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なぜ新型車はSUVばかり? 軽・コンパクトから高級車までSUVが続々と登場する事情

くるまのニュース / 2020年6月25日 7時10分

最近の新型車はSUVが圧倒的に多いです。軽自動車や小型車はもちろん、海外のプレミアムブランドにおいても、SUVが続々と登場しています。なぜ各自動車メーカーは、SUVに力を入れるのでしょうか。

■輸入プレミアムブランドもこぞってSUVを投入

 最近登場した新型車を見ると、2019年11月にトヨタ「ライズ」・ダイハツ「ロッキー」、2020年1月にスズキ「ハスラー」、同年6月にダイハツ「タフト」、トヨタ「RAV4 PHV」「ハリアー」、日産「キックス」など、SUVが圧倒的に多いです。

 今後も2020年7月に電気自動車の日産「アリア」、8月にはコンパクトなトヨタ「ヤリスクロス」などが登場する予定で、新型車はSUVを中心に展開しています。

 この影響を受けて、近年ではSUVの売れ行きが伸びています。国内の新車販売台数に占めるSUVの比率は、2005年頃は5%でしたが、いまは15%に増えました。

 その代わり20%を占めていたミニバンが15%に減り、セダンも11%から8%に下がりました。

 なぜSUVがここまで人気を高めたのでしょうか。国産自動車メーカーの商品企画担当者の意見をまとめると、次のようになります。

「SUVは北米、中国、新興国という具合に、世界の市場で人気を高めています。日本は軽自動車とミニバンが多く売られる特殊な市場といわれますが、それでもSUVは販売を伸ばしています。

 コンパクトカーも世界中で好調に売れていますが、1台当たりの価格は安いです。その点でSUVには高価格車も多く、メーカーや販売会社にとっては効率の良いカテゴリーです」

※ ※ ※

 輸入車はどうでしょうか。欧州プレミアムブランドの日本法人からは、次のような意見が聞かれます。

「欧州は日常的な移動をするときの走行速度も高く、高重心のSUVは安定性の確保が難しいために敬遠されていました。

 2000年頃までのカテゴリーは、セダン、ワゴン、クーペが中心でしたが、近年では市場規模の大きな北米で、SUVが売れ行きを急速に伸ばしました。セダンとワゴンの人気は相対的に下がり、欧州メーカーもSUVを軽く扱うことはできません。

 そこでSUVの開発に乗り出し、高重心のボディでも、不満のない走行安定性が得られるようになりました。その結果、2000年以降はSUVの車種数が増えて、ブランド全体の売れ行きを押し上げています」

 この流れは、日本に輸入されるプレミアムブランドを見ても明らかです。

 たとえばメルセデス・ベンツには、現在SUVが8車種ほど用意され、ブランドの販売総数も増えました。日本自動車輸入組合のデータによると、日本の販売総数が778万台のピークを迎えた1990年に、メルセデス・ベンツの年間国内販売台数は約3万9000台でした。

 それが車種を充実させたことで2000年には5万台を上まわり、この後はSUVも豊富に売れて2019年には約6万7000台に達しました。

 1990年と2019年を比べると、20年のあいだに国内販売台数は778万台から520万台に下がって33%減りましたが、メルセデス・ベンツは3万9000台から6万7000台へと72%増えています。

 メルセデス・ベンツの売れ行きが伸びた背景には、コンパクトで安価なA/Bクラスの充実などもありますが、SUVのバリエーションを増やした効果も大きいです。

 そして、いままで上級セダンやスポーツカーを扱っていたメルセデス・ベンツやBMWが、SUVを積極的に販売すると、SUVカテゴリーのイメージも高まります。

 求めやすい価格帯の車種まで含めて、SUVの売れ行きが一層伸びる好循環が生じました。

 いまでは「SUVを用意すれば売れ行きを伸ばせる」「SUVを設定しないと時代に取り残される」という認識も定着して、ロールス・ロイスといった高級ブランドでもSUVとして「カリナン」を設定しています。

