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なぜトヨタはSUVで攻める? ハリアー&ライズ大ヒット! 市場席巻の戦略とは

くるまのニュース / 2020年7月27日 9時10分

車種のラインナップが多いトヨタですが、そのなかでも最近は、SUVのラインナップを充実させています。なぜトヨタはSUVを続々と市場投入しているのでしょうか。

■大中小とさまざまなSUVをラインナップするトヨタ

 最近は各メーカーともSUVを充実させていますが、とくに積極的に取り組むのがトヨタです。

 2016年に「C-HR」、2017年に「ハイラックス」、2019年に「RAV4」、「ライズ」、2020年に「ハリアー」「RAV4 PHV」と新型車の投入が続いています。

 今後は「ヤリスクロス」と「カローラクロス」の発売、「ランドクルーザー」のフルモデルチェンジもおこなわれる予定です。

 またトヨタは高級ブランドのレクサスも展開しており、最近では2018年にSUVの「UX」を投入しました。トヨタはなぜここまでSUVに力を入れるのでしょうか。

 トヨタは以前からSUVを手掛けてきました。日本車で最長寿のブランドは、1954年に発売されたオフロードSUVのランドクルーザーです。

 1951年にトヨタ「ジープ」の名称で発売されましたが、ジープはウイリスオーバーランド社の商標に抵触するため、ランドクルーザーに改名。この後も、ランドクルーザーには複数のボディタイプが用意されました。

 1980年代に入ると「ハイラックスサーフ」、1990年代にはRAV4とハリアー、2000年以降は「ヴァンガード」という具合に、新型SUVを定期的に投入してきました。

 ただし2010年頃になると、トヨタのSUV販売は減少します。当時2代目ハリアーは発売から7年、3代目RAV4は5年を経過していました。ヴァンガードは3年でしたが、ライバルだった日産2代目「エクストレイル」の売れ行きを超えられませんでした。

 この時代に辛かった販売系列がトヨペット店です。主力商品の「マークX」にはハイブリッドが用意されず売れ行きが下がり、「プレミオ」も伸び悩みます。「アルファード」も、当時は姉妹車の「ヴェルファイア」に販売面で負けていました。

「プリウス」の2代目はトヨペット店とトヨタ店の併売でしたが、2009年に登場した3代目は、トヨタカローラ店とネッツトヨタ店を加えて全店扱いになりました。トヨペット店は、法人営業を含めて販売力の強いディーラーですが、当時は専売車種に恵まれませんでした。

 しかも2009年には海外と同じレクサス「RX」を日本でも販売することになり、RXの日本仕様だったトヨペット店専売のハリアーが廃止される可能性も高まりました。

 これではトヨペット店の販売は一層辛くなるので、ハリアーは廃止せず、レクサス店の扱う新型RXと併せて新旧併売になりました。そしてトヨペット店の強い希望もあり、2013年にはRXから分かれて、国内向けとして3代目ハリアーが発売されたのです。

 このときに開発者は「海外で販売されない日本向けのSUVを開発したのは初めてだ」とコメント。その後、ハリアーは海外でも販売されましたが、右ハンドルの国に限られていました。

 2012年には、マツダ初代「CX-5」とスバル4代目「フォレスター」が発売されて売れ行きを伸ばし、2代目エクストレイルも発売から約5年を経過しながら好調でした。

 SUVが流行のカテゴリになったのに、トヨタはハリアーが存在しながら取り残された状態だったので、トヨペット店も苛立っていたのです。そのため、国内向けハリアーの投入に、トヨペット店も喜びました。

 ようやく2013年に登場した3代目ハリアー(先代)は、日本のユーザーに焦点を合わせた上質な内外装と広い居住空間、使いやすい荷室によって好調に売れて、2014年には1か月平均で約5400台を登録しています。売れ筋ミニバンの「ノア」と並ぶ売れ行きでした。

■怒涛のSUV攻勢はかつてのミニバン拡充期と似てる!?

