最近ヨーロッパ車で多い「48Vマイルドハイブリッド」 プリウスのシステムとはどう違う?
くるまのニュース / 2020年5月2日 19時10分
最近登場するヨーロッパ車によく搭載されているシステムが「48Vマイルドハイブリッド」だ。まだ日本では登場していない、VW新型ゴルフにも48Vマイルドハイブリッドが搭載されるなど、いま注目となっている。このシステムはどんなものなのか。あらためて考えてみた。
■「LV148」という標準規格が存在している
近年、登場する欧州メーカーの新型車に、お約束のように採用されている技術がある。それが48Vマイルドハイブリッド・システムだ。
日本にもマイルドハイブリッドと呼ばれるクルマは存在するが、欧州メーカー製はひと味違う。
まず大きな違いは、48Vマイルドハイブリッドは、どこかのメーカー1社だけの技術ではないということだろう。
日本の場合は、どこの自動車メーカーも自社で開発したハイブリッドを使うのが基本だ。トヨタのハイブリッドシステムである「THS II」がマツダやスバルのクルマに搭載されることはあるけれど、あくまでも「トヨタが提供した」という形だ。
一方で48Vマイルドハイブリッドは、「LV148」という標準規格があり、複数のサプライヤーがシステムを開発・販売している。欧州では、「ハイブリッドの規格があって、それを複数のサプライヤーが生産していて、自動車メーカーは好きなサプライヤーの製品を選べる」のだ。
日本の場合、自動車メーカーと部品を作るサプライヤーは主従関係的な色合いが強く、しかもメーカーごとに「トヨタ系列」「日産系列」などと呼ばれるようなグループ化が過去に形成されてきた。
最近は、脱系列の動きも見えてきたが、まだまだ完全自由化とはいえない。
一方、欧州の事情は大きく異なる。欧州のサプライヤーは、近年、他企業の合併吸収に熱心で、規模や技術範囲が拡大しているため、「メガサプライヤー」と呼ばれることもある。巨大で技術力もあるため、どこかの自動車メーカーにべったりすることはなく、日本よりも強い発言権を持っているのだ。
そうした自動車メーカーとサプライヤーの関係を背景に、48Vマイルドハイブリッドは生まれてきた。
経緯でいえば、最初にアウディ、フォルクスワーゲン、ポルシェ、ダイムラー、BMWの5社が48Vマイルドハイブリッドを共通化することを2011年に合意し、2013年に標準規格「LV148」を策定。それをもってサプライヤーに協力を呼び掛け、2016年から量産車が登場するようになった。
自動車メーカーとしては、独自でハイブリッドを開発する手間がかからないというメリットがあり、サプライヤーも上手に作れば複数の自動車メーカーに販売することができるというわけだ。
技術的な内容は、割合にシンプルである。システムは、エンジン、スターターと発電機を兼ねるスターター・ジェネレーターと、48Vの二次電池(リチウムイオン電池)、そして電圧を変化させるDC/DCコンバーターで構成されている。
スターター・ジェネレーターはエンジンとベルトでつながっており、減速時のエンジンの回転力を利用して発電する。その電流を二次電池に貯める。そのときの電圧が48Vであるため「48Vマイルドハイブリッド」という名称になった。
もちろん、従来からある12Vの車載バッテリーへの充電もおこなうために、DC/DCコンバーターが48Vから12Vへ電圧を変換している。普通のクルマの電力は12Vだが、それよりも高電圧の48Vにすることでパワーアップと効率アップが見込める。
貯めた電力は、エンジンの始動とアシストだけでなく、幅広い用途が用意されている。たとえば、アクティブ・スタビライザーなどを動かす電力に使ったりもするのだ。どのような便利な使い道ができるのかが、サプライヤーの競争領域ともいえるだろう。
■メリットは低コスト。だがデメリットもある
国産メーカーのハイブリッド・システムと欧州メーカー中心の48Vマイルドハイブリッドを比較すると、それぞれにメリットとデメリットがある。
トヨタの「THS II」や日産の「eパワー」、ホンダの「e-HEV」は、どれもストロングハイブリッドと呼ばれるもの。モーターの出力が大きくてEV走行できる領域が広く、しかも燃費性能も優れるのがメリットだ。
