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完全ETC化で高速道路の料金所が無人になる!? 自動車交通の未来像とは

くるまのニュース / 2020年7月12日 9時30分

高速道路の料金所での渋滞を緩和すべく導入されたETCですが、コロナ禍での人との接触を極力さけ、料金徴収のキャッスレス化が推奨されるなかで、完全ETC化が議論されています。今後、自動車社会を取り巻く環境は、どのように変化していくのでしょうか。

■人との接触を避けるため、高速道路の有人料金所が廃止される!?

「ターンパイク」と聞くと、関東在住の人なら、神奈川県の「箱根ターンパイク」を思い浮かべるのではないでしょうか。

 ターンパイクの語源をネットで検索すると「英国で使われた馬車専用道のための横木」という説明が出てきます。

「横木(よこぎ)」の原理は、高速道路料金所や有料駐車場の出入り口などで使われているゲートと同じです。

 アメリカやカナダの国立公園の車両料金所では、いまでも木製の横木を手動で使っているところがありますが、近年では最新の自動ゲートを採用していても、ターンパイクという名称の有料道路がいくつか存在しています。

 こうした場所は、箱根ターンパイクと同じく、高速道路というより、ゆっくりドライブしながら綺麗な風景を楽しむといった環境にある場合が多いようです。

 日本では、「〇〇スカイライン」や「〇〇パークウェイ」といった観光名所がそれに該当するのではないでしょうか。

「人と自然」、または「クルマと自然」が良い関係を保つためには、料金所での「人と人」とのコミュニケーションが大事だと感じます。

 本来は、首都高速や東名高速、名神高速などの都市部や都市間高速道路でも「人と人」とのコミュニケーションが強かったはずです。

 しかし、自動車の保有台数が増え、交通量が増えたことで、手動で通行料を支払う料金所で大渋滞が発生。ドライバーにとって料金所に対するイメージは悪化していきました。

 そんななか、2000年に登場したのがETCです。国土交通省によると、主要渋滞ポイントの渋滞回数を、ETC導入前と導入後(2008年)で比較すると、渋滞全体の32%を占めていた料金所部渋滞が、1%まで縮小しています。

 その後もETC装着率は上がり、2020年4月時点で、ETC利用台数は1日あたり580万台、ETC利用率は93.2%と過去最大になりました。

 そしていま、コロナ禍での「人と人」との接触を極力さけ、料金徴収時のキャッシュレス化が推奨されるなかで、高速道路の完全ETC化・料金所無人化の議論が本格化してきました。

 2020年6月27日までに高速道路関連企業で実施した173人に対するPCR検査の結果、料金所で働く9人が陽性になったという事実もあります。

 近い将来、ターンパイク時代から始まった、料金所での「人と人」とのコミュニケーションが完全になくなるのかもしれません。

■自動車社会はどう変革していくのか?

 ETCとはどのような仕組みでしょうか。

 エレクトロニック・トール・コレクションシステム(自動料金徴収システム)の略称です。欧米では、通行料金をトール、またはトール・フィーと表現します。

ETCを利用するには、車載器とETCカードが必要ETCを利用するには、車載器とETCカードが必要

 ETCの原理は、道路側にある発信機からの電波を通じて車載機器と通信することで、事前に登録してある利用者のクレジットカード情報と車体情報を照合。クレジットカードで通行料金が支払えるという仕組みです。

 日本では、車載器に異なるETCカード挿入しても対応する機器形式ですが、主にアメリカでは道路管理会社から貸与される薄い箱のような形状の受信機器をフロントガラス内側に自分で張り付けるケースが多くあり、日本のようにカードの入れ替えはできません。この場合は、受信機器の使用には、数十ドルの保証料がかかるのみです。

 日本型ETCの車載機器として高価ですが、メリットとしては、道路インフラ側と車載機器側との双方向でのデータ送信を使ったさまざまなサービスにあります。

 さらには、都道府県警察や道路管理者が道路交通情報を共有するシステム、「VICS(ビックス)」との連携です。世界に先駆けてカーナビが普及したのも、VICSがカーナビを裏支えしてきたからです。

 ETCの双方向データサービスでは、ETCスポットとして2011年から全国展開し、その進化版であるETC2.0として2015年からサービスを開始しました。

 それぞれの導入の少し前、筆者(桃田健史)は国土交通省道路局の関係者からシステムの運用方法について詳しい話を聞いたり、説明会に参加しています。

 ETCの技術とサービスはこれまで、着実に進化してきたことは確かですが、同時期にスマートフォンの急激な普及と、インターネットサービスの急激な多角化が進みました。

 その結果、ETC2.0が当初目指していたサービスの一部は、スマホのアプリで簡単にこなせる場合もあります。そんな社会変化を踏まえて、ETC2.0の意義について根本的な議論が必要になってきたとも感じています。

 そしていま、国による高速道路の完全ETC化の議論が本格化してきました。

 赤羽国土交通大臣は、その課題のひとつとして、クレジットカードを所有しない人たちへの対応などを指摘しています。

 一般的なキャッシュレス化では、さまざまなスマホアプリが併存しており、自動車交通でのキャッシュレス化についてより広い視野の議論が望まれます。

 さらにいえば、こうした大きな時代の変わり目を、国や業界団体、自動車メーカーがどう認識し、どのような未来像を描いていくかが大きな課題だと思います。

 1990年代からこれまでは、カーナビ、ETC、ドライブレコーダーは、自動車に対する後付け装備という解釈でした。

 それが最近では、トヨタがディスプレイオーディオと称してカーナビの標準装備化を推奨し、新型「ハリアー」でドラレコ標準装備化の動きが始まっており、将来的には当然、ETCの新車標準化も考えられるでしょう。

 その上で、自動車産業は今後、データビジネス化が加速することが確実な情勢です。

 完全ETC化は、ターンパイク創世記から長らく続いてきた「単純な料金徴収」という考え方とはまったく違い、自動車ビックデータ化時代への本格的な幕開けであることを、ユーザーも認識しなければならないと感じます。

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