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強制的に速度が出せない車を検討中!? 高齢者事故対策に有効? 速度抑制装置に現実味

くるまのニュース / 2020年6月8日 9時10分

2020年6月2日に改正道路交通法が成立し、あおり運転への罰則が強化や高齢ドライバーの免許更新時の技能試験が義務付けられるようになります。そのなかで、速度抑制装置を搭載したクルマの量産化が検討されているといいます。それは一体どういうことなのでしょうか。

■道路交通法が再び改正 あおり運転や高齢ドライバー対策が強化

 世の中の状況によって交通ルールが次々と変わるなか、ついに「奥の手」が使われることになりそうです。

 それは、走行中にアクセルを踏んでも「一定速度以上ではクルマが加速しなくなる」速度抑制装置(スピードリミッター)のことです。

 2020年6月2日、衆議院本会議で改正道路交通法が可決、成立しました。今回の改正でもっとも注目されるのは、あおり運転についてです。

「悪質・危険運転者対策の推進に関する規定の整備」として、妨害運転に対する罰則を創設。あおり運転をしたり、高速道路でほかのクルマを停止させるなどの危険行為は、最高で5年以下の懲役、または100万円以下の罰金に科せられます。施行は6月30日になる見通しです。

 あおり運転は、2019年に常磐道などで発生した事案がテレビなどで数多く報道されるなど、大きな社会問題となりましたが、これまで罰則規定がなかったあおり運転について行政処分を含めた厳しい対応となりました。

 そのほかの法改正の注目点としては、「高齢運転者対策の推進に関する規定の整備」があります。

 このなかで、75歳以上のドライバーが重大な違反をした場合、免許更新時に実車による運転技能試験を義務付け、その結果を踏まえて免許更新を判断することになりました。

 こちらも、いわゆる「池袋暴走事故」など近年相次いで発生した高齢ドライバーによる重大な交通事故に対応したものです。施行は公布から2年以内としているため、2022年となります。

 また、2019年12月1日からは、運転中にスマホなどの操作をする「ながら運転」の罰則が強化されるなど、道路交通法は近年、社会の状況に応じて柔軟かつ早期に改正されている印象があります。

 こうしたなかで、“次の一手”となりそうなのが、速度抑制装置(スピードリミッター)なのです。

 速度抑制装置について、具体的な議論がおこなわれ、その内容が公開されている資料があります。それは、警察庁による「高齢運転者交通事故対策に関する調査研究」分科会が、2020年3月に提出した最終報告書です。

 このなかでは、高い速度で衝突する事故を防ぐため、自動車メーカーにヒアリング調査をおこなっています。

 但し書きとして「運転免許制度の見直しの方向性について具体的な制度案を示した調査でない」、「先進安全技術の現状を把握することが調査の主眼で、メーカー各社の公式見解を聴取したものではない」とあります。

 調査のひとつが、時速40kmから60kmの速度抑制装置を搭載したサポカーS(ワイド)についてです。

 メーカーからは、全8社中6社が「技術的には製造可能」とし、2社は「詳細な仕様が分からないと回答できない」という返答でした。

 なかには、海外向けですでに速度抑制装置(時速80km)を量産しているメーカーもありました。

 また、欧州、台湾および南米で、任意の制限速度を設定できる機能を、自動車アセスメント(日本のJNCAPに相当)の評価項目に採用する動きがあり、2023年頃の販売に向けて開発中というメーカーもあります。

 このように、日本でも国からの正式要請があれば、速度抑制装置(スピードリミッター)を新車に導入することは十分に可能だということです。

 もちろん、実施に向けてはコストのことなどメーカー側にも解決すべき課題はいろいろあります。

■「速度抑制装置」搭載車は高齢ドライバーの事故防止に必要か?

 今回の道路交通法改正では、高齢ドライバーに対して、使用するクルマの条件を限定する、いわゆる限定免許の実施についても可能としています。

 第一ステップとしては、サポカー限定免許が採用されることになりますが、最高速度を抑制するサポカーでの限定免許についても、今後さらなる議論がおこなわれることになりそうです。

プリウスにも後付けで踏み間違え防止システムがつけることができるプリウスにも後付けで踏み間違え防止システムがつけることができる

 速度抑制機能の量産化については、高齢ドライバーだけにとどまらない可能性もあると思います。

 たとえば、2020年5月に東京大田区の一般道路で30代女性が運転する高級輸入車が暴走し、歩行者を巻き込む重大事故が記憶に新しいところです。

 三重県では2018年12月、一般道路を時速146kmで暴走し、被害者4人が死亡する痛ましい事故も発生しています。

 現在、自動車メーカー各社は、日本や一部に速度無制限走行区域があるドイツのアウトバーンなど、国や地域の状況に応じて最高速度を抑制する速度抑制装置(スピードリミッター)を作動する仕組みを取り入れています。

 日本の場合、業界団体などでは登録車で時速180km、軽自動車で時速140kmという目安を提示していますが、あくまでもメーカーによる自主規制です。

 実際、日本では東京湾アクアラインなど直線路が長い高速道路などで、国産車や輸入車を問わず、制限速度を大きく超えて走行するクルマに遭遇することがあります。

 1990年代までは、日本車で最高時速180kmを超えるクルマは、一部のハイパフォーマンスカーに限られていましたが、2000年代以降はコンパクトカーでも基本性能として時速200kmまで出せるようなクルマも珍しくなくなりました。

 これまで、クルマの走行速度については、法定速度と実際の交通の流れに沿った速度である実勢速度という考え方での議論がありました。

 日本では今後、免許保有者の高齢化がさらに進むことは現時点での免許保有者の年齢構成からみて確実であるなか、高齢ドライバーの限定免許の在り方を踏まえて、高齢者以外のドライバーに対する速度抑制装置の議論も必要になってくるのではないでしょうか。

 将来的には、コネクテッドカー技術を使い、道路側と車載器が通信することで、法定速度を遵守する時代がやってくるかもしれません。

 ハイパフォーマンスカーが楽しめるのは、サーキットだけになってしまう可能性もあるのです。

 しかし、クルマを操る楽しみなど、個人の自由。そして、広い意味では製造者としての表現の自由にも関連する問題であり、慎重かつ深く考えるべき課題だと思います。

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