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TRD/NISMO/無限とは違う? 後発「GRブランド」の存在意義とは

くるまのニュース / 2020年5月17日 10時30分

TRD、NISMO、無限、STIなど、名門ワークスチューナーが存在します。現在では、純正チューニング&カスタマイズブランドというイメージが強いですが、メーカーと共にモータースポーツを盛り上げてきた立役者です。そして、後発としてトヨタには「GRブランド」がありますが、名門ワークスチューナーとGRにはどのような違いがあるのでしょうか。

■名門チューナーと新星「GR」の違いとは?

 国産自動車メーカーには、それぞれ純正チューニング&カスタマイズブランド(メーカー直系のワークスチューナー)が存在します。では、それらのワークスチューナーとトヨタが展開するGRにはどのような違いがあるのでしょうか。

 ノーマルモデルは多くのユーザーを対象とする商品の特性上、クルマの性格やセットアップなどは、どちらかというと「万能性」や「汎用性」を重視することが多いです。

 ただ、人の好みは千差万別なうえに、使用用途を限定すれば「ノーマルモデルでは物足りない」という人も出てくると思います。そこで、個々の好みに合わせて最適化することが、クルマにおけるチューニングの基本となります。

 ちなみにチューニングの本来の意味は調整です。ただ、ピアノなどの楽器のチューニングには明確な基準がありますが、クルマのチューニングには明確な基準は存在しません。

 強いていえば、ノーマルモデルに対して「何をしたいのか?」というコンセプトに合わせ、車両全体をバランスよく仕上げられるかどうかがポイントとなります。

 そのため、正しい知識なしに闇雲にチューニングをおこなうと、オーナーの満足度は別としてもクルマとしての完成度はノーマルよりも劣ることもあります。

 そんなチューニングをある意味正しい方向に導く存在が、自動車メーカー直系のワークスチューナーです。

 ワークスチューナーの多くは、元々モータースポーツのために生まれたブランドが多いのが特徴です。現在はトヨタの「TRD」、日産の「NISMO」、スバルの「STI」、ホンダの「無限」がそれに当たります。ただ、無限はホンダの資本は入っておらずビジネスパートナーという立ち位置です。

 かつてはマツダの「マツダスピード」、三菱の「ラリーアート、スズキの「スズキスポーツ」、いすゞの「オリエントスピード」、ダイハツの「DRS」などもありましたが、現在は消滅もしくは名は残るも当時と事業形態を変えているブランドもあります。

 また、純正アクセサリーから発展したホンダの「モデューロ」やメーカー直系ではない独立ブランドながらメーカーお墨付きのパートナーという意味では、トヨタの「TOM’S」、マツダの「オートエグゼ」、ダイハツの「D-SPORT」などもそれに相当。

 これらのブランドの多くは、モータースポーツでの経験やノウハウをストリートモデルにフィードバックさせたチューニングがおこなわれています。

 かつてはスポーツ性能に特化したチューニングが特徴でしたが、最近はノーマルの潜在能力を引き上げるトータルバランス重視のチューニングが主流となっています。それはなぜでしょうか。

 ノーマルモデルの性能は昔と比べると飛躍的に向上していますが、といっても生産性やコスト、さらに自動車メーカーのルール/基準といったさまざまな制約から、やりたくてもできないことがまだまだたくさんあります。

 そこでノーマル(=量産)の枠を超えた領域で手間とコストをかけることで、クルマ好きにとっての「理想のノーマル」を提供したいという考え方があるのでしょう。

 加えて、新車開発と同じ施設、同じテストコース、同じ資格を持つエンジニア/評価者によって鍛えられているうえに、品質や耐久性に関しても非常に厳しい基準が設けられています。

 その証拠にチューニングに対してもっともハードルの高いディーラーでの販売も可能にしています。つまり、「チューニング=マニア向け」ではなく、誰でも楽しめるモデルとして、ワークスチューナーはチューニングの民主化を可能にしているのです。