 SUVの車種数が単純に増えたわけではなく、縮小傾向にあるジャンルもあります。そえがセダンです。トヨタではセダンの「マークX」が廃止され、「プレミオ/アリオン」も発売から13年を経過するなど、設計の古さは否めません。

 日産のセダンは「ラティオ」に続いて、「ティアナ」も廃止する可能性が高いです。販売店では「現時点では生産を終えており、今後の予定はメーカーから聞いていません」といいます。「フーガ」は発売から10年、「シーマ」も8年を経過しました。

 三菱とスズキは、SUVの車種数が増えた代わりに、セダンの取り扱いは終了。スバルも2020年6月に「レガシィB4」が生産終了しました。ダイハツのセダンも、トヨタ「カムリ」のOEM車となる「アルティス」だけです。

 各メーカーともに、SUVの増加とは裏腹に、セダンの車種数を激減させています。同様にワゴンも減りました。

 海外メーカーでは、ミドルサイズハッチバックのボルボ「V40」が現行型で最後になります。日本の道路環境に適した車種で、高い人気を得ていましたが、今後のボルボのコンパクトな車種はSUVの「XC40」のみになります。

 現在の自動車メーカーは、燃費規制の対応なども含めて、環境性能の大幅な向上に取り組んでいます。安全性能と自動運転技術の進化も不可欠です。

 そのために「選択と集中」が求められ、エンジンやプラットフォームの種類、車種の数を抑えるようになりました。その結果、セダンやワゴンが減り、SUVが残ったのです。

■SUVはスタイリングの良さと実用性を両立出来る!?

 SUVはもともと悪路を走破できるオフロード4WDから発展したカテゴリーなので、キックスのように2WDしか用意しない舗装路向けの車種でも、大径タイヤの装着など外観が力強いです。

 またボディの上側はワゴンと同様の形状なので、4名乗車時の居住性や荷物の積載性も優れています。SUVの天井を低くすれば、居住性と積載性は悪化しますが、外観はさらにスポーティな5ドアクーペ風になります。

トヨタ新型「RAV4 PHV」トヨタ新型「RAV4 PHV」

 つまりSUVは、カッコ良さと実用性を兼ね備えたカテゴリーで、このふたつの要素の配分も自由自在です。デザイン優先にも、あるいは実用指向にも、どのようなニーズにも対応できます。

 一部のオフロード4WDを除くと、SUVのプラットフォームはセダンなどほかの車種と共通化できます。開発するとき時も合理的で都合が良く、SUVは世界的に人気を高めて、車種のリストラが進むなかでも生き残っているのです。

 そして直近では、シティ派SUVが普及した影響もあり、少し無骨なオフロード4WDの持ち味が改めて見直されています。

 日本でも外観をオフロードSUV風に仕上げたトヨタ「RAV4」やライズ、本物のオフロードSUVであるスズキ「ジムニー」などが注目されています。

 輸入車でも、ジープブランドのオフロードSUVとされる「ラングラー」が人気です。

 SUVの原点回帰ともいえますが、今後人気を維持するうえでは、注意すべき傾向でもあるでしょう。SUVがオフロード4WDからシティ派、クロスオーバーへと多様化を続けた結果、一種の行き詰まり傾向に陥り、トレンドが過去に遡ってオフロード4WDに回帰したとも受け取られるからです。

 セダン、ワゴン、クーペなどのカテゴリーは、一度ブームを経験して廃れた過去があります。従って今後、売れ行きが盛り返すことは考えにくいです。

 そうなるとSUVは、趣味性を備えた高価格車が堅調に売れる最後のカテゴリーかも知れません。

 今後も人気を維持するためにも、SUVの多用途性を生かした新型車の登場に期待したいです。

 今後発売される電気自動車のアリアやマツダ「MX-30」は、デザインにも新鮮味があるので、SUVの新しいトレンドを築くかも知れません。

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