いものや重いものがあるといわれます。なぜそういった違いが生まれるのか、それぞれにどういった特徴があるのか、メリットとデメリットを比較します。
■ハンドルにはクルマの性格があらわれる?
クルマの性格を印象づけるものとして、ハンドルから伝わるフィーリングがあります。しかし、国産車のものは軽く、輸入車のものは重たいといわれることもありますが、ハンドルの軽い・重いはどのようにして決まるのでしょうか。
ハンドルの軽さが異なる理由は、クルマが使われるシチュエーションや、走行性能が深くかかわっているようです。
例えば、普段クルマを運転するときには、車庫入れやUターンなどでハンドルを大きく切ることがあります。その際に重たいハンドルを操作していては、運転手に余計な負担がかかってしまい、最悪の場合はハンドル操作ミスによる衝突や、事故などのトラブルにつながりかねません。
また、ハンドルが軽ければ腕力がなくても機敏な操作ができるため、女性やお年寄りにとっては運転のしやすさにつながるといえるでしょう。
実際に、トヨタ販売店のスタッフは、「プリウス」を購入するユーザーには50代以上の人も多く、そうしたユーザーからハンドルが重たいといわれることはほとんど無いとも話しています。
国内では大型スーパーや百貨店の立体駐車場をはじめ、自宅や貸駐車場でも、隣のクルマや壁との距離が近く、最低限の駐車スペースしか無いという場合が少なくありません。そうした場所ではハンドルが軽いことによるメリットは大きく、日本の道路事情に合致しているといえるでしょう。
一方で、国産車にもハンドルが重いクルマがあります。なかでも「WRX STI」などのスポーツカーで知られるスバルのクルマでは、他メーカーと比較してハンドルが重いといわれることがあるようです。その理由について、スバル販売店のスタッフは以下のように話しています。
「かつてはハンドルが重いといわれることもありましたが、近年は他車と比べてもほとんど差は無いのではないでしょうか。
ただ、『WRX STI』のようなスポーツカーになると、高速域での安定性を高めるために、他車種に比べると重たいセッティングになっていると思います。
また、スポーツカーの場合はグリップを高めるために太いタイヤが標準装備されたり、クルマを機敏に動かすために普通のクルマよりも小さいステアリングになっています。そうした複数のチューニングから、ステアリングが重たく感じるのかもしれません」
スポーツカーは普通のクルマよりも高い速度域で走行することを前提に設計されています。ハンドルが小さければ少ない角度でもタイヤを切ることができ、機敏な動きを実現でる一方で、ハンドルが小さく軽ければ少しの操作でも想像以上にタイヤが切れてしまい、スピードの出ている状態ではたいへん危険です。
そのため、スポーツカーではハンドルを小さく、重くする必要があるといえます。
また、スポーツカーのタイヤサイズも乗用車とは大きく異なります。例えばスバルの乗用車「インプレッサ スポーツ」では205/55R16というタイヤサイズですが、「WRX STI」では245/35R19という太いタイヤとなっています。
※ ※ ※
軽いハンドルは、老若男女問わずクルマを運転するために必要不可欠なものです。一方で、スポーツカーのような高い速度域においては、ハンドルの軽さはデメリットとなります。
ハンドルの軽さ・重さには、それぞれ得意とするシチュエーションがあらわれており、クルマの性格をあらわすものといえるでしょう。
■なぜ輸入車はハンドルが重いといわれるのか?
国産車は、一部のスポーツカーを除けばハンドルの軽いクルマが多数を占めています。しかし、輸入車にはハンドルが重いクルマが多いといわれ、ドイツ車ではその傾向が強いとされています。その理由はどこにあるのでしょうか。
先述の通り、重いハンドルはスポーツカーなど速度を出すクルマに適しています。なかでもドイツ車は「アウトバーン」の存在から、高速での安定性を重視し、ハンドルが重くなる設計になるようです。
国産車と比べてハンドルが重いといわれるBMW
BMW販売店のスタッフによれば、BMWのスポーツモデルである「Mシリーズ」や「Mスポーツ」などの一部のグレードにおいては高速性能を重視しているとされ、ひと昔前は極端にハンドルの重たい車種もあったと話しています。
実際に、アウトバーンの速度無制限区域では時速200kmで走行するクルマも珍しくありません。また、アウトバーンは日本の高速道路に比べて車線が広く、継ぎ目がないという特徴もあります。
輸入車のなかでも、とりわけドイツ車でハンドルが重いクルマが多い理由には、こうした速度を出しやすい環境があるといえます。
また、輸入車のなかにはスポーツ性能に特化しすぎてハンドルが重くなったクルマもあります。
例えば、英国の自動車メーカー、ロータス「エリーゼ」の初代モデルには、運転手が軽い力でもハンドルを動かす補助装置である「パワーステアリング」が装着されていません。そのため、クルマが停止している状態では、ハンドルを切ることすらひと苦労です。
※ ※ ※
日本では、都市部をはじめとして、人口が密集した地域では細かなハンドル操作を求められるシーンが少なくありません。一方で、ドイツでは走行速度が比較的高くなるといった事情があります。
車種やメーカーによってハンドルの重さが違うのは、そのクルマがどのような使われ方を想定しているのか、またその国の交通事情など、さまざまな事情が絡み合った結果といえるでしょう。
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