軽自動車こそ原点! 語り継がれるべきホンダの軽自動車5選
くるまのニュース / 2020年7月13日 6時10分
現在、国内の自動車市場でもっとも売れているクルマといえば軽自動車です。なかでもホンダ「N-BOX」は2019年に25万3500台を販売し、新車販売台数においては3年連続、軽4輪販売台数においては5年連続の首位を獲得。そこで、これまで販売されたホンダの軽自動車のなかから、語り継がれるべきモデルを5車種ピックアップして紹介します。
■ホンダの軽自動車のなかから名車を振り返る
数年前までは、国内の自動車市場でもっとも売れているクルマといえばトヨタ「カローラ」や「プリウス」が定番でした。しかし、近年は軽自動車がもっとも売れているクルマです。
なかでもホンダ「N-BOX」は、2019年に25万3500台を販売し、すべての新車販売台数においては3年連続、軽4輪販売台数においては5年連続の首位を獲得しています。
そのホンダの原点といえば軽自動車であり、いかにもホンダらしいユニークなモデルでした。そこで、これまで販売されたホンダの軽自動車のなかから、ユニークで記憶に残るモデルを5車種ピックアップして紹介します。
●T360
ホンダらしさがあふれるスーパートラックの「T360」
オートバイの販売で企業として軌道に乗っていたホンダが、最初に販売した4輪車が1963年に発売された360ccエンジンのセミキャブオーバー型軽トラック「T360」です。
T360と同時に開発していたスポーツカーの「スポーツ360」がお蔵入りとなり、これに搭載していた360cc水冷直列4気筒DOHCエンジンをT360に流用するという、当時の常識では考えられない軽トラックでした。
最高出力30馬力を8500rpmで発揮するという、まさにスポーツユニットといえるエンジンでしたが、軽トラックのエンジンに要求されるのは耐久性やメンテナンス性、低回転域でのトルクだったため、販売台数は振るいませんでした。
1967年には、空冷2気筒OHCエンジンを搭載した「TN360」にバトンタッチするかたちで、生産を終了しました。
いまでは現存数も少なく激レアなクルマですが、栃木県の「ツインリンクもてぎ」にある「ホンダコレクションホール」には、新車のようにレストアされたT360が動態保存されています。
●バモスホンダ
これ以上シンプルなクルマはないくらいの「バモスホンダ」
キャブオーバー型の軽トラックTN360をベースにした派生車が、1970年に発売された「バモスホンダ」です。
バモスホンダはTN360のシャシに、まるで軍用車のようなユニークなデザインボディが架装されたモデルで、分類としては軽トラックとなっていました。
バリエーションは、2人乗り、4人乗り、そして4人乗りフル幌の3タイプが設定され、キャビンはソフトトップのルーフで、ドアが無くパイプ状のものがドアの代わりに装着されているのみと、かなり簡素なつくりでした。
外観のデザインからオフロードも走れる雰囲気がありましたが、最低地上高が低く悪路走破性は高くなかったようです。
メーターのユニットはオートバイで実績のある防水タイプで、シート生地も防水性の高いキャンバスを使用し、急な雨でも問題ないようにつくられていました。
奇抜すぎるデザインは好き嫌いが分かれて販売面では苦戦し、発売からわずか3年後の1973年に生産を終了。いまでは大変希少なモデルです。
●ライフステップバン/ライフピックアップ
トールワゴンの元祖といえる「ライフステップバン」
ホンダはスポーツカーの「Sシリーズ」で名を馳せていましたが、初の本格的な量産乗用車といえば1967年に発売された「N360」で、FFレイアウトを採用し、広い室内空間と高性能なエンジンによって大ヒットしました。
そして、1971年にN360の後継車として発売されたのが初代「ライフ」です。
このライフのコンポーネントを使って、同年、スペシャルティカーの「Z」(水冷モデル)を発売。さらに多くのニーズに対応するために、1972年に派生車である、軽バン「ライフステップバン」と軽トラックの「ライフピックアップ」が発売されました。
