日産10年ぶりの新顔「キックス」 ライバルと異なる乗って分かる3つの魅力
くるまのニュース / 2020年7月23日 11時10分
2020年6月30日に発売された日産の10年ぶりのブランニューモデル新型「キックス」。日本ではSUV市場が盛り上がっており、なかでもコンパクトSUVと称されるジャンルは各社が力を入れており、そこに日産は新型キックスを投入しました。実際に乗って分かった魅力とは、なんなのでしょうか。
■新型キックスは静かで爽快な加速感を味わえる!?
日産にとって10年ぶりのブランニューモデルとして発売され、大きな話題となっているコンパクトクロスオーバーSUV「キックス」。実際に触れ、試乗した筆者(工藤貴宏)が感じたのは3つの魅力でした。
海外ではガソリン車がラインナップされているキックスですが、日本仕様はハイブリッドのみの設定。搭載されるハイブリッドシステムはエンジンが発電専用として電気を起こし、その電気を使ってモーターで駆動するシリーズハイブリッド。日産は「e-POWER(イーパワー)」と呼んでいます。
e-POWERの搭載は「ノート」や「セレナ」に続いて3車種目ですが、それらはガソリン車(純エンジン車)と併売。
ところが日本でのキックスは、現時点ではe-POWERだけとしているのは面白いところです。ガソリン車がない分だけ車両価格が高く感じるのですが、日産は「ライバルのハイブリッド車と装備水準をそろえて計算すれば、決して割高ではないことを理解いただけると思います」と説明します。
1.2リッターエンジンを組み合わせるe-POWERの基本システム自体はノートe-POWERと共通ですが、走らせて驚いたのはノートe-POWERよりも明らかに静かなことでした。
ノートe-POWERは、低速で走っている際も頻繁にエンジンがかかります。モーター駆動のときが静かすぎるゆえにエンジン作動が煩いと感じられ、気になります。
しかし、キックスでは驚くほどエンジンがかからない。だから静かで快適なのです。
「そこ(頻繁にエンジンがかかること)に煩さがあるのは理解していたし、お客さまからもたくさんの声が届きました。キックスe-POWERではノウハウが蓄積されたこともあり、システムを熟成させて改善したのです」と開発者はそう教えてくれました。
具体的には、低車速でのエンジン“ちょいがけ”をできる限りおこなわず静かさをキープ、かわりに車速が高いときなど走行状況によって長めにエンジンをかけるように変更。
これまでは「充電量を重視して、充電量が減ったら低速でも充電」だったのに対し、キックスe-POWERでは「車速を重視し、低速ではなるべく充電しない」制御となっているのです。だからエンジン音が目立たないのです。
※ ※ ※
これはキックスe-POWERだけではなく、ノートやセレナのe-POWER車にも共通することですが、ドライバーとしては加速のシャープさに感動します。
この爽快感はトヨタ式(TNGAになり改善された最新ユニットを含めても)のハイブリッドを大きく上回るものですが、ホンダのe:HEVなど日常領域ではe-POWERに近いシステムとして作動するハイブリッドに比べてもドライバビリティが高いのです。
違いを具体的にいえば、アクセル操作に対する反応がシャープなことと、速度の伸び感に盛り上がりを感じられること。それはある意味、気持ちいいガソリンエンジン車の条件とも似ているかもしれません。
思い出したのは、日産でe-POWERの開発を担当しているキーパーソンがかつて語っていた言葉です。
「ハイブリッドだからといって効率だけを求めたくない。ドライバーが気持ちいいと感じ、運転する喜びを味わってほしいのです。
だからe-POWERには、伸びや盛り上がりを感じるフィーリングなどガソリン車で気持ちいと感じる要素を含んだ制御を常に考えています」
彼は電動パワートレインの開発を担当する前は「GT-R」のエンジン開発などに関わっていて、自身もガソリンの匂いとスポーツカーの気持ちよさが大好きだそうですが、そんなクルマ好きの想いを、確かにキックスe-POWERの加速フィーリングから感じることができました。
後席も荷室も広くて実用的なパッケージングに、静粛性が高くて快適で、さらにパワートレインの躍動感も味わえるキックスe-POWER。ファミリーユーザーはもちろん、運転好きにとっても気になるクルマです。
■日常の使い勝手はライバルを超えた!?
新型キックスで、まず驚いたのが室内の広さ、とくに後席の広さです。それはリアドアを開けた瞬間に、「なんと!?」と驚くほど明確にわかります。
象徴的なのはひざ周り空間(リアシートに座ったときのひざ周辺のフロントシートとの間隔)。明らかにゆったりとしていて、これまで日産のコンパクトクロスオーバーSUVとして親しまれていた「ジューク」を大きくしのぐものです。
このクラスで、もっとも後席が広いのはホンダ「ヴェゼル」ですが、ほぼそれに近い広さを手に入れていることがわかります。
そして後席のヘッドルーム(頭上のゆとり)は、ライバルのなかでナンバーワンの広さ。居住性に優れているのがキックスの大きな特徴であり、ファミリーユーザーには大きな魅力となることでしょう。
「どうして日本では、ジュークの後継が新型ジュークではなく、実質的にキックスなのか?」と開発者に尋ねると、次のように説明します。
「ジュークはスタイル重視のパッケージングで、新型も室内は圧倒的に広いわけではないです。
しかし、今の日本のBセグメントクロスオーバーSUVセグメントは広さに対する消費者のニーズが強いため、競合車に比べて室内の広さで有利なキックスを導入することになりました」
ライバルに負けない! クラストップの室内空間を実現した新型キックス
ちなみにコンパクトクロスオーバーSUVのライバルを見渡すと、トヨタ「C-HR」やマツダ「CX-3」は後席の広さよりもスタイルを優先したパッケージング。
ニューカマーのトヨタ「ヤリスクロス」(全長が4180mmとキックスより110mmも短いので不利もある)は後席の広さも重視していますが、キックス(やヴェゼル)はそれ以上に広いのがポイントといえるでしょう。
一方でトヨタ「ライズ」やダイハツ「ロッキー」は4mを切る短い全長で車体はひとまわり小さいですが、広い後席を備えるパッケージングの優等生と判断できます。
いずれにしろ、キックスは後席の広さはクラストップレベルの実力だから、日常的に後席を使うユーザーも安心して購入できます。
キックスのパッケージングには、もうひとつの驚きがありました。それはラゲッジルーム。とにかく広く、こちらは従来クラストップだったヴェゼルを超えていたのです。
たとえば、荷室容量はヴェゼルが393リットルなのに対し、キックスは432リットルと約1割のアップ。後席使用時の床の奥行きも、約10cm上回っているのだから見事です。ちなみにジューク(初代モデル)はわずか251リットルしかありませんでした。
「後席と荷室が広いコンパクトSUVが欲しい」という人にとって、キックスはまさに直球ストライクのクルマなのです。
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