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また中国がパクリ!? 中国版「Gクラス」が単なるパクリとは言えない複雑な事情

くるまのニュース / 2020年7月28日 7時10分

中国で開催された成都モーターショー2020で、北京汽車のオフロード車である「BJ80」の2020年モデルが世界初公開されました。どう見てもメルセデス・ベンツ「Gクラス」のコピーですが、そこには単なるパクリとはいえない複雑な事情があるようです。どのような事情で似たデザインのモデルが販売されているのでしょうか。

■Gクラスのパクリ? BJ80とはどんなクルマ?

 2020年7月22日に開幕した成都モーターショー2020で、北京汽車のオフロード車「BJ80」の2020年モデルが世界初公開されました。
 
 このBJ80、一見しただけであるクルマに似ていることがわかります。世界のオフロード車の金字塔である、メルセデス・ベンツ「Gクラス」です。

 今回、登場したBJ80は、全長4765mm×全幅1955mm×全高1985mmと、現行Gクラスと同程度の堂々たるボディを持ちます。

 一方、搭載されるパワートレインは、従来からラインナップされているサーブ製2.3リッター直列4気筒ターボエンジンにアイシン製6ATを組み合わせた設定です。

 加えて、自社開発のオールアルミニウム製3リッターV型6気筒ターボエンジンとZF製8ATを組み合わせたハイパワーグレードも設定されました。

 2.3リッターは最高出力247馬力/最大トルク35.7kgf・mで、3リッターは最高出力276馬力/最大トルク42.8kgf・mを発揮します。

 BJ80は本格的なオフロード性能も有しており、2輪駆動、4輪駆動、低速4輪駆道を切り替える電子制御式のパートタイム4WDを採用しているほか、機械式デフロックも搭載。本家Gクラスに相当する悪路走破性を兼ね備えているようです。

 また、2020年モデルでは内装がより豪華になっています。ナッパレザーを採用したレザーシートに加えて、電動リアシートや前後席に配される10.25インチのLCDモニターなど、快適性能が大幅に向上しています。

 価格は29万8000元(約450万円)から39万8000元(約600万円)と、中国ブランドのクルマとしては高価格帯ではあるものの、Gクラス(G500)は162万8800元(約2460万円)と、4倍ほどの価格差があります。

 そのため、BJ80の実質的なライバルはGクラスではなく、トヨタ「ランドクルーザープラド」などとなるようです。

 ランドクルーザープラド(3.5リッターエンジン搭載モデル)の価格は43万5800元(約660万円)からということを考えると、価格面ではBJ80は競争力があるといえます。

 BJ80とGクラスが似ているという点について、一般消費者はどのように受け止めているのでしょうか。

 中国のインターネット掲示板などを見ると、BJ80とGクラスが似ていることは周知の事実ではあるようですが、具体的な比較対象とはなっていないようです。

 その理由は、車両価格自体が大きく異なることはもちろん、メルセデス・ベンツと北京汽車では、ブランド自体が競合することがないことが挙げられます。

 つまり、BJ80を選ぶ層は、Gクラスに似ているから選ぶのではなく、あくまで北京汽車というブランドのなかからBJ80を選ぶという意識が強いようです。

 また、以前のBJ80に比べて、2020年モデルは外見こそ依然としてGクラスに似てはいるものの、インテリアや機能面で独自の進化を遂げていることから、Gクラスとの比較ではなく、BJ80というクルマそのものを評価している傾向も見られます。

 乱暴な例ではありますが、BJ80ほどではないにせよ、スズキ「ジムニー」がGクラスに似ているからいって、Gクラスの代替品としてジムニーを買う人は皆無でしょう。同様に、BJ80もあくまでBJ80として、消費者からは認識されているようです。

 ちなみに、Gクラスは「ビッグG」や「グランドG」と呼ばれ、世界基準のオフロード車として、現地のファンからも別格の存在として高い人気を誇っているようです。

■「これはパクリだ…!」といっていいのだろうか?

 BJ80のデザインは明らかにGクラスと似ている(フロントマスクはジープ「チェロキー」)といって差し支えないでしょう。

 では、単に北京汽車がメルセデス・ベンツをパクったといってよいのでしょうか。しかし、そこには少々複雑な事情があるようです。

 中国では、原則として中国国内で自動車を生産し販売するためには、 現地企業と合弁企業を設立する必要があります。

 海外生産のクルマを輸入車として販売すると、高額な関税が上乗せされてしまうため、超高級車をのぞいてほとんどのメーカーは現地企業と合弁企業を設立。例えば、トヨタであれば第一汽車や広州汽車、日産であれば東風汽車とパートナーシップを結んでいます。

 こういった政策をとることは発展途中の新興国では珍しくありません。国内の産業を守りつつ、なおかつ海外の技術をとりこむためには外資系企業の進出を無制限にしてしまうわけにはいきません。

 一方の外資系企業側も技術流出の恐れはある一方で、やはり新車販売台数世界一の中国市場は魅力的です。そういったメリットとデメリットを天秤にかけた結果、多くの外資系企業が中国国内で合弁企業を設立しているのです。

見た目はGクラスにそっくりでも… ただのパクリではない北京汽車のオフロード車「BJ80」見た目はGクラスにそっくりでも… ただのパクリではない北京汽車のオフロード車「BJ80」

 では、メルセデス・ベンツはどの企業と合弁企業を設立しているのでしょうか。それはなんとBJ80を販売している北京汽車なのです。

 メルセデス・ベンツの親会社であるダイムラーグループと北京汽車グループの関係は深く、2003年に業務提携を開始し、2005年に合弁企業の北京ベンツ汽車を設立、その後、「Cクラス」や「Eクラス」、「GLA」といって人気車種の現地生産をおこなっています。

 さらに2019年には北京汽車グループがダイムラーグループの株式の5%を取得、議決権を獲得しています。ちなみに、ダイムラーグループの筆頭株主は、吉利汽車創業者であり吉利・ホールディング・グループ会長である李書福氏です。同社はボルボ・カーズの親会社でもあります。

 このことから、北京汽車とメルセデス・ベンツは「アカの他人」ではないということがわかります。これは推測の域を出ませんが、両者の提携交渉のなかで、BJ80のようなクルマを発売することを合意している可能性もあります。

 とはいえ、プレミアムブランドを代表する存在であるメルセデス・ベンツからすれば、BJ80は歓迎できるものではないでしょう。

 しかし、もし北京汽車と合弁が解消すれば、メルセデス・ベンツは稼ぎ頭の中国市場を失うことになります。そうなると、BJ80が気になる存在であったとしても、黙認する方がメリットがあるといえます。

※ ※ ※

 中国のモーターショーなどを見ると、たしかにどこかで見たことのあるようなクルマに遭遇することが少なくありません。

 しかし、デザインが似通うのにはさまざまな背景があります。もちろん、悪質なコピーもなかにはありますが、多くの場合、メリットやデメリットを天秤にかけた結果、両者が合意、あるいは少なくとも承知した上で黙認しているというケースが多いようです。
 
 それほどまでに、中国市場が世界の自動車産業に与える影響は大きいということでしょう。

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