軽自動車に軽油はNG! なぜ日本は間違えやすい「軽油」と呼ぶのか
くるまのニュース / 2020年8月6日 9時10分
クルマに慣れていない人の場合、「軽自動車」に「軽油」を入れるトラブルを起こしやすいといいます。イメージとして、同じ「軽」という文字が使われるためのトラブルです。しかし、海外ではエンジン種別と同じく「ディーゼルオイル」などと呼ばれています。なぜ、日本では軽油と呼ばれるのでしょうか。
■国内外で異なるディーゼルエンジンの燃料表記
ガソリンスタンドでは基本的に「レギュラー」「ハイオク」「軽油」の3種類がクルマの燃料として販売されています。
これまではガソリンスタンドのスタッフがクルマの燃料の種類を確かめて給油をおこなっていましたが、セルフ式ガソリンスタンドが普及したことにより自分で給油する機会が増え、その際に同じ「軽」の名称が付いていることから軽自動車に軽油を入れてしまうというトラブルが発生しています。
一般的にクルマのエンジンには大きくわけて「ガソリンエンジン」と「ディーゼルエンジン」があり、ガソリンエンジンはレギュラーかハイオク、ディーゼルエンジンは軽油を指定燃料としています。
基本的に軽自動車はガソリンエンジンであり、ほとんどはレギュラーガソリン指定となっているため、軽油を給油するとエンジンを破損させる恐れがあるのです。
一方、海外のガソリンスタンドでは軽油は「Diesel(ディーゼル)」と表記され、ディーゼルエンジン用の燃料だとひと目でわかるようになっています。
軽油という名前は「重油」に対し比重が軽いことが由来とされていますが、クルマ用の燃料として使うのであれば、海外のようにディーゼルと表記したほうが燃料の入れ間違いが少なくなる可能性もあります。
現在のディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて長距離時などの燃費が良いことなどから、トラックのみならず乗用車にも広く普及しています。
乗用車の燃料として使われはじめた歴史は意外にも浅く、トラックやダンプカーなど大型車両の燃料として使われてきた期間が圧倒的に長いのです。
資源エネルギー庁の調査によれば、2015年時点でクルマ用ガソリン需要は年間5150万キロリットルとされていますが、軽油は年間2568万キロリットルとおよそ半分です。そのうち2243万キロリットルをトラックなどの貨物車が占めています。
軽油はクルマ以外にもさまざまな産業で活用されています。例えば船舶や貨物列車のエンジン、ビルや発電所の発電機用燃料など、その用途は乗り物に限りません。
そうした業界では「ディーゼル」はエンジンや発電機そのものを指す場合もあり、燃料の名前を「ディーゼル」にすることで混乱を生じる可能性もあります。
実際にビルなど固定式発電機はディーゼル発電機と呼ばれ、燃料給油はガソリンスタンドが担っていることがあるため、動力と燃料を区別する意味があるのです。また、ガソリンスタンドのスタッフは以下のように話します。
「軽油の歴史は古く、かつては『焼玉エンジン』という古いエンジンの燃料でもありました。
これは昔の映画に出てくるポンポンポンと音を立てて動く『ポンポン船』にも使われ、明治から昭和40年頃まで存在しました。
軽油は現在でも一般需要より商用需要のほうが多く、歴史も長いので名前を変えていないのでしょう」
■実際に入れ間違ってしまった場合どうなるのか
軽油は乗用車の燃料として使われ始めた歴史が浅いことから、ガソリンスタンドでは昔から使われている軽油という表記のままとなっているようです。
そのためドライバーは表記の印象に惑わされることなく、自分の運転するクルマの燃料についてしっかりとした知識を持つことが重要ですが、実際に燃料を入れ間違ってしまった場合はどのようなことが起こるのでしょうか。
軽自動車は軽油ではなくレギューラーが基本
例えば軽自動車に誤って軽油を入れた場合、最初はガソリンタンク内に残っているガソリンと混ざって燃焼しますが、次第に軽油の比率が増え、不完全燃焼によってパワーが落ちてマフラーから黒煙が出るなどの症状が発生し、最終的にはエンジンが停止します。
一方、ディーゼルエンジンにレギュラーを入れた場合、レギュラーは軽油よりも潤滑性が低いことや、燃料方式の違いにより、最終的にはエンジンを損傷させる可能性が高くなるのです。
軽自動車や普通車に搭載されるガソリンエンジンは霧状になった燃料に、スパークプラグと呼ばれる電極が火花を飛ばすことで燃料を燃やしていますが、ディーゼルエンジンは軽油を圧縮して燃焼させています。こうした構造上の違いから、最適な燃料を入れないとエンジントラブルの元となります。
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