日本にはまだ上陸していないVW新型「ゴルフ8」も48Vマイルドハイブリッドモデルを用意する
一方で、高出力モーターや高性能な二次電池が必要なため、コスト的にはどうしても割高になる。また自動車メーカーごとに別々にシステムを開発・採用しているので、量産効果が利きにくいのもデメリットとなる。
48Vマイルドハイブリッドとほぼ同様のシステムを採用するのがスズキだ。「Sエネチャージ」と呼ぶスズキの方式は、運用電圧が12Vなのが特徴。そのためパワーと効率では48Vマイルドハイブリッドにかなわないし、1社だけの技術ということでコスト面でも、それほど有利なわけではない。
一方で、48Vマイルドハイブリッドのメリットはとにかく低コストという点だ。
複数のサプライヤーが製造し、複数の自動車メーカーが採用する。生産数も多く、競争原理も働く。また、減速エネルギー回収とエンジン・アシストという燃費性能だけでなく、シャシ系の制御にも利用できるという応用範囲の広さも魅力となる。
システムが比較的シンプルなので、どんなクルマにも採用しやすいということもあって、これから登場する欧州車は、ほぼ標準仕様のようになるのではないだろうか。
メリットの多い48Vマイルドハイブリッドだが、デメリットがないわけではない。というか、非常に大きな問題を抱えている。
それは燃費向上率が、それほど大きくないことだ。じつはこれが大問題で、日本式のストロングハイブリッドには燃費性能ではかなわない。
また、これから年々厳しくなる燃費規制をクリアするには、48Vマイルドハイブリッドだけではとうてい不可能といえる。
そのためには、新たなストロングハイブリッドやEV化など、さらなる電動化技術を採用するしかない。手軽で便利なシステムだけれども、あくまでも本命が登場するまでのつなぎという役割なのだ。
そういう意味では、すでにストロングハイブリッドが本流となっている日本車の方が電動化に関しては先を行っているといえるのではないだろうか。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
スバル クロストレック(ストロングハイブリッド)の価格は383万3500円〜! 発売日や燃費は?
MōTA / 2024年11月7日 19時0分
-
トヨタ「ルーミー」のライバル! スズキ新型「ハイトワゴン」そろそろ登場!? 高性能エンジン搭載&軽量化実施の可能性に「待ってます」の声! 「次期型ソリオ」に期待集まる
くるまのニュース / 2024年10月31日 13時10分
-
スバル新型「フォレスター」初の本格ハイブリッド搭載に大反響! パワーや燃費の向上に期待! 25年4月以降に発表へ!?
くるまのニュース / 2024年10月29日 18時10分
-
「燃費なんて気にするならスバルに乗るな」が一変? 「新型ハイブリッド」の実力とは やはり他と違う“目の付け所”
乗りものニュース / 2024年10月27日 17時12分
-
スバルの「“新”ハイブリッド」何がスゴイ? 他メーカーがマネしない「“独特”のシステム」とは
くるまのニュース / 2024年10月23日 20時10分
ランキング
-
1とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
-
2「合コンも仕事のつもりだった」20代で“年収1,000万”稼ぐ彼氏の苦しすぎる浮気の言い訳に唖然
日刊SPA! / 2024年11月21日 15時51分
-
3【GU】1290円の「冷たい風も防ぐ手袋」は、自転車に乗っていても手があったか! 水や汚れをはじく&スマホ操作もできる高機能グローブ
Fav-Log by ITmedia / 2024年11月22日 8時35分
-
4ファミマの「発熱・保温インナー」はヒートテックより優秀? コンビニマニアが比較してみた
Fav-Log by ITmedia / 2024年11月21日 19時55分
-
5日本の皇位継承が国連勧告を受けるという恥をかかせた元凶…明治時代「男系男子限定」に誘導した人物の名前
プレジデントオンライン / 2024年11月22日 9時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください