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まるくなったのはいつ頃から? クルマのハンドルには壮大な歴史があった

くるまのニュース / 2020年6月11日 8時10分

クルマのハンドルは、自動車が登場した黎明期から長い間、その形が変わらないものとして思われがちだが、じつは最初のクルマにはハンドル自体が存在していなかったという。その歴史を見てみよう。

■1894年7月におこなわれた世界初の自動車レースではじめて登場

 独メルセデス・ベンツは、改良新型Eクラスに搭載された「静電容量式ハンドル」にともない、自動車ハンドルの歴史についてリリースを発表した。この内容を見ていこう。

 1886年にカール・ベンツが特許を取得した世界初の3輪のガソリン自動車「ベンツ・パテント・モートルヴァーゲン」や、1889年にゴットリープ・ダイムラーとヴィルヘルム・マイバッハが設計した4輪車「ワイヤー・ホイール・カー」には、ハンドルがついていない。復元された自動車創世記のそれらのモデルを見てみると、それがわかる。

 当時、馬車の運転手は左右の手綱を引っ張り、馬を目的の方向に導くことに慣れていたため、それらには向きを変えるクランクや棒状のレバーしかついていないのだという。

 最初のステアリングホイール(ハンドル)は、1894年に開催された自動車レースで登場した。

 フランスのエンジニア、アルフレッド・ヴァシュロンが、ハンドルの発明者といわれている。1894年7月、パリからルーアンまで走行する世界初の自動車レース「パリ・ルーアン・トライアル」のために、ヴァシュロンはダイムラーエンジンを搭載した「パンハード&レヴアッソール」に、通常のレバーの代わりにハンドルを取り付けた。

 これにより、正確なステアリング操作が可能となり、より高速での走行ができるようになった。そのレースではヴァシュロンは11位にとどまったが、それからハンドルが自動車に搭載されていくきっかけとなった。

 1900年にはダイムラー・モーター社のレーシングカー「フェニックス」にもハンドルが装備された。ステアリングコラムが傾いていたため格段に操作が楽になったが、それでもステアリング操作には大きな力が必要だったという。1902年に導入されたメルセデス「シンプレックス」では、ハンドルにレバーが追加されていて、点火タイミングや空燃比などエンジン制御が可能となっていた。

 1920年代には、ハンドルにホーンが追加されている。最初はハンドルのリムに付けられたバルブホーンから始まり、のちにハンドルのハブにあるクラクション・ホーンボタンが取り付けられた。ハンドルスポークに取り付けられたホーンリングは、すでに1920年代に登場している。

■まるい形は変わらないが、ハンドルは進化し続けている

 1950年代になると、ハンドルは快適性能と安全性向上のための中心的なインターフェイスとなっていく。1951年にはW186型タイプ300「アデナウアー・メルセデス」とW187型タイプ220にコラムシフトを導入している。これにより運転席と助手席の快適性が向上。このコラムシフトは、1970年代までは主流だった。メルセデス・ベンツは2005年に「ダイレクト・セレクト」を採用し、このコラムシフトが復活している。

 ハンドルが大きかったにもかかわらず、当時はまだ操作が重く、疲れることが多かった。メルセデス・ベンツは1958年に発売した「300サルーン」にパワーステアリングを導入している。

1959年製W111型「フィンテール」220SE1959年製W111型「フィンテール」220SE

 1959年、W111型「フィンテール」を発表した。これは統合安全コンセプトを世界で初めて採用したモデルになった。

 従来、剛性の高いステアリングコラムを採用した車両では、正面衝突時にコラムがドライバーに押し付けられ重症を負うケースが多数発生していたが、コラムを分割することで前方衝突時の重症化を抑えることができた。またテレスコピックやインパクト・アブソーバーを備えた特許取得の「セーフティステアリングシステム」を導入、1967年には乗用車の全車種に標準装備している。

 1959年には「フィンテール」「ポントン」で初のコンビレバーが登場。これはウインカー機能とヘッドライトフラッシャー機能を統合したものだった。さらに1963年にはワイパー&ウインドウウォッシャーレバーが追加されている。

 1975年「450SEL 6.9」に世界初のクルーズコントロールシステムが標準装備された。また1998年にW220型「Sクラス」に搭載されたレーダー式DISTRONICシステム(アクティブ・クルーズコントロール)も世界初の機能だった。

 1981年には、W126型「Sクラス」にはじめて運転席用エアバッグを搭載。エアバッグは1992年にメルセデス・ベンツ全モデルに標準装備、1994年には助手席用エアバッグが標準装備されるようになるなど、安全性に革命をもたらしている。

 その後、1998年に初めてマルチファンクション・ステアリングをW220型「Sクラス」に搭載。2016年にW213型「Eクラス」に、世界初のタッチコントロールボタン搭載ハンドルを用意。そして2020年には改良新型「Eクラス」に静電容量式ハンズオフ検知機能を搭載した新世代ハンドルが登場するなど、ハンドルも年々進化しているのがわかる。

 2020年3月に欧州で発表、6月より受注が開始された改良新型「Eクラス」だが、ハンドルのサイズは固定化されて開発されているという。サイズはバージョンによって異なるが、径370mmから380mm、リムの幅は29mm、奥行きは42mmから44mmとなる。

 開発を担当したハンス・ペーター・ヴィンダーリッヒ氏は「ハンドルのリムの幾何学的なデザインは、どんな教科書にも載っていない科学そのものです。手にピッタリとフィットしなければならず、1mmでも大きすぎると不快な膨らみを感じ、1mmでも小さすぎると、お腹が空いているようなもの足りなさを感じます。そうするとクルマ全体の印象が悪くなってしまうのです」とコメントする。

※ ※ ※

 ガソリンやディーゼルの内燃機関からEVに変わっていっても、どんなクルマにも必要とされるのはタイヤとハンドルだという。これから先、自動運転が普及していったとしても、間違いなくクルマには欠かせないもののひとつがハンドルだ。

 モーターショーなどに登場するコンセプトカーには、ジョイスティック型や長方形型、操縦桿型などさまざまなハンドル形状があるが、近未来のクルマはどのような形になっていくのだろうか。

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