ライフステップバンの外観は、背が高いボクシーな車体に短いボンネットがあるスタイルで、現在の軽トールワゴンと同様なディテールを確立しており、当時としては斬新なデザインでした。
また、一般的に軽トラックをベースしたバンは、フロントシート下にエンジンを置き後輪を駆動するFRが主流で、ライフステップバン/ピックアップはFFだったためプロペラシャフトが不要となり、フロア高を下げてより多くの荷物を積み込むことが可能でした。
1974年にホンダが軽自動車市場から撤退することになり、ライフステップバン/ピックアップは生産を終了しますが、後に再評価され、中古車の人気が高くなりました。
■軽自動車市場に復活した、ホンダらしさあふれるモデル
●トゥデイ
それまでの常識を覆すスタイルを採用した「トゥデイ」
前述のとおり、1974年にホンダは軽自動車市場から撤退しましたが、11年後の1985年に初代「トゥデイ」の登場によって復活を果たしました。
外観のデザインは1981年に発売された初代「シティ」とは真逆で、ボンネットのラインがそのままフロントウインドウを経て、後端までつながる低いロングルーフが特徴で、それまでの軽ボンネットバンの常識を覆すようなスタイルです。
また、シリンダーを水平近くまで寝かせた550cc直列2気筒SOHCエンジンを搭載し、エンジンの下方にデファレンシャルギヤを配置することでコンパクトなレイアウト実現。
ショートノーズ化するとともに、新開発のサスペンションによってタイヤをボディの四隅に配置することで、広い居住空間を確保しています。
初代トゥデイは、他に類を見ない斬新なデザインの軽自動車として高く評価され、1986年に「グッドデザイン賞」を受賞しました。
●ビート
ABCトリオのなかでも高い人気を誇った「ビート」
1990年代の初頭にマツダ、ホンダ、スズキは、個性的な軽スポーツカーを発売。マツダ「AZ-1」、ホンダ「ビート」、スズキ「カプチーノ」の3車種で、それぞれの頭文字をとって「ABCトリオ」と呼ばれました。
1991年に登場したビートはオープン2シーター車で、エンジンをリアミッドシップに横置きに搭載。
ホンダはビートを純粋なスポーツカーとしてアピールしていませんでしたが、足まわりは4輪ストラットの独立懸架とし、軽自動車初の4輪ディスクブレーキが標準装備され、フロント13インチ、リア14インチの前後異径タイヤの採用など、間違いなくスポーツカーといえる内容でした。
外観は一説にはピニンファリーナによるデザインといわれ、ソフトトップをオープン、クローズどちらの状態でもスタイリッシュなフォルムを実現。
搭載された660cc直列3気筒SOHCエンジンは、トゥデイやアクティとベースは同じですが、専用チューニングと3連スロットルの吸気システムを採用することで、660ccの自然吸気エンジンではもっとも高出力の64馬力を発揮しました。
アクセルに対してエンジンのレスポンスが優れていましたが、出力特性はリニアなトルクの出方となっており、ハンドリングも終始アンダーステアの安定志向だったことから、ドライビングに気難しさはありませんでした。
1996年にビートは生産を終了したので、最終モデルでも四半世紀近くが過ぎていますが、いまも高い人気を誇っており、現存数が多いことから、一部の純正部品が再生産されています。
※ ※ ※
前述のとおりT360がホンダの4輪自動車製造の原点ですが、その直系の子孫にあたる「アクティトラック」の生産が2021年に終わると決定しています。
現在、軽トラックの製造はホンダ、スズキ、ダイハツの3社のみがおこなっていますが、ホンダのシェアは1割強です。
この状況では、アクティトラックのフルモデルチェンジをおこなうことができないと、経営判断が下されました。
ひとつの歴史が幕を閉じることになりますが、ホンダとしても苦渋の決断だったのかもしれません。
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