昔はなぜ新車の価格がバラバラだった? いまでも価格が違う車種が残る理由とは
くるまのニュース / 2020年7月7日 17時10分
昭和の頃、新車価格は全国で統一されていなかったことを覚えている人も多いと思います。CMなどの価格表記には「東京地区」などと注釈があり、場所によって数万円の開きがあることもありました。しかし、現在では、多くの車種で価格は統一され、注釈がない事例も多いです。新車の価格が全国で統一されたのはいつからなのか、自動車メーカーに聞いてみました。
■統一価格の先駆けとなった「アルト47万円」
自動車メーカーのウェブサイトにはクルマの価格が掲載されており、価格は全国どこでも一緒だと思いがちです。しかし、過去には地域によって価格が異なっていた時期がありました。また現在でも、一部車種では価格が異なることもあります。
新車の価格が全国で統一されはじめたのは、果たしていつからなのでしょうか。
自動車メーカーに聞いたところ、まずメーカー希望小売価格は「あくまでも参考価格」ということです。
自動車メーカー各社が製造した完成車を販売会社に卸売りをする商形態をとり、実際に販売されるときの価格(販売会社による値引きを含む)は販売会社が独自に定めているものとなっています。そのうえで、実際には「全国統一新車価格」という言葉は存在しています。
では、販売会社が示す全国統一新車価格というものはどこから始まったのかを探っていくと、初めて採用したのはスズキだといいます。
スズキの広報部に聞くと、「1979年5月発売の初代『アルト』を全国統一新車価格(当時は全国標準現金価格)47万円で発売したのが始まりです。
輸送費を別途上乗せし、地域ごとに異なる車両販売価格が一般的だった当時に、アルトは常識を打ち破る、輸送費を販売価格に含めた『全国統一新車価格』を業界で初めて採用しました。
これにより『アルト47万円』とCMで大々的に謳うことが可能となりました」と話します。
統一された価格を繰り返し訴求したことで、当時のアルトの価格が47万円であることは多くの人が知ることとなり、その結果アルトは大ヒットしました。
また、三菱は「1997年より全国統一としております」と説明しており、かつて統一でなかった頃の状況を、「以前は工場から販売会社までの距離を考慮し、全国を数ブロックに分けて運賃を加味した地区価格を設定していました」といいます。
その後、統一した理由として「販売会社別の価格設定ではないので、工場から個々の販売会社までの実運賃とは異なる場合がありました。そのため、お客様に公平感のある価格表示とするよう、メーカー希望小売価格は全国統一の価格にしました」と説明しています。
日産は全国一律とまではいかないまでも、価格を統一する試みは早く、1982年10月発売の初代「マーチ」から価格表示を「北海道・沖縄を除く」としていたほか、地区別表記は2001年1月発売の4代目「シーマ」を最後におこなっていません。
■全メーカー・全車種が全国統一というわけではない
一方、ダイハツなど、メーカー希望小売価格を全国統一にしていないメーカーも存在します。これは輸送費用ではなく、気候の差による仕様違いが理由です。
新車の価格がいまだに統一されていない場合がある理由とは?
ダイハツは「車種により(メーカー希望小売)価格を全国で統一しているもの(『ムーヴ』など)と、北海道地区メーカー希望小売価格(寒冷地仕様)を別途設定しているもの(『ハイゼット』など)があります」と説明します。
寒冷地仕様は車種によって異なりますが、冷間時のエンジン始動性を向上させるために、標準仕様に比べて容量の大きなバッテリー、セルモーター、オルタネーターを装着したものでした。
以前は広告の価格表記に「寒冷地仕様は●円高」の注釈があったものです。
しかし、現在では多くの車種がそのままでも寒冷地での使用に耐えられるものとなっていることから、寒冷地仕様を分ける必要がなくなりつつあります。
ダイハツは一部車種で分けていますが、スズキは「現在はすべての車種が寒冷地に対応した仕様となっています」として、分けていないメーカーもあるほか、価格は統一するものの別途有償オプションとして寒冷地仕様を設定しているメーカーもあります。
このほか、車両価格の表示には「一部離島を除く」との注釈もあった時期もありましたが、現在では車両の輸送費用も販売会社の「納車費用」に含まれるために、注釈を書かないようにした経緯もあるようです。
いまでは各メーカーともに多くの車種の希望小売価格は全国統一新車価格となっていますが、車種によっては地域によって価格が異なることがあります。
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