自動ブレーキ装着車はフロントウインドウの撥水コートNG? 飛び石修理が高額化する訳
くるまのニュース / 2020年5月17日 18時10分
先進の安全装備として、自動ブレーキを装着するクルマが増えています。カメラやミリ波レーダーなどによって前方の障害物などを認識しブレーキ操作をアシストしてくれます。しかし、自動ブレーキの性能を発揮させるために、フロントウインドウのコーティングや破損に注意しなければならないようです。それは一体なぜなのでしょうか。
■自動ブレーキ搭載車は撥水コーティングNGの真相は?
近年増加傾向にある高齢ドライバーによる交通事故削減のため、2021年11月以降に発売される国産の新型車から段階的に自動ブレーキの装着が義務付けられました。
自動ブレーキの正式名称は「衝突被害軽減ブレーキ」といい、前方にある障害物などをコンピュータが検知・解析し、衝突する危険を事前に教えてくれたり、いざというときはドライバーのブレーキ操作を補助してくれたりしてくれる先進安全技術です。
自動ブレーキは、フロントグリル内などに設置されたミリ波レーダーを用いた方式やスバルの「アイサイト」などで採用されているカメラ方式、赤外線レーザーを用いたものなどが存在。
現在ではカメラをふたつ搭載したステレオカメラ方式や、カメラとレーダーを組み合わせた方式なども開発され、システムの精度も向上しています。
自動ブレーキのカメラはフロントウインドウと一体化されているものも多く、とくに初期の「アイサイト」では、ウインドウへの撥水コーティング剤の使用をNGとしていました。それは一体なぜなのでしょうか。
千葉県で中古車販売店を経営するN氏には次のようにいいます。
「初期のアイサイトに関しては、フロントウインドウに歪みを発生させる恐れのあるガラスコーティングはNGとのお達しがありました。そのため、わざわざカメラ付近をマスキング処理してから、撥水コーティングを施術していた時代もありました。
しかし撥水コーティングは塗布するタイプだけでなく、ワイパーブレードに撥水機能を持たせたタイプなどもあり、フロントウインドウがまったくコーティングしていない状態を保つほうが逆に難しいともいえます。
現在ではフロントウインドウのコーティングに関しては、以前ほど神経質にならずとも大丈夫です」
カメラ方式の自動ブレーキは映像で解析するためにクリアな視界が必要とされており、大雨や濃霧、雪など悪天候では機能を十分に発揮できないこともあります。
現在では以前ほど神経質ではなくなったとはいえ、コーティングに関しては必要以上の厚塗りは避けたほうがよさそうです。
これはミリ波レーダータイプに関しても同様で、誤動作を起こさせてしまうほどのコーティングはNGですが、洗車ついでのレベルであればコーティングを施しても問題なく作動するようです。
■飛び石でガラス破損 純正パーツ交換とともに特殊な作業が必要?
フロントウインドウのコーティングは、撥水効果だけでなく、前方から飛んでくる小石やゴミなどによってガラス面に傷が付くのを防ぐ効果もあります。
それでも飛び石などで傷が付いてしまった場合、小さなものであれば通常はリペアキットなどで補修することも可能ですが、自動ブレーキ装着車に関しては事情が違うようです。
放射状に傷が入ったフロントウインドウ
自動ブレーキのフロントウインドウはカメラやレーザーなどと一体化しているため、リペアすることで歪みが生じたウインドウを使用できません。ガラスやカメラ単体での交換は難しいため、一体化された純正パーツを取り寄せることになります。
「部品自体の価格は通常のフロントガラスと比較しても大して変わらないのですが、自動ブレーキを正常に作動させるためには『エーミング』と呼ばれる再設定作業(校正作業)が必要です。
エーミング作業にはスキャンツールなど専用機材と作業スペースが必要で、整備工場などでは設備がないため、大半は機材を用意しているディーラーなどで再設定する必要があります」(前出の中古車販売店経営者)
エーミング作業は、コンピュータに正しく対象物の検知・解析させるため、光をシャットアウトした環境で専用機材を用いて再設定します。そのため、1日で修理が完了することは難しく、早くて1泊2日の「お預かり」になるのだそうです。
「メーカーや車種によって違いはあると思いますが、ディーラーでのエーミング作業の工賃は3万円前後のようです。フロントガラス代が15万円から18万円前後ですので、20万円前後の出費になってしまいます。
バンパーなどをぶつけた場合でも、誤発進抑制装置などのセンサーがついている場合はエーミング作業が必要になることもあります」(前出の中古車販売店経営者)
※ ※ ※
自動ブレーキを搭載することによって安全性は高まりましたが、その分、繊細な面もあって社外品を使用するのは難しいようです。
修理代は車両保険などでカバーすることもできますが、エーミング作業が必要になることから作業時間がかかりそうです。
不注意による破損や傷などを起こさないように、前走車との車間距離を十分にとって注意しながら運転したましょう。
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