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タイヤが「ハの字」何のため? 車検は通る? 「ネガティブキャンバー」のメリット・デメリット

くるまのニュース / 2020年7月17日 10時10分

カスタムカーで、正面から見てタイヤがハの字になっているものを見かけることがあります。「ネガティブキャンバー」というものですが、どのような効果があるのでしょうか。また車検は通るのでしょうか。メリット・デメリットを解説します。

■タイヤがハの字でも走れるの?「ネガキャン」って何?

 カスタムカーのイベントなどで、正面から見ると、タイヤがハの字になっているクルマを見かけることがあります。

 なかにはすごい角度でハの字になっているクルマもありますが、なんのためにそうしているのでしょうか。

 タイヤがハの字の状態になっているのは「ネガティブキャンバー」と呼ばれるものです。

 クルマを正面から見たときのタイヤの傾きを、「キャンバー角」と呼びます。ちなみに上下の角度を表すキャンバー角に対して、クルマの前方向に対するタイヤ・ホイールの角度を「トー角」といいます。

 ハの字状態のタイヤは、上部のキャンバー角が0度以下(狭まっている状態)になっているので、「ネガティブ(=マイナスという意味)」であり、逆に上部の角度が0度以上になっているものは「ポジティブ(=プラスという意味)」となります。

 それが略されて「ネガキャン」、「ポジキャン」と呼ばれています。

 タイヤが下に向かって広がった角度になるため、踏ん張っているようにも見えるネガキャンですが、もともとはモータースポーツで採用されたものです。コーナーで速く走るために、最初から角度をつけたのが起源といわれています。

 サーキットのコーナーを曲がるとき、遠心力によって右コーナーならば荷重は左側のタイヤは外側、右側のタイヤは内側部分に集中します。

 そうなるとタイヤの接地面が偏ります。より十分なグリップ力を得るため、最初からコーナリングするときに最適な角度(キャンバー角)に設定することで、旋回スピードが上がりタイムアップにつながるという理由で角度をつけたのが始まりとされています。

 それが、ストリートで速く走りたい人やドリフト走行を楽しみたい人などに広まり、見た目にも迫力が増すことからカスタムの世界でも取り入れられたということです。

 当初は操作性や速さのために変更されていたネガキャンですが、いつしか「タイヤは角度がついているほどカッコいい」という解釈になり、カスタム好きの間ではすごい角度のネガキャン(俗にいう鬼キャン)にまで発展したといわれています。

 なお車検は、タイヤの中心からフロントは30度、リアは50度の範囲において、タイヤの回転部分(タイヤ・ホイールなど全部)がフェンダーからはみ出ていなければ認められるそうです。

 しかし、そこまで角度がついていれば、フェンダーからは確実にはみ出してしまうことから、実際には車検に通らないこともあるようです。

■純正でネガキャンになっているクルマも存在!?

 ネガキャンのメリット・デメリットとは、どのようなことなのでしょうか。整備や板金・補修もおこなう、秀自動車の高島氏に聞いてみました。

トヨタ「セルシオ」に現行型センチュリーの顔面を移植した「セルチュリー」(東京オートサロン2020)トヨタ「セルシオ」に現行型センチュリーの顔面を移植した「セルチュリー」(東京オートサロン2020)

「平坦な道を走るなら、キャンバー角は0度がいいのではと思われがちですが、カスタムしていないクルマにおいても、必ずしも0度ではないことがあります。

 これはクルマの構造や用途によってキャンバー角が設定されていて、たとえば荷物を積むことを想定したクルマは、純正でポジキャンになっていて、荷物を積んではじめてニュートラルになるように設計されているものもあります」

 サスペンションやタイヤは、ニュートラルではじめて性能を発揮できます。純正のクルマはキャンバー角が0度になっているものと思われていますが、実際は、-1度程度のネガキャンになっているクルマが多いのだそうです。

「とくに、ミニバンやSUVなど重心が高く車重がある車種は、リアタイヤがネガキャンになっている傾向があります。初期設定からネガキャンにすることで、コーナリング時に踏ん張って、リアのブレーク(タイヤのグリップ力を超えて滑ってしまうこと)を防ぐ効果を狙ってのものだと思います」

 ちなみにスバル「レヴォーグ」やトヨタ「RAV4」、ホンダ「ステップワゴン」などは、フロントは0度、リアは-1度の指定があります。

 トヨタ「スープラ」などはフロント-1度、リア-2度の立派なネガキャン、三菱「デリカD:5」は前後ともに0度指定のニュートラルになっているなど、車種や構造などによって純正でも角度がついているのです。

 純正でも微妙な角度でネガキャンになっているクルマが増えていることが分かりましたが、ではこの状態にするメリットは何なのでしょうか。

「角度をネガキャンにしておくメリットとして、直進安定性の向上と、コーナリング中のハンドル操作に対する反応がよくなることが挙げられます。

 左右ともに内側に向けて角度がつくネガキャン状態では、左右のタイヤが双方で内側に切れ込もうとする力が働いており、直進では左右でお互い打ち消しあうので直進しやすく、ハンドル操作をしたときには反応が良くなるわけです。

 またコーナリング中にリアタイヤが踏ん張った状態になるので、車重の重いクルマなどはリアタイヤのグリップを活かせるメリットがあります」(高島氏)

 また一般的な道路は、側溝などに雨が速やかに流れるように「横断勾配」と呼ばれる微妙な角度がついており、平坦ではありません。

 これもキャンバー角がニュートラルより直進性が高いネガキャン状態にしておくことで安定感が増す理由にもなっているのだそうです。

 しかしネガキャンは、適正値以上に角度を付けすぎるとデメリットしかないといいます。

「ネガキャンは、高速旋回時にタイヤが遠心力や重力でたわむことを事前に想定してセッティングされるものです。不必要なネガキャンは、タイヤの偏摩耗や、推進力に対する抵抗が増えるだけです。

 さらに直進しているときのタイヤの接地面が減り、トラクションやブレーキ性能も悪化してしまいます。タイヤの内側ばかりを使った状態になってしまうケースが多く、見た目のドレスアップ効果以外ではほぼメリットがないといえます」(高島氏)

 タイヤが偏摩耗してしまうと、タイヤのローテーションも難しくなってしまいます。最近のクルマはキャンバー角が任意で変更しにくくなっているのも、デメリットが圧倒的に多いからでしょう。

「あくまでキャンバー角は純正の適正値内にとどめておき、ハンドリング操作のフィーリングを変えたいならタイヤのサイズなり、トー角を調整するほうが得策だと思います」(高島氏)

※ ※ ※

 クルマの性能はサスペンションとタイヤが想定範囲内でしっかり仕事をできる状況で、はじめて性能を発揮するようになっています。

 極端なカスタムはデメリットとなりますが、ハイグリップタイヤに履き替えたりホイールをインチアップしたりすることで、見た目も走行性能もアップさせることができるそうです。

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