シフトのカバーは何のため? 車種によっては無いものも!? 進化するシフトノブ事情
くるまのニュース / 2020年7月22日 10時10分
運転席に座ってシフトを操作するときに目にするシフトブーツは、シフトの根元をカバーする装備です。しかし、このシフトブーツが車種によっては、あったりなかったりします。それはなぜなのでしょうか。
■シフトブーツがあったりなかったり…どんな役割がある?
シフト操作をするたびに目にしている、シフトの根元をカバーする「シフトブーツ」は、車種によって付いていたりいなかったりします。
シフトブーツは何のためにあるのでしょうか。また、シフトブーツがないクルマとは、どう違うのでしょうか。
シフトブーツについて、自動車関連のプロに聞いてみたところ、「シフトリンケージ(シフトと変速ギアをつなぐ関節のような機構)に大きなゴミが入るのを防ぐため」という役割があることがわかりました。
トランスミッションは密閉されていますが、シフトリンケージはむき出しの状態で、異物が入り込むと、誤作動やギアが変速できないなどのトラブルが発生する恐れがあるため、カバーをしているということです。
さらにFRのMT車の場合、シフトノブがトランスミッションから直接伸びており、異物の侵入はトランスミッションの故障に直結するため、シフトノブの付け根にダストカバーの役割りを担う小さいシフトブーツが付けられているケースもあります。
また凸凹したゴム製の蛇腹(ジャバラ)タイプがめっきり数を減らしてしまいましたが、これは車内のインテリアの観点から上質感を求めた結果、本革製やビニール製のシフトブーツが増えているようです。
そもそも未塗装のゴム製品は耐久性に問題がなくても、商用車のようで見映えがあまり良くありません。
現在新車で購入できるクルマで蛇腹タイプのシフトブーツを採用しているのは、ヘビーデューティな使われ方をするスズキ「ジムニー」や、軽バンや軽トラックなどの一部のMTモデルとなっています。
このシフトブーツの必要性ですが、トランスミッションへのゴミの侵入防止以外にも、昔のクルマはさまざまな理由がありました。
たとえばシフトリンケージを円滑に動かすために塗られたグリスが車内に飛び散るのを防ぐためだったり、メカニカルな部分を見せない目隠しのような要素があったと考えられます。
その一方、フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーブランドでは、ライバル車と差別化を図る目的もあり、あえて金属製のシフトゲージを見せるデザインとして採用。
生粋のスポーツカーブランドであることを誇示することがアイデンティティにもなっています。
■今後は棒状のシフトノブがなくなる可能性も
おもにMT車に採用されることが多いシフトブーツですが、AT車ではシフトブーツを採用していないことも多々あります。それはどのような理由なのでしょうか。
AT車のシフトは、基本的に直線的にしか動かす必要がないため、シフトの根元をプレートで隠すだけで済むからというわけです。
MT車のような複雑な動きをしないので、柔軟性がある素材で隠すよりプレートなどでミッション部分をカバーしたほうが洗練されたデザインになるという部分もあるようです。
ボタン式シフトを採用するホンダ「アコード」
また、メルセデス・ベンツが古くから採用しているゲート式のATも、フェラーリのMTのようにゲートに沿ってシフトノブを操作するため、シフトブーツは装着されていませんでした。
手動でギア変速をおこなうMT車と比較して、AT車は近年目覚しい進化を果たしています。
コラムATやフロアATはもちろん、スペース効率などを考慮した結果FF車が増え、足元の広さを活かすためにATセレクタをインパネに配置した「インパネシフトAT」など、自由度も高まりました。
またいまはMTモードの搭載が定番化しており、その操作はハンドルに設置されたパドルシフトで操作するのも一般的になりました。
さらにランドローバーなどではダイヤル式のATセレクタを採用。トランスミッションというより、走行モードをまさに「セレクト(選択)」しているかのようです。これもATのシフト操作を電子制御でコントロールできるようになった進化の賜物といえます。
さらに、ホンダが「レジェンド」や「アコード」に採用している「エレクトリックギアセレクター」のように、ボタン式シフトも増えています。
もはやシフトノブという棒状の装備すらいらないという時代になってきていることから、シフトブーツはクルマから徐々に消えゆく装備になるのかもしれません。
※ ※ ※
MT車以外では必要性が薄れてきているシフトブーツですが、スポーツカーにはスポーティな演出のために、いまも採用されています。
ただ今後はEVの普及によって、シフトブーツはおろかシフトノブがない車が増えていくと思われます。
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