タクシー業界がヤバい!? コロナ禍で悲鳴続出な業界の変化とは
くるまのニュース / 2020年5月19日 9時10分
全世界がコロナショックの影響を受けるなか、タクシー業界も同様にその餌食となっています。そこで、今回はコロナによる業界の動きや当事者となるタクシー運転手や業界団体関係者に本音に迫ってみました。
■コロナショックでタクシー業界が悲鳴を上げる!?
新型コロナウイルスの影響により、全世界で経済の低迷が巻き起こるなか、日本のタクシー業界も厳しい現状に晒されています。実際のところ、コロナの流行前と比べて業界の動きにはどんな変化が起きているのでしょうか。
さまざまな業界に影響を与えるコロナショックは、公共交通機関として稼働するタクシー業界にも大きな打撃が及んでいます。
実際、都内のタクシー会社のなかには、コロナによる業績悪化により約600人もの従業員を一斉解雇する方針を示し話題となりました。
こうした業績悪化の真相について、都内の個人タクシー運転手は次のように話します。
「緊急事態宣言の発令により、夜出歩く人がほとんど減ってしまったので、収入も9割近く減少しています。以前は、仕事帰りのサラリーマンもよく利用していましたが、リモートワークによって自宅にいる時間が増えたことで、移動手段としてタクシーを利用することがなくなっているようです。
とくに、3月から4月はタクシー業界全体で一番売上が見込める時期だったために、そのダメージも大きいです。例年は、お花見や会社の送別会・歓迎会といった飲み会などイベントが重なるシーズンの売上も見込めましたが、突然のコロナによる影響で業界全体が火の車状態です。
これまでは、15分に1回は人を乗せることができました、しかし、緊急事態宣言後は2時間待ってもお客さまを捕まえられない状態です。
夜の駅前で待機しても、終電が終わる深夜1時を過ぎてしまえば人もいなくなります。そのため、夜に稼働していたドライバーは昼に移行しているようですが、昼間のほうが多少マシになる程度ものの、大きな売上が見込めることはほとんどありません。
また、空港を拠点として働くタクシー運転手は、特にダメージが大きいといいます。自粛によって遠出をするお客さんがめっきり減っているほか、外国人観光客もいないので飛行機を利用する人がいなくなり、売上もほぼ0に近い状態です。
あとは、コロナ後の変化では車内で会話をするお客さまが減ったことです。以前は、目的地に到着するまでずっと喋っている人がいたものの、飛沫感染を気にして一切話をしない人が目立ちます」
※ ※ ※
タクシー業界の業績悪化は、タクシーやバスなどの業界誌と発行されている「東京交通新聞」でも取り上げられています。
そこには、東京都内で稼働するタクシー全体の売上が35%まで落ち込んでいるという報告もありました。
これは、全国のなかでも3番目に悪い結果です。また、全国でもっとも売上が落ち込んでいるのは京都府です。観光客の激減が大きな打撃に繋がったのでしょう。
法人タクシー会社の多くは、稼働率を3分の1に減らしています。稼働数を増やせば、その分ガソリン代などの経費がかかるのでストップしているようです。また、大半の個人タクシー運転手も、稼働率のセーブしている人が多いようです。
では、タクシー業界では売上の落ち込みに対し、どのように対応策をおこなっているのでしょうか。前出の個人タクシー運転手は次のように話します。
「現在は、一時的に個人タクシーの稼働をセーブしています。収入が前年比の半分になれば、個人事業主は国から持続化給付金として100万円を支給してもらえるため、無理に働くことを諦めました。50%以上稼ぐと給付金がもらえないので、一時的にも仕事を休む個人タクシーは多いです。
また、いまの状況下で乗客を捕まえるにも、タクシー乗り場に2時間並んでやっと1人乗せられるレベルです。
利用客の大半は、短距離利用なので大した稼ぎにならず、稼働すること自体のモチベーションも下がっていることも休む理由のひとつです。
もし給付金が支給されなかった場合には、銀行からの融資に頼るしかありません。いまは、どんな人も無利子無担保で借り入れできまので、そこを頼るしか生きていく道はありません。
法人タクシーのなかには、国から認可を受けてデリバリーや買い物代行などのサービスを導入してなんとか稼働している会社もあります。
ただ、個人タクシーはこうしたサービスに手を出す人は少ないでしょう。高級車を使っている人も多いことからプライドもあるため、細々としたことをあまりおこなわない傾向にあります。
また、現時点で認可を受けている人もいません。もし、個人タクシーがデリバリーなどのサービスに踏み切るしかなくなった場合、いっそのこと辞めてしまうと思います」
■コロナ最中の不安は? 今後のタクシー業界はどうなる?
世界中で大流行した新型コロナウイルス。そのなかで、タクシー運転手を続けることにどのような不安があるのでしょうか。
コロナ禍のなかで、個人タクシーを続ける運転手は次のように話します。
「やはり、乗客からの感染リスクが心配です。昼間の利用客が増えたことにより、病院に向かう目的でタクシーを使う人を乗せる頻度が増えています。そうなると、感染する恐れも多いに考えられるので不安です」
東京交通新聞には、全国で稼働するタクシー運転手の感染状況も掲載されています。この情報によると、都内の個人タクシー運転手がコロナ陽性患者を乗せ、感染したケースも発生しているようです。
陽性が判明した場合、本来ならば公共交通機関の利用が禁じられていますが、実際にこうした問題を目にすると日々不安は募ります。
そのため、最近はコロナ対策の一貫として窓を開けた換気を心がけて、後部座席との仕切りに透明のアクリルを使った防犯仕切り板を導入しているといいます。
防犯仕切り板は、法人タクシーでは一般的ですが、個人タクシーで使用するケースは非常に稀だといい、少しでも感染リスクを減らすためには設置せざるを得ないようです。
コロナ前に街中にいたタクシーの様子
2020年5月14日、全国47都道府県のうち39県で緊急事態宣言が解除されました。日本では、徐々にコロナ収束に向けた動きが見られています。
では、タクシー業界は元の状態に戻る見込みはあるのでしょうか。タクシー業界団体の関係者は次のように話します。
「コロナが収束してもすぐに元の売上や稼働率に戻ることは難しいと思います。コロナが収束しても国がいうような『新しい生活様式』といった、これまでとは違うものが出てくる予想しています。
例えば、コロナによって在宅勤務が増えたことにより、これまであった出張や会議のための移動がリモートで済ませられることがわかりました。そうすると、タクシーでの移動が減ることになり、売上や稼働率も落ち込みます。
一方で、デリバリー業界が伸びていることもあり、そのような他業種と協力することで新しいビジネスの可能性が出てきています。
今後は、どうなっていくのかわかりませんが、年末の繁忙期、そして2021年に延期された東京オリンピックなどに期待する気持ちは大きいです」
※ ※ ※
緊急事態宣言後は業界全体を通して売上の落ち込みが目立っています。こうした状況のなかで、タクシー業界のみならず、さまざまな業界で新しい事業の開拓や国の支援によって、なんとか生活を続けていく工夫をおこなっているようです。
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