たった数秒の短縮 問題化する「コンビニワープ」 道交法の対象にならない理由とは
くるまのニュース / 2020年6月2日 9時10分
交差点に隣接するコンビニの駐車場をショートカットする「コンビニワープ」は近年問題視されています。なかには、死亡事故が発生するなど危険な行為ともいえます。コンビニワープの実態はどうなっているのでしょうか。
■コンビニワープは事故の危険性も!道路交通法で取り締まることは難しい?
赤信号の待ち時間を避けるために、交差点沿いに面したコンビニの駐車場を横断する「コンビニワープ」が社会問題になっています。近年では、こうしたショートカット行為により、死亡事故も発生。事故を起こしかねない悪質なコンビニワープは、道路交通法違反で取り締まることができないのでしょうか。
近年、問題視される「コンビニワープ」は、交差点沿いに面したコンビニ駐車場を斜めに横断し、赤信号をショートカットする行為のことを指します。
このような危険運転をおこなうドライバーがここ数年急増した結果、コンビニワープという造語が名付けられました。数秒、数十秒など、わずかな信号待ちを嫌がる人も多く、多発している危険行為です。
また、コンビニだけに限らず、セルフ式のガソリンスタンドや、広い駐車場を設ける飲食店舗など、交差点に面したあらゆる場所でワープ走行がおこなわれています。そのため、別名ガソスタワープと呼ばれることもあります。
このコンビニワープは、事故のリスクが非常に高い行為です。駐車場に進入しようとして、歩道や路側帯の歩行者と接触する危険以外にも、駐車場内を行き交う歩行者や自転車、そして施設を利用するために出入りをする対向車などと衝突する恐れも考えられます。
なかには、ショートカットした先の道路と合流することに集中するあまり、クルマや建物の影から飛び出してくる子どもに気づかず、跳ねてしまう恐れもあります。
2020年4月には、大分県宇佐市内にある飲食店の駐車場で3歳の女の子がショートカットのため走ってきたトラックに跳ねられ末に亡くなった事故も発生。
運転手の男性は、釣りに向かう途中だったと話しており、調べに対して「近道をしようとして駐車場を経由した。女の子に気づいてブレーキを踏んだが、間に合わなかった」と述べています。
コンビニワープの問題について、コンビニ側はどのように考えているのでしょうか。愛知県内のコンビニエンスストア店長は、以下のように話します。
――コンビニワープの現場を見かけたことはありますか。
交差点に面して広い駐車場が設けられているので、コンビニワープをされる人は多いです。1日の具体的な台数など把握できていないものの、頻繁にその様子を見かけます。
とても迷惑していますが、すぐに通り過ぎてしまうので注意することができません。また、借りている土地なので、ここは通っちゃダメともいえないのが現状です。
――警察への通報など、何か対策は取られているのでしょうか。
毎日同じ人がコンビニワープしているわけでもないため、いつ起こるか分かりません。そのため、警察に通報するのは難しいと感じています。
また、具体的な対策については本部が決定するため、各店舗の判断で決めることはできません。本部側も、こうした問題について認知していると思いますが、具体的な対処ができないのが現状です。法律による罰則もないので、現時点では対策を練ることすら難しい状況になっています。
※ ※ ※
コンビニエンスストア店長の話にあった通り、コンビニワープは道路交通法で取り締まることができません。
その理由は、コンビニをはじめとする店舗の駐車場は、公道ではなく私有地扱いになるため、道交法違反にならないようです。
赤信号を避けるための行為であっても、公道上ではないために信号無視として扱うこともできません。また、私有地内のトラブルは民事扱いになるため、警察側の関与も難しいといえます。
しかし、実際に事故が発生したケースでは、例外も考えられます。過去には、不特定多数の車両や人々が行き交うことから、駐車場も道路とみなされた判例も存在します。そうなれば、道路交通法を適用することも可能です。
また、人身事故を起こした場合は、過失運転致死罪として問われます。コンビニワープによる事故は、通常起こりうる事故ではありません。そのため、被害者側も事故を想定できないことから、加害者側の過失が大きくなります。
■コンビニワープの対策は難しい?
コンビニワープは、道路交通法の扱いによる取り締まりは難しいものの、「建造物侵入罪」として成立する可能性が非常に高いとされます。
駐車場は、店舗と経営主体の所有権・賃借権といった権利が絡んでいる場所です。そのため、コンビニ側の承諾がなければ侵入することができません。
また、店舗に隣接している場合は建造物も含まれるため、コンビニワープが店舗側の意思に反する行為にあたるので、建造物侵入罪が成立するといいます。
さらに、「コンビニ利用者以外の駐車場利用はお断りしております」といった看板で警告をしていれば、成立する確率は高まります。民事上、不法行責任として問われる可能性は十分にありえるでしょう。
グーグルマップ上で駐車場が道として認識されている例(画像:Google Maps)
なかには、駐車場の真ん中にポールを置いて区切る、時間帯によって片方の出入り口を塞いで通り抜けできないようにする、といった対策を取っているコンビニもあります。
とはいえ、コンビニ側の自衛にとどまっているケースは目立ちます。現状、コンビニワープはドライバー側のモラルによる問題なので、完全に対策を打つことは難しいでしょう。
※ ※ ※
現状、コンビニワープは道路交通法で取り締まることが難しいものの危険が伴う行為です。万が一、事故を起こした場合、罪に問われます。店舗側の措置によっては、建造物侵入罪として訴えられるケースもゼロではありません。
たった数秒、数十秒の行為で他人を命の危険に晒してしまうことを十分に理解し、モラルを持った安全運転を心がけましょう。
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