なぜトラックは3段階停止する? 後続車が惑わされる行為は安全なのか
くるまのニュース / 2020年8月4日 9時10分
おもに運送業者や郵便局の配達車がおこなう「多段階一時停止」ですが、発進と停止を繰り返すため、後続車との衝突のリスクがあるように思えます。安全確保を目的とした行為ですが、実際には安全なのでしょうか。
■安全のための「多段階一時停止」は本当に安全?
街中でトラックなどの運送業者の後続を走行していると、一時停止などでトラックが複数回に分けて停止する行為を見かけることがあります。
これは、俗に「多段階一時停止」と呼ぶようですが、なぜ複数回に分けて停止するのでしょうか。
多段階一時停止とは、交差点などを利用する際に停止線の手前で1回、優先道路に自分の存在を知らせるため少し進んで1回、左右確認のため再び少し進んで1回、それぞれ停止する行為のことを指し、見通しの悪い交差点でなどでは、交差するクルマ同士が互いに存在を確認し合えるため、事故のリスクを軽減できます。
発進と停止を繰り返すことで、後続車が誤って発進したことによる接触事故の発生も考えられますが、適切な車間距離を保っていれば事故が起こる可能性は限りなく低いです。
そのため、運送業者や郵便局のなかには、配達中の多段階一時停止が義務付けられることがある企業も存在。加えて、一部の自動車教習所では、一般ドライバーにも多段階一時停止を推奨しています。
では、万が一に多段階一時停止をしたクルマに追突してしまった場合、過失や罰則はどうなっているのでしょうか。
首都圏の交通課職員は、以下のように話します。
「前方車両との衝突があった場合には、適切な車間距離を保っていなかったとして、後続車の過失となります。そのため、多段階一時停止をおこなうこと自体は、危険行為とはされません。
また、追突はしていなくても、過度に接近したりクラクションを鳴らしたりすれば、あおり運転とみなされるケースもあります」
※ ※ ※
道路交通法第26条によると、同一の進路を進行しているほかの車両の直後を進行する場合、その車両が急停止しても、これに衝突しないだけの車間距離を確保しなければならないとされています。
つまり、前方車両が多段階一時停止をしたことによって後続車と衝突した、あるいは衝突しそうになった場合、後続車の「車間距離保持義務違反」となり、過失は後続車側にあることになるのです。違反した場合の罰則は、基礎点数1点、反則金6000円となっています。
また、2020年6月末から、あおり運転は「妨害運転罪」として明確に規定されました。そして、妨害運転罪と判断される項目には、「車間距離を詰める」や「不必要なクラクション」も含まれています。
多段階一時停止をおこなうクルマが前方にいた場合は、必ず適切な車間距離をもって待ちましょう。
■すごい手前にあることも…なんで停止線の位置はバラバラ?
多段階一時停止に関係する停車線ですが、道路によって位置が前後することが多々あります。このように停止線の位置が異なるのは、警察庁が定めた交通規制基準が関係しています。
例えば、横断歩道では横断歩道の1mから5cm手前や、一時停止の規制がおこなわれている場所は、原則的に同一地点に設置するとしています。
また、やむを得ない場合は、道路標識と道路標示が一対のものであると認識できる程度の位置に設置するとされています。
こうして見ると、全体的に曖昧な基準にも感じられますが、どういった経緯で停止線の位置は決まるのでしょうか。
首都圏の警察署のある交通課職員は以下のように話しています。
「停止線は、その交差点でもっとも安全と判断された場所に設置されます。この場合の安全とはクルマやバスだけでなく、道路の形状や、電柱や標識の位置関係、自転車含む歩行者などを考慮したものです。
一度設置されても、新たなバス路線が追加されたり、学校が新設されるなどして道路状況が変われば、停止線の位置を再度見直される場合が多々あります」
市区町村など道路管理者が設置する「指導停止線」(イメージ)
ちなみに、停止する義務のない停止線も存在し、「指導停止線」といいます。通常の停止線には法的効力があるのに対し、この指導停止線は市区町村が安全を確認するのが好ましいとした場所に設置されたもので、停止しなくても罰則は一切ありません。
しかし、安全を確認するに越したことはありません。その土地よって道路状況は異なりますが、変わらずルールを守って安全運転を心がける必要があります。
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