なぜ日本では不人気でヨーロッパでは定番化? 「ステーションワゴン」を考えてみた

くるまのニュース / 2020年8月4日 11時50分

ミニバンブーム、そして昨今のSUV人気の高まり。そうしたなか、かつて人気があったステーションワゴンは、日本においてはまさに風前の灯だ。そんななか、ドイツ・プレミアムブランドでは、セダンとともに定番のボディタイプとして今でもワゴンをラインナップさせている。その理由はなにか考えてみた。

■日本やアメリカ市場では絶滅危惧種となったワゴン

 人の気持ちは移ろいやすいもの。だからこそ、次々に新しいトレンドが生まれ、古いものは消え去ってゆく。日本市場におけるクルマのジャンルでいえば、「ステーションワゴン」が、そうした消えてゆくトレンドといえるだろう。

 かつての日本車には、ほとんどのセダンにバリエーションとしてステーションワゴンが用意されていた。「クラウン」にもステーションワゴンがあったし、スカイラインのステーションワゴン版とでも呼べる「ステージア」の人気は高く、スバルの看板車種は「レガシィ ツーリングワゴン」であった。

 ところが気がつけば、その多くのステーションワゴンは姿を消し、現在残っている車種は、トヨタは「カローラツーリング」と「プリウスα」、スバルの「レヴォーグ」、マツダ「マツダ6」、ホンダは「シャトル」と「ジェイド」があるが後者はもうすぐ終売予定だ。あとは商用バンくらいしか、このボディタイプは販売されなくなっている。

一時期に比べだいぶ少なくなったが、日本車でもまだワゴンは存在する。写真はトヨタ「カローラツーリング」一時期に比べだいぶ少なくなったが、日本車でもまだワゴンは存在する。写真はトヨタ「カローラツーリング」

 では、いったいなぜ、そうした事態に陥ったのだろうか。

 そのヒントとなるのが欧州市場だ。かの地では、今もセダンのバリエーションとして数多くのステーションワゴンが存在している。

 一方、アメリカ市場も日本と同様にステーションワゴンは絶滅危惧種になっている。日本とアメリカがダメで、欧州はOK。そこにある違いとはなんなのだろうか。

 考えられる理由は、アウトバーンという存在だ。アウトバーンはドイツの高速道路のことで、一部の区間は一応「速度無制限」で、いくらでもスピードを出してよい。

 最近では、アウトバーンでも速度制限区間が増えているとはいえ、それでも制限は130・/hなどで、現状の日本やアメリカなどよりも高速だ。

 実際に筆者がアウトバーンの速度無制限区間を走った経験でいえば、速いクルマで150km/hから180km/h、普通のクルマが120km/hから140km/hほどで流れている。無制限といっても、皆が皆200km/hも300km/hも出しているわけではないのだが、確実に日本やアメリカなどよりも速度は高い。

 いっぽう、制限速度区間になると、速度が一気に下がる。まさに急ブレーキ。そして解除になると一気に速度があがる。アクセルペダルを本当に床まで踏みしめないと流れに乗れないほどの急加速を見せるのだ。

 パワーやトルクがあり、なおかつブレーキ性能の高いクルマがドイツ車に多いのも理解できる走行環境ともいえる。

 また、欧州はEU圏内であれば、国から国の移動も非常に簡単だ。パスポートチェックのない国境も多い。そのためドイツ車以外のフランスブランドやイタリアブランドのクルマがアウトバーンを走る姿も数多くみられた。

 そうした高速移動をおこなう上で、ステーションワゴンは非常に便利な存在だ。セダンと同様の空気抵抗係数(Cd値)で、セダンよりも荷物をより多く搭載できる。

 SUVやミニバンは、空気抵抗が大きく重心も高いので、セダンやステーションワゴンほど高速走行が得意ではない。実際に、180km/h以上でSUVやミニバンを運転することを想像してみてほしい。きっと、SUVよりもステーションワゴンを選ぶ人の気持ちもわかるはずだ。

 そういう意味で、欧州にはステーションワゴンを必要とする環境が存在する。だからこそ、今なおステーションワゴンのニーズがあり、それに応えて自動車メーカーが販売しているのだ。

■同じ「ワゴン」タイプでもドイツ・プレミアムスリーで呼び名が違う

 面白いことに、ステーションワゴンの呼び方にも違いがある。

 メルセデス・ベンツは王道的に「ステーションワゴン」と呼ぶが、BMWは「ツーリング」、アウディは「アバント」と呼ぶ。

BMW「3シリーズツーリング」。BMWは3シリーズと5シリーズにツーリングをラインナップするBMW「3シリーズツーリング」。BMWは3シリーズと5シリーズにツーリングをラインナップする

 これはBMWの場合、ステーションワゴンの源流が1960年代後半から販売した「2002シリーズ(通称マルニ)」の2ドアハッチバックモデルの「ツーリング」にあり、そのスポーティな伝統を大切にする姿勢の表れだ。

 アウディは単なる荷物運搬車ではなく、フランス語で「前進」を意味するAVANTを使うことで、ステーションワゴンにアウディ独自のデザイン哲学と最先端技術を込めていることを表現しているのだ。

アウディ「A6アバント」。アウディはA4とA6にアバントをラインナップするアウディ「A6アバント」。アウディはA4とA6にアバントをラインナップする

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 一方、日本やアメリカでは、欧州ほどの高い速度での走行性能が求められないことが大きい。

 そうとなれば、室内空間が広くて便利なSUVやミニバンのほうが売れるのは道理だ。また、クルマを走らせる基本的な技術が高まったことで、SUVやミニバンでもかつてよりも高い高速走行性能が実現できるようになったのも理由のひとつだろう。

 きちんと高速を走れるのであれば、室内は広いSUVやミニバンのほうが良いと考える人が多いのだから、ステーションワゴンを選ぶ理由がない。

 さらにいえば、直近10年ほどは、世界中でSUVがブームになっていた。走行性能が上がり、高速道路の移動も以前ほど苦にならなくなったのもあるだろう。

 また、新しいクルマのボディタイプとして、注目度が高まったという側面もある。モータリゼーションが到来して、人々が初めてのクルマを購入してきた中国は、まさしくそういう風潮だ。

「最初の1台目は、王道的なセダンを買う。次も同じではつまらないから、目新しいSUVがほしい」というわけだ。

 実利的な理由もなく、さらにSUVという新しいトレンドも到来した。その結果、現在の日本やアメリカからステーションワゴンが消えていった理由といえるだろう。

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