非常時知らせる「発炎筒」燃焼時間なぜ5分? 近年は炎も出ないLEDタイプも 視認性に違いある?
くるまのニュース / 2020年6月19日 9時10分
クルマに必ず積まなくてはいけない「発炎筒」ですが、近年はLEDタイプの発炎筒(LED非常信号灯)が登場しています。従来の発炎筒と比べて、煙が出ないこと以外にもさまざまな違いがあるといいますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。また、非常事態のクルマを救援するプロであるJAFは、LED発炎筒を使用しているのでしょうか。
■LED発炎筒は、従来の発炎筒とどう違う?
クルマに必ず積まなくてはいけないもののひとつに、発炎筒があります。使用期限は4年に定められており、期限が切れていたら車検時に交換しなくてはなりません。
これに対して、近年、カー用品店などでも見かける機会が増えたLEDタイプの発炎筒(LED非常信号灯)は、電池を変えればずっと使えます。それぞれの長所と短所は、どのようなものなのでしょうか。
発炎筒は非常信号用具として、道路運送車両法によって車内に備え付けることが義務付けられています。
この非常信号用具として、昔からあるおなじみの炎が出るいわゆる「発炎筒」と、電池で点灯するLEDを使用したタイプがあります。いずれも保安基準を満たした車検対応品です。
非常信号用具の保安基準は具体的には「夜間200メートルの距離から確認できる赤色の灯光を発する」「自発光式である」「運転席から見てひと目でわかる場所に備わっている。簡単に取り外せない」「振動や衝撃で損傷を生じたり作動したりしない構造である」という内容となります。
このほか、赤色灯火の発光部のレンズが直径35mm以上であることも基準のひとつです。
基本的には日本工業規格JIS D5711の『自動車用緊急保安炎筒』の基準をクリアしていることがマストとなります。
基準にはたくさんの項目がありますが、わかりやすい部分を抜粋すると次のような項目があります。
・光度:炎の平均光度は140カンデラ以上
・耐雨性:雨量50mm/hで点火したとき、正常に着火し、かつ、燃焼が中断してはならない
・耐風性:風速18m/sで点火したとき、正常に着火し、かつ、燃焼が中断してはならない
・燃焼時間:5分以上とする
・劣化促進試験 高温多湿試験:高温多湿後、室温に10日間放置して点火したとき、正常に着火し、かつ、正常に燃焼しなければならない
※ ※ ※
それでは実際に、LED非常信号灯(以下、LED)と発炎筒を比べてみましょう。
保安基準では「夜間200メートル」先から見えることが条件に上がっているので、夜間に暗い場所で光り方をチェックしてみました(消防署へ火炎発生届け出を出して検証しています)。
この日は雨がかなり降っていましたが、200メートル離れたところから見ても、LEDも発炎筒ももちろん確認することができました。
しかし、LEDと発炎筒を比べると明らかに、発炎筒の方が明るく見えます。
また、煙が出ることで遠くから見ても「ん? この先になにかある?」という状態に気づきやすいという特徴もあります。煙に光が反射しているようで、広範囲にわたって異変を知らせる手段として良いともいえます。
当然ですが、50ミリ以上の雨でも正しく燃焼することが基準となっているので、雨で火が付きにくいこともなく、もちろん、雨が直接、炎に当たっても炎が消えることもありませんでした。
ただし、発炎筒の燃焼時間は最低5分と決まっており、長く光らせておきたい場合などは、やはりLEDの方が安心感があるでしょう。ちなみに、今回の検証で発炎筒は6分で消えました。
■救援のプロであるJAFはLED発炎筒を使うのか?
燃料漏れのとき、炎が出る発炎筒の場合は引火の危険性があります。ガソリンに引火すると大変危険なので、このような場合はLEDが安心といえます。
LEDが優れているところはほかにもあります。発炎筒は使い捨てとなりますが、LEDは電池を入れ替えれば半永久的に使うことができます。
また、マグネットがついているタイプもあり、この場合地面に置くのではなく、クルマのボディに磁石で固定して使えるなどのメリットもあります。
従来の「発炎筒」(写真左)とLEDタイプの発炎筒
このほか、LEDには次のようなメリットがあります。
・一般のLEDライトを使うときとほぼ同じ手順で使えるので、初めての場合も使いやすい
・炎が出ないので、子どもや高齢者にも安心
・発炎筒は有効期限が4年に定められているが電池を交換すればずっと使える
・一般的なLEDの非常信号灯は20時間以上点滅するので長い時間光らせておきたい場合は良い
・電池の放電や液漏れがない
・トンネルのなかなど煙が充満して排気しにくい場所では視界を妨げないLEDが安心(ただし、発炎筒は煙のおかげでいち早く異変に気付きやすいという長所もあります)
※ ※ ※
ところで、JAFのロードサービスをおこなう際には、どのような非常信号用具を使っているのでしょうか。
JAF広報課に聞いてみました。
「JAFでは基本的には発炎筒を使用し、LEDタイプの非常信号灯は使用しておりません。しかし、夜間の見えづらさやトンネル内の視認性を確保するため、発炎筒の使用が適当でない場合は『ミラクルマーカー』というLED照明器具を使用しています」(JAF広報課)
JAFが使用しているLEDのライトは強力発光するLEDとランダムな発光パターンを持つ器具で夜間の視認性能に大変優れています。クルマに踏まれても安心な平べったい形で、頑丈堅牢な構造設計も特長です。
本体には強力磁石がついており、クルマのボディに簡単に装着して使うこともできるとのことでした。
ところで、発炎筒の燃焼時間「5分」はなにを根拠にしているのでしょうか。
発炎筒メーカーの団体である日本保安炎筒工業会に聞いてみたところ、「5分という時間は、故障などでクルマが止まってしまったときなど、発炎筒に点火して、三角板を置き、後続車への注意を促してガードレールの外など安全な場所に逃げるまでの時間を想定しています」とコメントします。
5分は「避難するまでの時間」ということでした。
結論としては、発炎筒とLEDタイプのふたつを備えておいて、それぞれ使い分けるのが良いのかもしれません。
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