車に地図を載せている人が減少? カーナビやマップアプリなど地図のデジタル化が進む訳
くるまのニュース / 2020年7月4日 18時10分
かつてクルマで出かけるときには地図が必需品で、遠出するときや、はじめて行く場所など、地図で目的地までの経路をチェックしていました。それが現在では、ナビゲーションの普及やスマホの地図アプリなどを活用することが増えたため、アナログの地図を持っている人が減っているようです。
■カーナビや地図アプリの普及により、本の道路地図の需要が減少
かつて、クルマに必ずといっていいほど載せていたものとして道路地図があります。道路地図はクルマで出掛けるときの必需品で、はじめて行く土地などは、地図を見て、経路をシミュレートしていたものです。
しかし現在はカーナビゲーション(以下、カーナビ)の普及が進み、スマートフォンでも地図アプリが利用でき、現在位置の確認はもちろん、目的地の誘導までしてくれるようになったことから、アナログの道路地図を持たない人が増えました。
カーナビの歴史をひも解くと、20世紀初頭の1906年に、「自動車カルテ」と呼ばれる、車輪の回転に応じてロール状の地図を巻きあげるシステムがアメリカで開発されたのが最初だといわれています。
その後、さまざまな改良が加えられていき、1970年代になるとコンピュータの小型化が進み、1980年代には車載コンパスや運動センサーと連動してディスプレイに表示されるようになりました。
日本では、1981年にホンダがジャイロ式カーナビを発売。もっとも、モニターのフィルム状の地図を取り替える必要があるなど、実用的とはいいがたいものでした。
その後1980年代後半のバブル景気に乗ってカーナビの開発も加速。1987年にはトヨタがCD-ROMの電子地図データを搭載した新型を、1989年には日産が、現在では「ヘディングアップ」と呼ばれる進行方向を上にするマップのシステムを開発しましたが、カーナビはかなり高額なオプションだったため、普及するにはほど遠い状況でした。
現在のカーナビに通じる認知度の向上は、1991年にパイオニアがアメリカの衛星を使ったGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を活用したカーナビを売り出したあたりからでしょう。また、VICSの運用も1996年から始まりました。
その後、カーナビはオーディオとも連動し、純正オプションとして認知度が向上。人気を博していくことになります。それに相対して、本としての形態の地図を利用する人が減っていったようです。
そしてクルマに地図を載せなくなった人が増えた最大のきっかけは、「グーグルマップ」の普及でしょう。
2009年に地名が日本語表記になり、2010年にカーナビだけでなく電車利用(乗り換えナビ)、徒歩などのモードが切り替えられる「グーグルマップ・ナビ」のサービスがスタート。
スマホの普及により、カーナビよりも使い勝手がいいと評判になり、さらに本の地図の必要性が下がっていきました。
■現在でもクルマで地図を愛用している人には、どんな理由がある?
以前は「1台に1冊」といっていいほど車載されていた地図ですが、近年はどのように使われているのでしょうか。
「目的地を目指す」や「行き先の道順」などを把握するためとしてのアナログの道路地図は、その役目を終えつつあるように見えます。
カーナビの代わりに道案内してくれるスマートフォンの地図アプリ
通信インフラが普及した現在、ほぼ全国でスマホが使えるようになりましたし、さらにこれからは「IoT(インターネット・オン・シングス)」の時代となり、インターネットで情報を扱うのが当たり前になっています。
カーナビもこれまでのアメリカの衛星経由で入手していた位置データではなく、国産の準天頂衛星システム「みちびき」の運用もあって、より高精度なデータを入手できるようになりました。
現在販売されている地図ランキングを見ると、ベスト10のほとんどが世界地図や特定のエリアに特化したマップなどが上位を占めています。
世界地図などは学生の受験用として活用されるケースが多く、これまでのような道路地図という側面では、クルマ用というより、カーナビの普及があまり進んでいないバイクのツーリング用がほとんどです。
ほかには全国の道の駅を網羅したものなど、より趣味性の高い地図が選ばれているようです。
地図データを開発する企業は、国産メーカーと契約を結び、純正ナビに地図データを提供。出版物としての地図から、データ提供サービスへとスムーズに移行できた企業ほど業績を伸ばしています。
現在でもクルマを運転するときに道路地図を使っている人には、どのような理由があるのでしょうか。複数のユーザーに聞いてみました。
・地図そのものが好き。地図からその地形などを連想する楽しみがある。
・地図の見方に慣れているので、ヘディングアップが慣れない。
・カーナビだと現在の自車の方向が瞬時に把握しにくい。
・古いクルマなので、ナビをビルトインするスペースがない。
カーナビの画面に抵抗を感じるというより、いままで地図を使ってきた習慣から使い続けていて、どんな状況でも見やすいというのが主な理由のようです。
また、地図も愛用している人は、カーナビを使用する場合に進行方向に対して前方を中心に表示する機能「ヘディングアップ」ではなく、画面上で常に北が上にある状態で表示する機能「ノースアップ」を利用するケースが多いようです。
地図が画面上のデータになっても地図(本)と同じように北が上に来るほうが位置関係を把握しやすいのだそうです。
※ ※ ※
インターネット環境や電源を必要としない点は本の地図のメリットですが、スマホのカーナビアプリは新しい道ができるとすぐにデータを更新して表示してくれるメリットもあり、一長一短な部分もあります。
たまには地図を広げて、自分なりの抜け道やルートを開拓してみてもいいかもしれません。
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