 このようにチューニングの「楽しさ」、「重要性」を、より多くの人に「気軽」に「安心」して味わってもらい、日本のチューニング文化をより身近にするという意味では、ワークスチューナーの存在が必要不可欠でしょう。

 そんなワークスチューナーが開発したアイテムは主に後付けのアドオンパーツとして販売されていますが、最近ではコンプリートカーとしての販売も熱心です。

 車両全体をトータルコーディネイトすることで、各ブランドが目指す世界観を表現しやすいのはメリットです。最近では日産の「NISMOロードカー」、スバルの「STIスポーツ」、ホンダの「モデューロX」などがそれに当たります。これらのモデルは高い評価を得ており、ノーマルモデルに対する販売比率も高いようです。

■究極のワークスチューナーこそ「GR」の真骨頂?

 数多く存在するワークスチューナーの究極がトヨタの「GR」です。これまでのワークスチューナーと違うのは、その立ち位置で、メーカー直系どころかメーカーそのモノなため、“純”ワークス組織であることでしょう。

 その源流は2007年に当時副社長だった豊田章男氏とマスタードライバーの成瀬弘氏を中心に発足した、“元祖”GAZOO Racingです。当初はトヨタのなかでもアウェイな活動でしたが、人を鍛え、クルマを鍛え、最終的に商品として世の中に出すという構想だったといいます。それは2010年のG’sを経て2017年のGRブランド展開スタート、そして今に繋がっています。

 現在、GRはWRC/WEC/ニュル24時間などのモータースポーツカテゴリーにワークスチームとして参戦していますが、その知見/ノウハウを受け継いで開発されたモデルが数多く用意されています。

GRブランドのモデルとして復活した「GRスープラ」GRブランドのモデルとして復活した「GRスープラ」

 現在、開発中のWECを戦うTS050のロードバージョン「GRスーパースポーツ」を頂点に、GRスープラ/GRヤリスなどの「オリジナルモデル」、そしてノーマルモデルをベースにした「スポーツコンバージョンモデル」と、スポーツモデルのピラミッドが構築されています。

 そんなGRの戦略はさまざまあると思いますが、筆者(山本シンヤ)はもっとも重要なことはモータースポーツ活動とスポーツモデル「継続」のためだと考えています。これまでこのふたつは景気/経済状況に左右されやすい存在でしたが、トヨタはそこにメスを入れたのです。

 つまり、想いやスピリットだけではなく、最終的にトヨタの収益にシッカリと貢献できるシステムにすることです。つまり、GRはモータースポーツ活動をおこなうことでクルマ好きを助成すると共に人とクルマを鍛え、その技術が直接的に投下された商品が生まれ、それをユーザーが購入してくれることで収益が上がり、そのお金がレースに投入されるという壮大なビジネスサイクルを構築したことになります。

 GRカンパニーの友山茂樹プレジデントはGRのモデルに対してこう語っています。

「GRが開発したモデルに乗ってスポーティに感じる人、理想のノーマルと感じる人、安心して走れると感じる人などさまざまだと思いますが、我々は突出とした長所が短所を補って余るような商品であると感じていただけると嬉しいです。

 我々はレーシングカンパニーですので、レースという観点から長所を伸ばしていきます。もちろん、背反的に犠牲になることもありますが、そこを高次元でバランスさせることが、GRの味でありバランスです。トヨタ(=ノーマル)と同じ方向性になってしまったら、GRの存在意義がなくなりますので(笑)」

※ ※ ※

 そういう意味では、GRは 純ワークスであることはもちろん、「大きなトヨタのなかの小さなトヨタ」、「トヨタの枠を外れたトヨタ」じゃないかと筆者は思っています。

 ちなみに最近では「トヨタは嫌いだけど、GRは好き」、「トヨタは嫌いだけど豊田(章男)は好き」という人が確実に増えているそうです。

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