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「ディーゼル推し」は過去のもの? 欧州メーカーがいま電動化にチカラを入れる理由

くるまのニュース / 2020年6月22日 11時50分

米テスラ社のモデルをはじめ、BMW「i3」やメルセデス・ベンツ「EQC」などのピュアEV(バッテリーEV=BEV)も日本にやってきている。また欧州メーカー発のプラグインハイブリッド(PHEV)も続々と上陸している状況だ。つい数年前まではクリーンディーゼルばかりが目立っていたのに、ここに来ての電動化モデルが増加した理由はどういうことなのだろうか。

■ハイブリッドやEV技術で先行した日本メーカー

 21世紀を前に、自動車を取り巻く環境は大きく変化した。

 その発端となったのは、1997年に採択された京都議定書である。環境保全のために、先進国を中心に地球温暖化の元凶となるCO2(二酸化炭素)の排出量規制を強化しようと動き出したのだ。

 クルマのCO2排出量を減らすには、燃費を向上させるのが手っ取り早い。ヨーロッパが選んだのは、ディーゼルエンジンの改良と、そのダウンサイジングである。日本はガソリンエンジンの改良に加え、エンジンにモーターを加えたハイブリッドシステムを導入する道を選んだ。

 1999年、東京都は「ディーゼルエンジンNO!」を突きつけている。日本の道路事情ではNOx(窒素酸化物)やススに代表されるPM(微粒子状物質)など、大気汚染物質の排出量はガソリンエンジンのほうがはるかに少ない。CO2削減は、ガソリンエンジンの燃費向上と電動化で達成しようと考えたのだ。

 欧米と違い、日本は人口密度が高く、人口100万人を超える都市が全国にたくさんある。またヨーロッパと違い、市街地を中心とした短距離移動の使いかたが多い。だからハイブリッド車の登場からわかるように、早い時期に電動化に舵を切った。

 ハイブリッドシステムも多彩だ。その筆頭が、世界で初めてハイブリッド車を量産に移したトヨタの「THS」で、エンジンとモーター、変速機とデフが動力分配機構で連結され、両方の動力源を走行に使うことができる。発電機を積んでいるからモーター走行のときに発電をおこなったり、エネルギー回生が可能だ。

 シンプルな構造で、生産性も高いのがマイルドハイブリッドである。エンジンにモーター機能付きの発電機を搭載し、発進や加速時にエンジンをアシストする。スズキや欧米でも採用するクルマが多い。

 日本は大容量バッテリーを搭載したEV(ピュアEV、BEV)の開発にも早い時期から乗り出し、三菱は時代に先駆けて2009年に「i-MiEV」を、日産も2010年から「リーフ」を市販に移している。

2009年に発売された量産EV、三菱「i-MiEV」2009年に発売された量産EV、三菱「i-MiEV」

 これに対しヨーロッパは、積極的にディーゼル戦略を推し進めた。

 ディーゼルは低回転から分厚いトルクを発生するし、ターボなどの過給機との相性もいい。ガソリンエンジンモデルに比べると燃費も優れている。

 とても魅力的だが、排出ガスはきれいではなかった。そこで排出ガス規制をユーロ4、ユーロ5、ユーロ6と段階的に強化している。また、ダーティな旧世代のディーゼル車は都市部への乗り入れを禁止し、買い替えを奨励した。

 だが、排出ガス規制と燃費規制が強化されると、当然、生産コストは一気にアップする。

 最新のユーロ6規制は、EGR(排気再循環装置)と尿素SCR(選択触媒還元)がないと乗り切ることは難しい。ヨーロッパだけでなく、世界中が規制を厳しくすると、対策費用がかさみ、自動車メーカーは利益率が大きく減ってしまう。

 だから、フォルクスワーゲンなどは耐え切れず、排出ガス偽装という不正手段に出てしまったのである。当然、ヨーロッパの自動車メーカーは、クリーンディーゼルを中心とした販売戦略の見直しを迫られることになった。

■「アフター・コロナ」時代にクルマは大きく変貌していく

 2021年以降は、さらに大幅にC02排出量規制を強化するし、世界一の自動車マーケットに成長した中国も、大気汚染を減らすために排出ガス規制を大幅に強化する。これから先は電動化なしにクルマは生き残ることができない。

 そこで大型車やSUVは、燃費改善効果が大きいマイルドハイブリッドを採用するようになった。燃費の悪化を防ぐだけでなく、モーターアシストによってパンチのある走りを楽しめる。だから12ボルト電源に加え、電力効率に優れた48ボルト電源を採用するハイブリッド車が増えてきた。

BMWのBEV「BMW i3」。登場は2013年と比較的早い段階で市場に投入されたBMWのBEV「BMW i3」。登場は2013年と比較的早い段階で市場に投入された

 また、プラグインハイブリッド(PHEV)と呼ばれる発展型のハイブリッド車もメジャーな存在になりつつある。これは大容量バッテリーへの外部充電機能を加えることによって電気だけで走れる距離を大幅に延ばしたハイブリッド車だ。

 日本では先代「プリウス」が最初にPHEVを仲間に加え、三菱「アウトランダーPHEV」の登場によって知名度が高まっている。ちなみにBMW「i3」に設定されているレンジエクステンダーは、基本はモーター走行だが、発電用のエンジンを追加してEVの弱点だった航続距離を延ばすことに成功した。

※ ※ ※

 2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、どの自動車メーカーも販売台数を大きく減らしている。そして新型コロナウイルスの蔓延により、自動車業界の風向きも変わってきたのだ。

 2020年4月の欧州での販売台数データを見ると、欧州では前年同月比マイナス78%の29万2600台(2019年4月は134万台)という記録的な減少に陥った。4月は新型コロナ禍により欧州各国でロックダウンがおこなわれたため、この数字は予測できた落ち込みではあるが、それでも自動車産業全体が落ち込んだわけではない。

 BEVは1万6700台と、前年同月比マイナス16%と抑えられ、PHEVには1万4000台と、前年同月比プラス7%になっている。ハイブリッド車の数字を合わせると5万400台となり、電動化モデルは市場全体の17%までを占めるまでになった。

※ ※ ※

 地球温暖化の原因となる温室効果ガスの発生を止めるために、電動化は必至だ。もちろん、その先にはBEVがある。

 その証拠に、欧州だけでなく世界中で電動化モデルの販売は好調だ。販売トップのテスラは台数を大きく伸ばしている。

 早い時期から電動化モデルに注目していたBMWも15%もの伸びを見せ、中国のBYDに一気に迫った。アウディとフォルクスワーゲンも2020年からBEV戦略に本腰を入れ、アメリカ勢のGMやフォード、フィアット・クライスラー(FCA)も追随する。

 日本では今なおハイブリッド車が主役だ。リーズナブルな価格で、燃費は良いし、快適性も高いからである。しかも電欠の不安はないし、充電の手間もいらない。

 だが今後、排出ガス規制や燃費規制がさらに厳しくなり、税制の見直しなどが図られれば、PHEVやBEVが一気に増えてくるだろう。これからはコネクティングや自動運転なども見据えた『CASE』の時代だ。数年の間に、自動車を取り巻く環境は大きく変わってくる。

 当然、モーターとバッテリーの存在感は大きくなるはずだ。遠からずエネルギー効率を高め、容量を増やした進化型バッテリーも登場するだろう。間もなく世界を巻き込んでの本格的なEV時代に突入するのである。

 エンジンを持たないEVが主役に躍り出れば、クルマのデザイン改革も始まる。これからの10年、自動車の動向から目が離せない。

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