「ローラースケートGT」と呼ばれたスポーツコンパクト ホンダ「バラードスポーツCR-X」を振り返る
くるまのニュース / 2020年5月6日 16時10分
コンパクトなスポーツクーペだったホンダ「バラードスポーツCR-X」は、樹脂ボディパーツをはじめ、「速さ」だけではない数々の特徴がありました。そこで、バラードスポーツCR-Xを振り返ります。
■シビックのコンポーネンツを利用したスポーツクーペとして誕生
1972年に発売され大ヒットした初代「シビック」は、上質さを追求にするためにホイールベースやトレッドを伸ばし、ワンランク上の乗り心地を実現した2代目にモデルチェンジ。
それと同時に、シビックと主なコンポーネントを共有し、さらに高級感を持たせたクルマを「バラード」として1980年に発売しました。
しかしバラードは、2代目シビックを4ドアセダン化しただけと捉えられ、高い評価を受けることはありませんでした。
バラードは1983年のモデルチェンジで3代目シビックとほぼ共通の販売店違いの姉妹車となりますが、そのモデルチェンジの数か月前に発売されたのが、スポーティな3ドアハッチバッククーペである「バラードスポーツCR-X」です。
バラードスポーツCR-Xは低く構えたフロントノーズに備えられたセミ・リトラクタブルヘッドライトと、低ボンネット高、なめらかなフラッシュサーフェスボディが特徴的でした。
ボディサイズは全長3675mm×全幅1625mm×全高1290mmで、徹底した空力フォルムの追求によりCd×A値(空気抗力係数×前面投影面積)0.56と、当時としては驚異的な数値を達成。
そして、1.5リッター車で800kg台と軽量な車体を実現するため、樹脂パーツを多用していました。
前後バンパーには新素材の「H・P・BLEND」を採用。フロントマスクをはじめ、ヘッドライト・フラップ、左右フロントフェンダー、左右ドアロアガーニッシュには「H・P・ALLOY」を採用することで軽量化と耐チッピング性、防錆を実現。
内装では機能的にレイアウトされたインパネを、低い位置にレイアウトすることで広角度の視界を確保。ホールド性にすぐれたバケットシートと小径ハンドルを装備するなど、スポーツ性が高められています。
またオープントップのような解放感が味わえる、世界初となった電動アウタースライドサンルーフ仕様車、天井から外気を取り入れ換気をおこなうことができる量産乗用車世界初のルーフラム圧ベンチレーション仕様車が設定されていました。
■1.6リッターDOHCエンジンを搭載して速さで話題に
バラードスポーツCR-Xに搭載されたエンジンは1.3リッターと1.5リッターで、1気筒あたり吸気バルブ2個、排気バルブ1個をセットした新開発の直列4気筒SOHCです。
軽量なアルミ製シリンダーブロックやクランクシャフト直結トロコイドオイルポンプ、カムダイレクト駆動ディストリビューターなどの新技術で、小型軽量化が図られていました。
「バラードスポーツCR-X」は軽量コンパクトな車体で高い運動性能を発揮
1.5リッターエンジンを搭載する「1.5i」では、PGM-FI(電子制御燃料噴射)と排気脈動を利用した4-2-1-2の集合排気システムを採用し、最高出力110馬力(グロス)を発揮。
1.3リッターエンジンは最高出力80馬力とスペックは控えめながらも、より軽量な車体と相まって20.0km/L(10モード燃費、5速MT車)の低燃費を実現していました。
組み合わされたトランスミッションは5速MTと、1.5iでは高効率トルクコンバーターを採用したロックアップ機構付ホンダマチックの3速ATを設定。
そして、1984年にはF1レースで培かったホンダ独自の技術をもとに開発した、最高出力135馬力の1.6リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載する「バラードスポーツCR-X Si」を追加ラインナップ。
前輪にパワーを均一に伝えることで、発進時やコーナリング時の安定性をさらに高め、スポーティな走りを可能とする新設計の等長ドライブシャフトの採用と、車量860kg(サンルーフ非装着車)の軽量な車体によって、発売されると同時に「1.6リッタークラス最速」と呼ばれたほどです。
また、バラードスポーツCR-Xのサスペンションは、フロントが操縦性と回頭性を両立するトーションバースプリングのストラット式、リアには路面追従性に優れたトレーリングリンクビーム式を採用し、優れたコーナリング性能と共にスペース効率を向上。
リアシートはミニマムでシビックほどの実用性はありませんでしたが、シビックと人気を二分するほどでした。
バラードスポーツCR-Xは、低い重心とコンパクトで軽量なボディを武器に、ワインディングロードでは1クラス上の性能を発揮しましたが、クイックな回頭性をもたらす2200mmのショートホイールベースと、リアの軽さが災いし、時として「じゃじゃ馬」な面もあり、それも含めて魅力的な走りを披露。
なお、アメリカでは「シビック CR-X」の名で販売され、「ローラースケートGT」と呼ばれて人気となりました。
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