 先代ハリアーの成功は、トヨタがSUVを充実させる起爆剤になりました。そこで前述のようにSUVをそろえていきます。

 このやり方は、トヨタがミニバンを充実させた2000年代に似ています。

 ワゴン風ミニバンのホンダ「ストリーム」が登場したらトヨタは「ウィッシュ」、燃料タンクを前席の下に搭載する「モビリオ」がホンダ投入されたらトヨタは薄型燃料タンクの「シエンタ」、日産「エルグランド」には前輪駆動化して質感を高めたアルファードという具合に、対抗車種をそろえてミニバン需要を吸収しました。

トヨタ「ライズ」トヨタ「ライズ」

 トヨタは、新しい市場が形成されるときには注意深く観察しながら動向を見定め、車種を一気に充実させて攻め込みます。

 トヨタは古くからSUVを手掛けていましたが、ハイラックスや日産「テラノ」が人気を高めたオフロードSUVの時代と、CX-5やフォレスターなど前輪駆動によるシティ派の時代では、需要構造も違います。トヨタはシティ派SUVを新しい流れと捉えて、車種構成を再構築したのです。

 このような経緯もあり、RAV4は国内販売を一時中断。ハリアーも短期間でしたが、2013年に中断した期間があり、ここでトヨタの国内SUV戦略が転換したと考えて良いでしょう。

 トヨタがSUVを次々と発売するのは、このカテゴリの需要が今後も長続きするからです。SUVは厚みのあるフロントマスクや大径タイヤによって外観に存在感があり、居住空間と荷室はステーションワゴンと同等かそれ以上に広いです。

 カッコ良くて実用的なので、多くのユーザーが魅力を感じて売れ筋カテゴリになりました。

 しかもSUVは、ランドクルーザーのような後輪駆動ベースのオフロード派から、C-HRのような前輪駆動ベースのシティ派まで、いろいろなタイプを用意できます。

 共通化された前輪駆動のプラットフォームを使った場合でも、複数の車種を構成でき、開発のしやすさもSUVのメリットです。

 今後のトヨタの戦略は、空間効率に優れ、価格を割安に抑えられる前輪駆動ベースのSUVを豊富に用意することです。

 具体的には、BセグメントSUVのシティ派はヤリスクロス、オフロードSUV風のアクティブ派はライズで、CセグメントSUVはシティ派がカローラクロス、アクティブ派はC-HRとなります。

DセグメントSUVはハリアー、RAV4というように、各サイズに2車種ずつ、指向性の違うSUVをそろえて合計6車種とします。

 そして別枠で、後輪駆動ベースのオフロードSUVとなるランドクルーザーと「ランドクルーザープラド」を用意。ピックアップ4WDのハイラックスも含めると、SUVは総勢9車種です。

 他メーカーの動向を分析したうえで品ぞろえを充実させ、SUVのニーズを一気に引き受ける戦略です。

 トヨタは2020年5月1日から国内の全店で全車を扱う体制に移行しました。

 約4600店舗(日産やホンダの2倍以上)が一斉に扱うため、人気車は売れ行きを伸ばしますが、その一方で不人気車は、従来以上に落ち込んでトヨタ内部で販売格差が進行するでしょう。

 この動向も踏まえて、トヨタは姉妹車を中心に車種の削減を進めます。アルファード/ヴェルファイア、ヴォクシー/ノア/エスクァイアなどは、ひとつの車種に統合します。

 プレミオ/アリオンは、発売から13年を経過して売れ行きも下がり、このまましばらく販売を続けて廃止する可能性が高いでしょう。

 ポルテ/スペイドは、発売から8年を経過して売れ行きが伸び悩み、車両の性格はルーミー/タンクと重複します。SUVのラインナップが充実する一方、ほかのカテゴリでは、ユーザーの選択肢が制限されます。

 これらの整理を進めると、最終的には商用車を含めて(軽自動車は除く)、国内で扱われるトヨタ車の車種数は30車種程度になります。この内の9車種がSUVですから、ラインナップ全体の30%を占めます。

 マツダはOEM車を除いた8車種の内、4車種がSUVと、ラインナップの半分を占めています。トヨタにはミニバンもありますから、売れ筋カテゴリのSUV比率が30%ならバランスは良いでしょう。

 トヨタがSUVを充実させて売れ行きを伸ばすと、ライバル車も対抗せざるを得ません。商品改良や特別仕様車の追加などがおこなわれ、SUVの市場はますます活性化して買い得になっていくことが予想されます。

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